2022/02/28 晴れ

呪いというものは可能な限り美しい絹で編まなければならない。そう教えたのは神社の端で啜り泣く阿吽の犬であった。幾重にも編み、それに触れたものの皮膚を優しく裂けと。冬仕様に温度が傾き始め、色めく心音達の濁流の中、神様が私のハサミを持つ指先に口付けをした日。砂漠の湖でいようとしたことが酷く分不相応だったことをスナネズミに耳打ちされるまで気付けなかった哀れな雨水の問い。それはあくまでスナネズミの意見であってバイソンに聞けば答えは変わるよと学者は言う。拍手を促す聴衆達。誰も塗りつぶそうとしないキャンバスはいつまでたっても白く白く白く白く白く、燻むことすら許されていないようだった。琥珀の液体を喉に与えれば、喉奥が淡く痺れ、ぞりぞりと体内のカタチが浮き彫りになる。意味付けなんて無意味だ。阿弥陀籤の先は空白。思えば毟り取られてばかりだった、否、毟られるためにそこにいたのかもしれない。蝉の抜け殻を握り潰す少年の拳にばかり愛を込めた。
ガゼルが跳ねる。それは春の訪れだった。白い花冠を横目に吸い付いた舌先はアカシアの蜂蜜。いつか噛みちぎる為に見る白昼夢のこと。