[映画]レ・ミゼラブル ~敵はいない。複雑なインセンティブの絡み合い~

レミゼラブルは一度は映画か原作をみてみようと思ったけど原作は映像がない分、時代背景がしっかりわかってないとあまり楽しめないと聞いたので映画をみてみた。世界史は勉強してたけどフランス革命らへんって結構入り乱れてたからすぐに忘れちゃうんだよな。

時代としては1789年のフランス革命から1832年の六月蜂起を描いた話。当時のフランスはナポレオンがセントヘレナ島に流刑された後、ルイ18世が王政復古し王党派が権力を取り返すと続いてシャルル10世が王権を引き継ぎ出版の自由の廃止や議会を解散するとパリの市民は七月革命を起こし、それを機にオルレアン家のルイフィリップが王座につくものの、産業資本家への癒着がひどく(ブルジョワ王と言われていた)、産業資本家達はそういった王からのバックアップもうけながら安い賃金で労働者を働かした。

そして市民を中心に色んな蜂起や暴動が起きてレミゼラブルの最終決戦は六月蜂起を描いている。小説は文字だけのため最低でも↑のような知識がないとしっくり来ない部分があると思う。古典文学はフィクションではない場合はなかなか歴史に詳しくない人にはハードルが高い。

あらすじとしては主人公であるヒュージャックマンがパンを1つ盗んだ罪で強制労働をするところから始まる。そこで仮釈放を与えられるがジャックマンは脱走する。それから数年後、彼は身分を偽り市長兼工場経営者になるまで上り詰める。ある日、夜の町を歩いてたところ自身の工場で働いていた女性(アンハサウェイ)と出会い彼女は子供を育てなければいけないのに首にしてしまった事実を知り、罪滅ぼしとして、その子供を6月蜂起が鎮圧された後に蜂起メンバーの1人であった若者と結婚するまで引き取り育てる話。

映画に内容としては悲劇(貧困、飢え、圧政、失恋、死)の詰め合わせと少しの幸福(未来への希望)みたいな感じであった。特に最初のアンハサウェイが子供を育てるために髪を売り、歯を売り、身体を売ってお金を稼ぐシーンはかなり痛々しいし、六月蜂起で勝てないとわかっていても自由のために命をとして戦う若者に感動した。

そしてそういった苦しい生活を市民に強いて、少しの罪でも容赦なく取り締まっている警察(ラッセルクロウは警部)側も若者を鎮圧するのに殺しているなか自分がやっていることは正義なのか?と不安になるのがリアルだなと感じた。どこの国もそうだけど絶対的な正義なんかなく、戦争してるときは人を殺しても称えられる時もある。それがよくわかるのはラッセルクロウが自殺するシーン。ラッセルクロウは脱走者であるジャックマンを捕まえようと躍起になっていたが、自分が蜂起した若者達に縛られているところをジャックマンに助けられ、そこでジャックマンは悪い男ではないのか?自分は神の道を歩んでいたと思っていたが実は違ったのかもしれないと罪悪感から飛び降り自殺してしまう。こういった分かりやすく敵か味方が別れていないというのがジブリとかの物語の深みに繋がるところがある。

この物語では様々な不幸が起こるがどの不幸にも誰が悪いとか中々、特定できないところが憂鬱さを醸し出していて思いっきり泣きたい人にはぴったりの映画だと思う。

映画はずっとミュージカルで普通にしゃべっているシーンが殆ど無かったけど自分はミュージカル耐性があるのか別に違和感を感じなかったけどミュージカル嫌いは受け付けないかもしれない。そういった人はグレイテストショーマンとかの方が曲もノリがいいやつが多いので楽しめるかもしれない。

点数は92点。誰が悪いとか決めつけられないリアルな内容が良かった。あと頼られることの幸福とか色々知れたし、歴史としてこんなことがあったんだなと歴史を振り返れるから良い映画だったと思う。あと出てる俳優さんたちの歌も良かった。ただずっとセリフをミュージカル調にするよりも強弱つけた方がいいんじゃない?と思ったから92。曲自体もグレーテストショーマンの方が一曲一曲の平均が凝ってたと思う。

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