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紫陽花アーサーと少女

雨降りの中に輝く
紫陽花…
今年もこの季節がやって来た。

少女は、紫陽花の季節になると、
この公園を訪れた。

毎日通っているうちに
気になる紫陽花があり、
今日は話しかけてみることにした。

『紫陽花さん、こんにちは!
なんとなく寂しそう。
何か寂しいことがあったの?』と聞いた。

紫陽花は、『ハハハ…僕?全然、寂しくないよ!』と笑った。
『だって、君がいつも僕を気にしてくれてたのを知ってたから。
君は寂しい顔をしたり、雨粒のついた僕をまん丸な目で見つめてた。』
紫陽花が話してくれたので、少女は、びっくり。目をパチパチして驚いた。

『僕は、アーサー
君が話しかけてくれるのを待ってたんだ
花の世界ではね…
人間に自分から話しかけてはいけないんだ
伝わるように想いを願うだけ
だから僕が咲いてる間に
君の声を聞けることをずっと願っていたんだよ。』
アーサーの気持ちに少女は頬を赤らめた。
それから毎日のように少女は、
紫陽花のところに通い、
紫陽花が好きな雨の唄を歌っ
たり
手をとり優しくダンスをした。
身体が弱くて学校に行ってないから、
友達ができて楽しんでいた。

しかし、そんな楽しさとは裏腹に
だんだんと元気がなくなった
アーサーとの
お別れがやって来ました。
『また来年、僕が生まれたら話しかけてほしい…』
アーサーは少女に言った。
少女は、『必ずまた会おうね』と言って
何度も何度も振り返っては、
大きく手を振った。
少女はアーサーが見えなくなった瞬間、
涙が止まらなかった。

次の年
少女はまた紫陽花の咲くあの場所に
向かいました。
毎日毎日、アーサーに似た紫陽花を見つけては
話しかけたけれど、
どの紫陽花も返答がなかった。
その年はアーサーには会えなかった。

次の年も  
やはり
会えなかった。

今年こそは…
今年を最後に 
会いに行こう。
そう思い
またあの場所へ…

少女は紫陽花が咲き始めた
1日目2日目とアーサーに
会うことができなかった。
3日目は肌寒い雨の日。
探してるうちに
元々身体が弱い少女は
雨のなか倒れてしまった。
倒れたその場所の紫陽花がアーサーでした。
『アーサー』と呼び
アーサーが『やっと会えたね』
と言った瞬間、
少女は涙を流したあと
帰らぬ人となってしまった。

彼女が最後に流した一粒の大きな涙が
種となり、
アーサーへの会いたい想いが
少女を紫陽花へと生まれ変わらせた。

その年は、見る人見る人、
誰もがため息をつくくらい美しく咲いた。
隣にいるアーサーも誇らしげだった。
少女は今年も愛するアーサーのため
自分のためにも美しく咲いた。
雨の唄を歌いながら…

おしまい


#story #fantasy #flowers #物語

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