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半径5mの世界を楽しくするということ

私が暮らしているのは奥羽山脈の真っ只中、岩手県西和賀町です。
その西和賀町の南側、JR北上線が通っている線路沿いの、裏が錦秋湖という素晴らしいロケーションのところで暮らしています。

我家にはお風呂が無いので、徒歩1分のところにある「ほっとゆだ」という温泉にいつも入りに行きます。定期券があって、町民なら月3,600円で入り放題。

ほっとゆだの温泉の掲示物の件で、前回のnoteではモヤッとしたことを書きましたが、観光客と地元の客が適度にいて、垢抜けない感じが個人的に好きです。

お風呂の中で、近所のお世話になっている人の子供と遊んだり、人情厚いおっちゃんとの会話は面白く、自分の中で非日常であり日常である、そんな不思議な場所です。

ほっとゆだの温泉まで、我が家から距離にして数百メートルしかないんですが、今年の夏、ある企画をすることにしました。

それは

でん!

そう、浴衣を着てほっとゆだまで温泉に入りにいくということです!

この町のキャッチコピーは『どこにも無い四季と湯の里』。

湯の里と謳っている割には、どこの温泉街でも浴衣を着て歩いている人を見たことがありません。

毎回、ほっとゆだ駅前通りを車で通るたびに「ここを浴衣で歩いている人がいたらどんなに素敵な町だろう」なんて考えていました。

「いや、もしかしたら、自分たちがまず着ちゃえばいんじゃね?

ということで、湯の里西和賀町で西和賀町民が誰も浴衣を着て歩いていないので、まずは自分たちが率先して着ます。

しかも、ただの浴衣ではありません。

ユキノチカラ西和賀町デザインプロジェクト×京屋染物店という企画で生み出された、なんとも素敵な浴衣なんです!

ユキノチカラデザインプロジェクトは、西和賀の一般的に厄介だと言われる雪を町の力に変えるという素晴らしいプロジェクトで、商品パッケージのリ・デザインを中心に4年くらい前から取り組みが行われてきました。

何よりもネーミングが素敵で、地元ながらビバ西和賀!と思ったものでした。

地方創生先行型交付金を活用し、今日までユキノチカラツアーをしたり、全戸配布にユキノチカラ新聞を入れたりと力を入れてきました。

2017年3月にはユキノチカラフォーラムを開催し安倍昭恵夫人も呼んだことがあった。この頃は森友問題がピークのときで私人か公人かで日本中で話題になっていた渦中だった。

こういうのは、国のお金も入っているので、お金が減ってくると元気が無くなってくるものです。過去を振り返ってもだいたいそんな感じなんじゃないでしょうか。

この4年間を一町民として見てきた限り、それはユキノチカラにも当てはまり、浸透はしているものの、どこか勢いは落ちてきています。

事業者として関わっているわけでもなく、何か目に見える形で恩恵を受けているわけでなないのですが、西和賀町民の誇りと自信を身につけるいいプロジェクトなので、なんとか浸透してほしい。事業者だけでなく、この豪雪地帯に暮らす人々が、この豪雪地帯だから良かったと思えるよう続いてってほしいというのが、一町民の願いでした。そしてそれはやがて自治にも繋がる。

そんなことを思っていたときに現れたのが、この浴衣だったんです。

冷涼な雪を連想できる素敵なデザイン。見た瞬間、これを着てほっとゆだ駅前通を歩きたいと思いました。

私が着る側でなく、見る側だったら間違いなく「いいね!」って言うはずだし、誰も浴衣なんて着て歩いていないから、少し恥ずかしいけどこれはやりたいと思いました。

そして、気がついたらポチっとしてしまい、男性ものは無かったので、反物を頼み、地元で昔和服を仕立てていたという方に依頼し、浴衣を作っていただきました。

2日ほどで完成した。その方は湯本温泉が栄えていたとき、仕事としてやっていたそう。もともと好きで中学生の頃からそういうことをやっていたんだとか。自分はあまり興味ないけど、ある人は聞いて学べばできるようになってビジネスになるんじゃないかな。

私がやりたかったのは、もちろんこの素敵なデザインの浴衣を着て歩くということだったんですが、それ以上にやりたかったのは、このほっとゆだまでの数百メートルを居心地のいい道路にするということです。想像してみてください。若い夫婦が2人で夕刻に浴衣を着て温泉に入りに行く。車通りが少ないのでゲタのカランコロンという音も響く。過疎は進んでいるかもしれませんが、私はそういう地域に暮らしたいんです。

「あら〜いいごど!」
「デザインが涼しげ」
「かっこいい!」

たった数百メートル歩いただけで色んな人から声をかけられました。

FBの投稿も反応が良かったです。

※コメントから抜粋
ちょうど私が通った時に見かけてなんだろうって思ってたら、今度父が見かけていがった!って会話したよ
うちの父世代だと駅前が1番栄えてた時代だから盛り上げようとしてくれてるの特に嬉しいだろうな。

こうやって地域の中に前向きな会話を生み出すこと。とてもクリエイティブでやりがいがあります。

季節をきちんと感じ、ケノ日でもこの地に暮らしている感じが伝わってくる地域。西和賀ほど広くなくてもいい。たった、数百メートル、もっと言えば半径5mの範囲内にいる人が各々楽しげに笑って明日への希望を感じながら暮らせたら、私も居心地のいい自由な心躍る気持ちになれるんです。

ほっとゆだ浴衣プロジェクトはその第一弾。

多分ですけど、浴衣を着る家があと3軒くらい出てきたら、観光客も着(来)始めるようになるきがします。

住民が楽しげに暮らしているというのが1番の地域活性化だと思うし、それは住民の方から沸き起こらないといけないような気がしています。

新しいスタンダードを創れたり、ムーブメントを起こしやすかったりするという楽しみがあるのがこの地域の良さ。

それを考えるだけで、ニヤニヤ・ワクワクが止まりません。

eiが今日は居なかったけど、ほっとゆだ駅前通りを1人浴衣姿で闊歩!

zen

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