2021/08/23 晴れ

何かをつくって残していかないと、この途方も無い空白は塗り潰せない。
飲み込むだけでは満たされない。存在を明白に出来ない。提示し続けるのは自分のため。
古巣の本屋に遊びに行ったら棚卸しで大変に忙しそうだったのでちょびっと手伝った。働きたい気持ちが疼く。労働が好き、というよりは求めてくれる場所や人に貢献したい。存在意義が欲しい。生きているだけでいい、なんて思えないのだ。私は大事な人達にそう言うのに。
1日が長い。寝ても寝ても終わらない。

「あの日、こっそりと決めた誓いをあまく流れた先で忘れてはいけないよ」ぽこぽこと音をたて、水槽のアロアナが言う。大丈夫。まだなんとか忘れずにいるよ。綿飴が溶けそうになっていたから冷凍庫に入れたんだ。つめたく、かたく凍ってしまえばいい。舐めたくなったら優しく抱いて溶かして、怖くなったらそっと暗いところに閉じ込めてしまえばいいんだ。桜餅の味はもうとっくに消えてしまったから、あれはもはやただの砂糖の塊さ。綿飴屋のおじさんが「あの子の方が上手に食べているよ、君は随分と意地汚いね」と罵ってくることもあるんだけど、あの人って何度刺しても砂糖で傷を埋めて不意に現れるんだから困ったもんだよね。お手上げさ。諦めて共存することにした。僕の目を潰すことは出来ないからね。「もうその話は何度目だい?」アロアナはまだ話の途中なのに堂々と欠伸をする。僕は水槽の電源を切った。

そうやってまた私を知った気になる。