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春木山を覚えておきたい -ひとつの山文化が閉じようとしている-

去年のちょうど今頃、西和賀の長瀬野という集落の山の中で、「春木山」という行事を体験させてもらった。春先に山の中に入って木を切り、雪がすべることと傾斜を利用して、木材を運びだすという、まさにユキノチカラを利用した文化だ。ところが噂によると「今年はやらないらしい」。そして、一度途切れると、復活は難しいらしい。春木山を毎年手伝って、いつか自分で集めた薪で薪ストーブを焚くという夢は、少し遠のいた。町の9割が山林なのに、わたしたちの暮らしは山から離れていって、私が言える立場でもないが、なんだか寂しい。

去年、春木山体験記を書いたので、備忘として残しておきたい。
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2018.3.14

東北2年目の冬。春が近づくにつれ、「かた雪」という言葉をよく聞くようになった。ふかふかした新雪だと足を取られるけど、かた雪は、言葉通り雪面が固くて、歩きやすいし、滑りやすい。宮沢賢治の「雪わたり」の中で「かたゆきかんこ」と出てきたので、ぼんやり「かたゆき」という言葉は覚えていたけど、それが実際どんなものかは知らなかった。東京育ちのわたしには、降る雪ではなく足元の雪に対しても名前がついているってことが、この冬の新しい発見だった。

雪国の人々は春になると山に入り、木を切り出し、雪の力を利用して材を運びだす。これも「かた雪」が滑ることを利用した知恵で、ガスも電気もなかった頃は、春に1年分の薪を集めることは、生活に欠かせない仕事だった。集落で国有林を買い、人数分の区画を割り振り、クジ引きで場所を決める。木を切って運びだすのは、それぞれの家で責任を持ってやる。この昔ながらの行事を「春木山」と呼ぶそうで、先週末すこしだけお手伝いさせていただく機会を得た。

木にふった番号で自分の割り当てがわかる

道端に車を停めて、山の中に入っていくと、すり鉢状に開けた斜面でみなさんが山仕事に精を出している。山の中でこんなに大勢の人が働いているなんて、外からはまったくわからなくて、こういう、当事者にとっては日常すぎて表に出ることなく廃れつつある文化を垣間見れたことが貴重だった。お手伝いさせてくださった方が、「おれのちっちぇ頃は、煮炊きも風呂もぜんぶ薪でやったんだ」と話すのを聞いて、ガスや電気が実に最近の生活文化なのだと気付いた。

翌日は筋肉痛だったけど、山の斜面で「トビ」という道具を使って丸太を転がすのは、なかなかに楽しかった!うまく転がると気持ちがよい

切った木を集めながら下へ降ろしていく。

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木の種類によって重さが違ったり、昔は1ヶ月くらいかけてこの春木山をやってたこととか、経験者と一緒に山に入って体験してみて初めてわかることがいっぱいある。これきりにならないことを祈ります、、、また春木山やりたい!

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