中村対談南昌寺

暮らしのうつくしさを楽しみ地域の価値をあげる3日間 in 西和賀レポート⑧

3月28日。冬の入りのような寒さの1日の終わりは、少し雪が降ってきた。
イベント告知を始めてから、丁寧に声がけを行ってきたつもりだったが、本番どれくらい人が集まるかは蓋を開けてみないとわからない。特に地元の人にたくさん来てほしかったため、朝に再度直接電話もした。やはり何人かは忘れていた人もいたため、電話してよかった。対談が終わってから自分のまわりがどう変わっていくかにとてもわくわくしていたし、来た人に満足した時間を提供できるか、とても緊張していた。

南昌寺

今回対談イベントを企画した場所は、ほっとゆだ駅から歩いて徒歩3分にある南昌寺というお寺です。企画する際、何箇所か候補を出していましたが、可能な限り、今まで利用されたことのないような場所を選びたいと思い、知り合いから意見をいただき、南昌寺に決定しました。
去年の8月に、地元の神輿の慰労会に参加させていただいた際、南昌寺の和尚様もいらしていて、少しお話をしたとき、「面白い人だな〜」って思っていたのもありましたので、きっと力になってくださると思い、対談開催1ヶ月前、お寺の門を叩きました。
対談の企画の話をしていく際に、いろいろ説明をしていくわけですが、和尚様の頭には明らかに『?』が浮かんでて、私が熱を込めて「まちやど」とか「暮らしの美しさ」とかを説明していっても、頷いて聞いていただくだけでした。でも、最後に使用許可を取る際は、快く許可をしてくださり、ほっと胸をなでおろしたところでした。あまり、今までこのようなイベントをお寺で開催したことがなかったようなので、少し難色を示したようでしたが、和尚様の人柄に救われました。

車座スタイルの対談イベント

美さがしを終え、対談が始まる1時間前に南昌寺に入った我々は、今回の対談のスタイルをどのようにするかを話し合いました。
お寺と言っても、客席とゲストと分けたくないな〜という思いもありましたので、最終的には中村さんが、椅子や座布団を車座状に並べていき、その中心に中村さん、高鷹さん、私の3人が座るスタイルに落ち着きました。
中村さんが、このスタイルでやると言ったとき、今日の対談が成功する気しかしませんでした。
開催予定の19時が迫り、お客さんもチラホラ入ってくるようになりました。声がけをした人はもちろん、意外な人まで来てくださり、とても驚きました。1回しか宣伝していないのですが、毎日行くほっとゆだ温泉の常連さんとかが来てくださったのは本当に嬉しかったです。その他にも、町内のお風呂でばったり会った人に、脱衣所まで連れて行って、イベントの告知をしたのはいい思い出です。もちろんその方も来てくれました。(裸で何かをお願いするのは重要ということがわかった)
このあたりの地区長や協議会長、議員や行政職員、他所から嫁いできた若いお母さんとかに来ていただき、客席は50席が満員。立ち見まで出る始末でした。

地域の価値を上げる場づくりとは!?

オープニングにあたり、私から今日のイベントの説明をしたあと、こんな流れでイベントはスタートしました。

◯オープニング
◯アイスブレイク①
◯それぞれのやっていることの紹介
◯アイスブレイク②
◯トークセッション
◯質疑応答

今回の対談イベントでは聴きに来たお客さんを客体化したくないと思い、2度のアイスブレイクを入れることにしました。よくこういうイベントで、開場の緊張をほぐすためのものですが、先日自分がゲストで参加したトークイベントでこのアイスブレイクが良い役割をしており、初めての実践でしたが、やってみることにしました。

アイスブレイク①では、近くの人と3人組をつくってもらい、下記のことを1人1分くらいで話してもらいました。

①名前・所属
②なんで今日ここに来たか
③今の気持ち

場がもたつくという心配もありましたが、意外とこれが盛り上がり、開場のボルテージが上がっていくのを感じました。

対談スタート

まずはじめに、それぞれのやっていることの紹介ということで、山人-yamado-社長の高鷹政明さんから説明が入りました。


なぜ山人という宿を始めようと思ったのか、はじめてから今日に至るまでの道のりのお話、山人が今後盛り上がっていくにはどうしたらいいのか。
というお話を中心に、宿の紹介ビデオを交えながらお話が進みました。
山人は口コミサイトでとても高い評価をされており、また、西和賀町内では、周知されている宿ではありますが、高級宿ということもあり、泊まったことのある人は少ないと思われます。なので情報が少ないという意味で、来た地元の参加者にとっても山人の取り組みを知るいい機会だったのではないかと思いました。

続いては、中村さんのやっていることの紹介です。
中村さんからは、どこから来たかの紹介と、今やっていることの紹介。そして西和賀に来てどう思ったかを中心に話していただきました。
冒頭おっしゃっていたのは、今日来ているみなさんが1番やりたいことはなんですかという問と、ではそのあなたがやりたいことで10年先のニーズをつくりましょうということ。そのために西和賀がトップバッターにならなければならないというお話からスタートしました。
もうすでにこの時点で、西和賀に来てから半分は越えているわけですが、全国を飛び回っている中村さんからすると、東北は宝の宝庫だと言います。普通地方に行くとそこのお宝が1〜3個くらい見つかれば良い方と言いますが、東北、とりわけ西和賀は15〜20個位見つかると言います。「西わらび」「豪雪」「茅葺屋根の家」「イーハトーブ」。
もうすでに、西和賀に入ってから、本質的なことがわかる人数名に出会ってしまったそうです。
また、中村さんは27歳の時に、町の先輩方から言われ、地域づくりの中心を担ってきたわけですが、地域づくりをしてきたのでは無いと言います。自分は「風土づくり」をしてきて、風(よそ者)と土(地元)を繋ぐ活動を地道にやってきただけだと。
それが結果として、52カ国から120,000人が訪れる場になったり、様々いろんな賞をいただいたりしたが、あくまでそれは結果だと言います。そして、気がついたのは、家族内での会話の質を高めるところからやっていかないと地域は、日本はよくならないと気がついたそうです。
どうやって価値を上げていくのかを20個くらい真剣に考えたとき「宿」が1番適しているという答えになり、それから宿(ゲストハウス)文化を日本に発信しようということで、ゲストハウス開業合宿を行うようになりました。
ゲストハウス開業合宿では、ゲストハウスをつくっては行けないというお話からスタートします。ニーズがあるからやるのではなく、ニーズを作るのが宿の役割というのはとても興味深い話だと思いました。

アイスブレイク②

それぞれのやっていることの紹介が終わり、ここでもう一度アイスブレイクを入れました。今度はこんな感じです。

①ゲストのお話を聞いてみての感想
②西和賀(自分のところ)で自分ができると思うこと

2回めということもあり、会場は大盛り上がりでした。1〜2分程度と言っていたのにもかかわらず、みなさんの話は止まることなくいつまでも盛り上がっていました。タイムキーパーもしている私としては、時間が押しているのもあり、少しヒヤヒヤしていましたが、なんかやってよかったな〜としみじみ心の中で思っていました。

こんな感じでいくつもの島に分かれ、盛り上がった。

続いて、お互いの話を聞いてということで、高鷹政明さんと中村さんから一言ずつ感想をいただきました。

高鷹政明さんは、中村さんのお話を聞いて、何気ない生活から宝を見つけ出す観点を教えてもらったと言います。山人がこれからさらに特価していくためには、西和賀の人の生活感を織り交ぜていければいい宿になるのではないかと感じたそうです。

中村さんは、高鷹政明さんのお話を聞いて、本物を追求している山人という宿があるということが日本の誇りと言います。やっていて簡単じゃないということはわかるが、理想と経済は両立するということを証明されている宿に出会えたことがとても嬉しいと言っていました。

私からも、いろいろお二人のお話を聞いて感じたことがたくさんあったのですが、質問をひとつだけさせてもらいました。

「ずっと地域の中にいると客観的な視点を持ちづらいと思うのですが、どうやってその視点を持ち続けたらいいですか」

中村
風は風土づくり。まちづくりじゃない。風土づくりにきがついた。地元の人だけでやってたら、土は風が吹かず水がなかったら腐っていく。よそ者という人を楽しませる。資料交換と情報交換。西和賀にとって面白いことみつけたから、西和賀に骨を埋める人。風の人の情報交換ができると知恵が残る。家族が増えたと思ったら、自分の土地に行って発信してくれる。不快な思いをさせないために、どうるすか。マイナスになならないためにやる。山人は日本で1番。相手の立場になり最大限に関心を寄せること。いいことはしません。よくお客さんの立場になってみる。倉敷で宿を始めたとき、先輩から「宿なめるな。最低3年修行しろ」と言われた。全く宿をやったことなかったのに、知らなかったから最大限おもてなしをした。台所とかお客さんが綺麗にしてくれる。あなたが来たことは最大限に感謝する。来た人がしてくれる。もちろん失礼のないことが目標。結果西和賀のために2週間くらいくる。2週間来る人をどれだけつくれるか。その作戦で20人くらい移住させた。西和賀でやったほうがいい。やらなかったら私がやりたい。情報交換。来た人が発信する。まちなかゲストハウスっていいな。
高鷹政明
山人が全て抱えて、ショールームだということがストレスだったりする。旅館ホテルの役割。地域はどうだっていう話。自覚をもって取り組みたい。まちなかのゲストハウス、みんなが得意なところをやる。地域に人が来ることが理想になる。山人も地域の良さを発信するということで地域がよくならなければ山人もよくならない。地域の価値を知っている方々だと思うので、来るお客様に発信してほしい。理想的なまちづくりができる。

会場も盛り上がってきており、止めてしまうのがとてももったいなく感じましたが、時間ということもあり、一旦ここで対談は終了することにしました。

そこから引き続き懇親会です。

西和賀町食の匠に認定されている高橋節子さんという方の郷土料理を振る舞う予定が、急遽肩を痛められたということで、代打として私の妻がつくりました。2日前からゼンマイを戻したり、凍み大根を準備したりと、いろいろ忙しそうでした。

懇親会は30名くらい。こちらもとても盛り上がった。

最後に締めの挨拶のとき、ここ南昌寺の和尚様が言っていたことがとても印象的でした。

「最初、瀬川さんが今回のイベントの件を説明しに来たとき、半分くらい何を言っているかがわからなかったけど、熱意に押され、こちらのお寺の使用を許可しました」

対談の終わりのとき、私から、「今日来た人で今日感じたことをぜひ、家の人でもいいし、SNSでもいいので話してください」と言いましたが、もし今日来た人が一人ずつ今日来ていなかった別の人に話してくれたとしたら、倍以上の人に拡散されるわけで、こういうところから会話の質を高めていければいいなと思いました。

プログラムも大詰め。いよいよ次回はプログラム3日目についてです。

つづく。

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