心電図検定対策問題010
問題010 (2024/2/11)
45歳，男性。10年前から糖尿病，高血圧で近医通院中。83kg。
「クリスマス・パーティでめっちゃ飲んじゃって・・・終電で深夜1時に帰宅してウトウト眠ろうかと思ったら動悸がしてきて朝まで治まらないんで来ました」
BP 141/100mmHg，PR 113bpm。
問題：心電図所見として1)～5)とA)～C)の組み合わせとして正しいものはどれか（一つずつ選べ）
1) 心房粗動 2) 洞頻脈 3) 発作性上室頻拍
4) 心房細動 5) 心房頻拍
A) 交流ノイズ B) ドリフトノイズ(基線動揺)
C) 筋電ノイズ(筋電図)
X/Twitterのオプション仕様が4つまでのため，このような形式になっているが，4番目の選択肢は(d)か(e)のいずれかが該当する場合に選択して欲しい。今回は約6割の方が正解であった。
【正解】 4) 心房細動 atrial fibrillation, C) 筋電図（筋電ノイズ）electromyographic noise (正解率61%)
1）R-R不整，2）洞性P欠如かつ3）V1や下壁誘導などで明瞭な細動波（f波）から心房細動（AF）の診断は容易であろう。
もう1つのは，A）～C）の心電図における代表的なノイズを選択すれば良い。振幅・周期ともに不規則な小脳性であり，いわゆる“筋電図”の混入である。ノイズ名称としては「筋電ノイズ」（electromyographic noise）となろうか。精神的な緊張などにより手足に力が入ることで，混入するノイズの代表例である。
残る3つ目の所見としては，胸部誘導の移行帯がV6とかなり遅いことから，時計方向回転（clockwise rotation）と言えば良い。
Dx: Atrial fibrillation wth RVR (rapid ventricular response) 123bpm, clockwise rotation, electromyographic noise
【診断タグ】
#心房細動 #筋電図 #筋電ノイズ #時計方向回転 #AF #Noise #Myogram #clockwise rotation (2024/2/14)
【補遺1】“Holiday heart syndrome”（HHS）について
心電図診断はやさしいが，本症例は，Dr.Reid〈@ECGwithReid〉が早々に指摘してくれたように，いわゆる“Holiday Heart Syndrome”と呼称される，アルコール痛飲に関連した心房細動（AF）と思われる症例である。
https://x.com/ECGwithReid/status/1756669107871551649?s=20
https://x.com/ECGwithReid/status/1756900845101207823?s=20
“HHS”という略称に関しては，高浸透圧性高血糖症候群に対して用いられることが多い印象であり，本邦ではあまり用いられない。
アルコール多飲（binge alcohol consumption）により，心房細動等の心房性不整脈が惹起されることであり，週末や休日に多いため，この名称となっている。
◇もともとEttingerらが報告
◇飲酒後12-36時間に発症して救急外来を受診するケースが多い
◇アルコールによる撃発活動（TA：主にDAD），交感神経緊張（心房不応期短縮），電解質異常など
◇90%以上が24時間以内に自然停止するが1年以内に20～30％が再発する
◇血栓塞栓リスクに応じて必要なら抗凝固療法を検討する
参考文献 For deeper dive:
・Ettinger PO, et al. Am Heart J 1978 [PMID: 636996]
・Marcus GM, et al. Ann Intern Med 2021 [PMID: 34461028]
・Krishnamoorthy S, et al. Am J Med 2009 [PMID: 19699381]
・StatPearls: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK537185/
【補遺2】ノイズに関する簡潔なまとめ
この表では（3）に相当するノイズが今回の症例でも認められている。なお，筋電図と振戦（tremor）が一緒になっているが，正確に言うと同一ではない。
引用元【短縮アドレス】：https://bit.ly/42H7P2o
from えかげますたぁ｜Dr.ヒロ @ekagemaster (on X/Twitter)
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