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これからの教員に必要な資質・能力とは?

1人1台端末、学習者用デジタル教科書など、これまでの学校にはなかったツールの活用が求められています。もちろん「使うこと」が目的ではなく、児童生徒の資質・能力を伸長するために、手段として使うことが大切です。
とは言え、頭では分かっていても、実際にはなかなか難しいところがあるものです。ある段階までは「使うこと」を目的にするのも大切だと思います。そのうえで、子どもの実態や各教科の特性に応じて、効果的な活用をしていく段階に移っていくことになるでしょう。
ただ、指導主事の立場から見ると、効果的な活用を生み出していく教員もいれば、「使うこと」が目的の段階で留まってしまう教員が一定数いるのも実情だと思います。では、「使うこと」が目的の段階から、次のステップに行ける人となかなか進めない人の違いは何でしょうか。

■新しい学びを実現できる教員

国立教育政策研究所は、「新しい学びを実現できる教員」として、次のように示しています。

自分の実践的判断の根拠を学習の記録を基に語り、次の授業に対する仮説を自分で立てられる教員 ー「こう考えられるからこう試してみた。その結果こうなったから、最初の考えを見直して、次はこうしよう」と語ることができる教員ー が求められているのだと言える。

「主体的・対話的で深い学びのための教員養成・研修プログラムに関する調査報告書」国立教育政策研究所、2017

そのうえで、こういった資質・能力を獲得するためには、(1)適当的熟達、(2)省察的実践、(3)建設的相互作用 という学び方が有効だとされています。
指導主事としては、この3つを意識して教員に働きかけることが考えられます。
この中で私が特に注目しているのは、(2)省察的実践です。

■省察がなぜ必要なのか

なぜ、省察が重要なのでしょうか。まずはそこを簡単に考えたいと思います。

例えば、カリスマ教師の授業を参観したとします。その授業があまりに素晴らしく、自分もやってみたいと思いました。授業後、カリスマ教師に話しかけ、単元計画や指導案をもらうことができました。
自校に帰り、早速次の日、同じ様に授業をしました。しかし、うまくいきませんでした…。

これは、私の実体験でもありますし、これに近い経験をされている教員の方も多いと思います。なぜうまくいかないかは、考えるまでもないと思います。もちろん、自分とカリスマ教師は経験もキャラクターも違いますし、何より子どもの実態が違うからです。教師は、目の前にいる子どもに応じて対応していくことが求められる職業だからです。
だからこそ、授業をしながら、子どもの様子を見取り、うまくいっているか、うまく行っていない場合はなぜなのか、見当を付けて対応を変え、反応を見る・・・こういった省察が必要になるわけです。

■教員の省察を促すために指導主事ができること

教員には省察が必要ですが、それを促すために指導主事ができることは何でしょうか。
簡単に言えば、次の2つだと思います。

①省察の機会をつくること
②省察を促す働きかけをすること

例えば、授業研究に呼ばれた場合を考えます。
そこで考えるのが、そもそも教員が省察する機会があるかどうかです。

 公開授業 → 自評 → 協議 → 指導講評

この流れが一般的ですが、このどこで省察が行われるのでしょうか。
「自評」がそれらしい位置付けですが、実際はそうではないことが多くります。「今日の子どもたちは緊張していて、いつもとは様子が違ったんです…」といったものは、省察とは言わないでしょう。
多くの場合、授業研究の中では省察の時間が実は確保されておらず、各自に任している部分があると思います。
しかし、指導主事として、教員が新しい学びを身に付ける教員を育成しようとするならば、省察の時間の確保は必要です。
具体的には、授業研究の主催者と話をして、全体の研修デザインの中に省察の時間を確保することが考えられます。それが難しいようであれば、与えられた指導講評の中で時間を確保することが考えられます。

そのうえで、省察を促す働きかけをすることです。
「今日の授業では、導入に10分かかっていました。できればそこを、5分以内にした方が、話し合いが活性化します。」
このような指導では、省察は働きません。
マニュアルを与えているのと同じだからです。こういったことを繰り返すことにより、ヒデュンカリキュラムとして、「こういう時はどうすればいいですか?」と正解を求め続ける教員を育ててしまうことになりかねません。
大切なのは、指導主事が自分軸で「指導をする」のではなく、相手軸で「どのような働きかけをすれば、省察を促すことができるか」と考えることです。
大きな話で言えば、「どのような子どもを育てたいんですか?」「どんな授業を目指していますか?」といったものになるでしょう。少しおろせば、「この教科で子どもが身に付ける力はどのようなものですか?」となり、「この単元では・・・」「この授業では・・・」となるでしょう。
そのうえで、「今日の授業で先生の働きかけが、うまくいったところはどこですか?逆に、うまくいかなかったところはどこですか?」と尋ねれば、自ら考え、次の行動を考えることにつながるように思います。

指導主事としては、自立した教員を育てることが大事だと思っています。毎日の授業を、自分で省察のサイクルを回していく教員です。
そのために指導主事は、省察の機会を設けることと、省察を促す働きかけを工夫することが大切でしょう。
私自身も、このことについて考え続けたいと思っています。

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