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【Wine ワイン】2004 Domaine de la Garrigue


SAINT-EMILION GRAND CRU Gros Caillou所有のデュピュイ家が造る滑らか長熟ボルドー。
ちょいピークアウト気味だったけど中々良かった。

楽天
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■Producer (生産者)
⁃ Domaine de la Garrigue ドメーヌ・ド・ラ・ガリーグ

■Country / Region (生産国 / 地域)
⁃ A.O.C. Bordeaux / Bordeaux / France

■Variety (葡萄品種)
⁃ 65% Merlot
⁃ 25% Cabernet Flanc
⁃ 10% Cabernet Sauvignon

■Pairing (ペアリング) 
⁃ Entrecóte à la Bordelaise アントルコート・ア・ラ・ボルドレーズ(牛リブロース肉の炭火焼。しばしばブドウの枝で焼かれる)
⁃ Lamproie la Bordelaise ランプロワ・ア・ラ・ボルドレーズ(ヤツメウナギの赤ワイン煮)
⁃ Agneau de Pauillac アニョー・ド・ポーイヤック(ポーイヤック産仔羊):ジロンド県内において母羊の母乳で育てられた生後80日までの仔羊。2015年2月3日の政令によりI.G.P.認定。Beuf de Bazas ブフ・ド・バザス(バザス産牛肉):ジロンド県、ランド県の大部分、ロット・エ・ガロンヌ県とジェール県の一部で育てられたバザデ種の肉牛。2008年3月19日の政令でI.G.P認定。
⁃ Cépe de Bordeaux セップ・ド・ボルドー(セップ。イタリアのポルチーニと同種の茸)



■Bordeaux ボルドー地方

県名 
⁃ Gironde ジロンド

■プロフィール
 フランス南西部の大西洋沿いに広がるワイン産地。フランスでも1、2を争う銘醸地として知られ、カリフォルニアのナパ・ヴァレーやイタリアのボルゲリなど、ボルドーの影響を受けたワイン産地は数多く存在する。この地方のワインはしばしば、シャトーと呼ばれるワイナリーで醸造される。シャトーをフランス語で直訳すれば「城」となるが、必ずしも瀟洒(しょうしゃ)な城館とは限らず、納屋や民家同然の建物も少なくない。シャトー所有のブドウ畑で収穫されたブドウを用いて醸造され、瓶詰めまで一貫生産されたワインには、「Mis en Bouteille au Cháteau ミザン・ブテイユ・オー・シャトー」とラベルに表記することが許されている。カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなど、赤も白も複数のブドウ品種の栽培が認められており、なかには例外的に単一品種のシャトーもあるものの、多くのワインが複数の品種をアッサンブラージュ(ブレンド)することで造られる。双壁(そうへき)とされる銘醸地、ブルゴーニュのワインが原則的に単ー品種から造られるのと対照的である。アッサンブラージュの意義は、各品種が互いの特徴を補完し合うことによって、ワインにバランスがもたらされると同時に、天候によるリスク分散の意味合いもある。その大半が赤ワインだが、昔から甘ロ白ワインも有名で珍重された。80年代以降は辛口白ワインの醸造技術が向上し、近年はロゼワインの人気も高い。また生産量は小さいが、クレマン・ドボルドーという発泡性ワインも造られている。

■歴史
 古代ローマ人に占領された紀元1世紀の中ごろから、ボルドーにブドウ栽培が持ち込まれたと考えられている。4世紀に活躍した著述家でボルドー市の執政も務めたアウソニウスも、サンテミリオンにブドウ畑を所有していたことが知られており、これが現在のシャトー・オーゾンヌと見なされている。ワイン産地としてボルドーが飛躍するのは中世以降のこと。現在のボルドーに当たるアキテーヌ地方を領有していた女公爵アリエノール・ダキテーヌが、1152年にアンジュー伯ノルマンディー公のアンリと結婚。このアンリが2年後の1154年にイングランド王へンリー2世に即位したため、ボルドーは英国領となった。そのお陰でボルドー産のワインは海を渡って英国で売られ、繁栄を迎えたのである。
 しかしながらこの交易は1453年、フランスが英国との百年戦争に勝利し、アキテーヌ地方を取り戻すと同時に解消された。そして22年後の1475年、ルイ11世が再び英国船のボルドー寄港を認めたものの、ワインの取引量が以前の水準まで回復することはなかったという。17世紀になるとオランダやハンザ同盟との交易が発展し、ボルドーは再び繁栄。クラレットと呼ばれる赤ワインのほかにも、辛口、甘ロの白ワインが蒸留用として輸出されるようになり、オランダ人の優れた技術によって、沼沢地だったメドック地区が干拓された。ボルドーのワイン産業は発展を続けたが、1789年のフランス革命で貴族の所有していたシャトーは国庫に没収。しかしその後、資金力をもつボルドーのブルジョワジーにより、分割されることなく買い取られたのは幸いだった。パリ万国博覧会が開催された1855年に、有名なボルドーワインの格付けが行われた。赤ワインは、当時から高値で取引されていたシャトーのワインを1級から5級まで格付けしたもので、1973年にシャトー・ムートン・ロッチルドが2級から1級へと昇格したのを唯一の例外として、改定が行われていない。この格付けを契機に、単なる飲み物に過ぎなかったワインが、暗好品(しこうひん)としての価値を香びるようになっていくのである。

■文化
 古代ローマ時代から良港として知られたボルドーは、18世紀に栄華を極め、黄金時代を築いた。この時代の壮麗な建築物が立ち並ぶボルドー市の市街区域は、2007年、「月の港ボルドー」としてユネスコの世界遺産に登録されている。また、ドルドーニュ川右岸に位置するサンテミリオンはサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路の途上にあり、今なお中世の面影をとどめることから、ボルドーに先立つ1999年に、「サンテミリオン管轄区」の名前で世界遺産に登録された。ボルドーはルネサンス期の哲学者モンテーニュ、啓蒙思想家のモンテスキューを輩出した地であり、グラーヴ地区にはモンテスキューが生まれ、数々の著作を執筆したラ・ブレード城が今も残っている。フランス革命時には裕福なブルジョワ議員を輩出し、国民公会では穏健右派のジロンド党(ボルドーワインの生産地域はジロンド県に属する)を形成した。またボルドーにはブドウ栽培学、ワイン醸造学のシンクタンクともいうべき、ボルドー大学醸造学部があり、世界中のワイナリーの子弟が学びに訪れるほか、最先端の研究が行われている。
 2016年にはワインのテーマパーク「ラ・シテ・デュ・ヴァン」がオープン。ボルドーはワイン文化の世界的首都として、再び注目を集めている。

■経済
 ワイン産地としてのボルドー地方は、フランスの行政範囲に置き換えればジロンド県とほぼ重なり合う。ジロンド県はヌーヴェル・アキテーヌ地域圏に属し、その最大の都市が人口25万人のボルドー市だ。LGV南ヨーロッパ大西洋線(TGV高速新線)の開通により、パリ・モンパルナス駅からわずか2時間10分でボルドー・サン・ジャン駅に到着可能となった。10キロ西にはボルドー・メリニャック空港があり、空路での移動も容易である。市内には3本のトラム(路面電車)が走っている。ガロンヌ川やジロンド川から大西洋に通じているため、昔から海運業が盛んな土地であり、フォードやミシュランなど自動車産業の工場や、航空機の製造工場も置かれているが、当然ながら、ワイン産業の占める地位も大きい。ボルドーワインの取引は伝統的にネゴシアンと呼ばれるワイン商によって行われ、シャトーが直接小売業者と取引することはまれである。ネゴシアンを介したボルドーワインの取引は全体の7割に及び、輸出の8割を握っている。2012年における全ネゴシアンの売り上げ金額は42億ユーロ。なお、CIVB(ボルドーワイン委員会)の発表によれば、2018年におけるボルドーワインの輸出量は190万hℓ(2億5,100万本)、金額にして20億9,000万ユーロとなっている。ボルドー地方には5,000以上のシャトーがあり、生産者数は14,000。およそ400のネゴシアンが存在する。

■気候風土
 ボルドー市の緯度は北緯45度。日本では北海道だが、大西洋沿岸を流れる暖かなメキシコ湾流の影響により、穏やかな海洋性気候である。大西洋とブドウ畑の間には広大な松林=ランドの森が広がり、海風からブドウ畑を守っている。年間日照時間は2,000時間を超え、ブドウの生育期は晴天に恵まれているが、それでも年平均降雨量は900mmと比較的多い。それがブドウにしばしば灰色カビ病をもたらすー方、一部の地域ではブドウの貴腐化を促すことになる。ブドウ畑が広がるアキテーヌ盆地の海岸線は、ピレネー山脈と中央山塊が形成され、海の侵入が治まった新生代第三紀の終わり(約1800万年前)に出来上がった。従って、ボルドー地方の土壌はすべて、第三紀と第四紀のものである。ピレネー山脈から流れるガロンヌ川と中央山塊から流れるドルドーニュ川が、ボルドー市のすぐ北で合流しジロンド川となって大西洋に注ぎ込む。ブドウ畑はこれら3つの川の周囲に広がっている。詳細は各産地ごとに述べるが、一般的にいって、ガロンヌ川及びジロンド川左岸は砂礫質土壌で、暖かく水はけの良い土地を好むカベルネ・ソーヴィニョンの栽培に適し、ドルドーニュ川及びジロンド川右岸は粘土質土壌のため、冷たく保水力のある土地に向いたメルロが適している。ガロン川とドルドーニュ川に挟まれた中洲も粘土質で、メルロの栽培比率が高い。

■ワイン生産量(出典:関税期馬(DGDDI)計2018年度ジロンド書の数値)
ワイン生産量5,400,424hℓ(うちA.O,C.ワイン生産量5,041,735hℓ / 白11.5%、赤84%、ロゼ4.5%。I.G.P.ワイン生産量22,154hℓ)ブドウ栽培面積114,615ha(うちA.O.C.ワインの面積112,633ha:I.G.P.ワインの面積255ha)

■主要ブドウ品種
[黒ブドウ]
⁃ Cabernet Sauvignon カべルネ・ソーヴィニョン
⁃ Cabernet Franc カべル・フラン
⁃ Merlot メルロ
⁃ Malbec(Cót)マルベック(コット)
⁃ Petit Verdot プティ・ヴェルド
⁃ Carmenère カルムネール

[白ブドウ] 
⁃ Semillon セミヨン
⁃ Sauvignon ソーヴィニヨン
⁃ Sauvignon Gris ソーヴィヨン・グリMuscadelle ミュスカデル

■地方料理と食材
⁃ Entrecóte à la Bordelaise アントルコート・ア・ラ・ボルドレーズ(牛リブロース肉の炭火焼。しばしばブドウの枝で焼かれる)
⁃ Lamproie la Bordelaise ランプロワ・ア・ラ・ボルドレーズ(ヤツメウナギの赤ワイン煮)
⁃ Agneau de Pauillac アニョー・ド・ポーイヤック(ポーイヤック産仔羊):ジロンド県内において母羊の母乳で育てられた生後80日までの仔羊。2015年2月3日の政令によりI.G.P.認定。Beuf de Bazas ブフ・ド・バザス(バザス産牛肉):ジロンド県、ランド県の大部分、ロット・エ・ガロンヌ県とジェール県の一部で育てられたバザデ種の肉牛。2008年3月19日の政令でI.G.P認定。
⁃ Cépe de Bordeaux セップ・ド・ボルドー(セップ。イタリアのポルチーニと同種の茸)
⁃ Asperges du Blayais アスペルジュ・デュ・ブライエ(ブライ産白アスパラガス):砂質土壌のブライ地区で栽培される白アスパラガス。
⁃ Caviar d'Aquitaine キャヴィア・ダキテーヌ (アキテーヌ産キャヴィア)
⁃ Canelé カヌレ(カヌレ型を用い、外はカリッと、中はもっちりと焼き上げた菓子。ワインの清澄に卵白を使うため、余った卵黄の利用法として生み出されたとされる)
⁃ Macarons de Saint-Emilion マカロン・ド・サンテオン(サンテミリオンのマカロン):アーモンド風味の素朴な焼き菓子。サンテミリオン名物。

■Bordeaux ボルドー全域
 ボルドー地方を包括するA.O.C.には以下のようなものがあり、南西部を除くジロンド県一帯に認められている。最も広範囲にわたり、規定も緩いA.O.C.ながら、地区名A.O.C.や村名A.O.C.に属すシャトーが、ワインをボルドーの広城A.O.C.としてリリースすることがある。例えば、後述するA.O.C.メドックは赤ワインしか認められていないため、このエリアのシャトーが辛口白ワインを造った場合は、A.O.C.ボルドーになってしまう。ボルドー全域のA.O.C.ワインには、シャトー元詰めのワインのほか、ネゴシアンが城内の生産者からワインを買い集めてブレンドした、ブランドネームのワインも多い。

■主要なA.O.C.ワイン
⁃ Bordeaux ボルドー(赤、白、ロゼ)
⁃ Bordeaux Supérieur ボルドー,シュペリュール(赤、甘口白)
⁃ Bordeaux Claret ボルドー・クラレット(赤)
⁃ Bordeaux Clairet ボルドー・クレレ(色の濃いロゼ)
⁃ Crémant de Bordeaux クレマン・ド・ボルドー(発泡白、発泡ロゼ)
いずれもブドウの栽培エリアは共通で、542あるジロンド県の市町村のうち505市町村で認められている。ボルドー・シュペリュールはボルドーよりも収穫時の最低糖度、収量、最低アルコール度数などの規定が厳しい。ボルドー、ボルドー・クラレット及びボルドー・シュペリュールの赤に認められている品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ、マルベック(コット)、プティ・ヴェルド、それにカルムネール。色の濃いロゼであるボルドー・クレレもこれに準じる。クレレ以外のロゼは、上記6品種を主要品種とし、補助品種としてセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリの混酸が20%(ソーヴィニヨン・ブランとソーヴィニヨン・グリは最大10%)まで認められている。ボルドー及びボルドー・シュペリュールの白はセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニョン・グリ、ミュスカデルを主要品種とし、コロンバール、メルロー・ブラン、ユニ・ブランの補助品種を最大30%まで用いることができる。ボルドーの白は辛口から甘口(残糖は最大60g / ℓ)まで認められるが、ボルドー・シュペリュールの白は、残糖が17g / ℓを超える甘口のみである。
 2019年にA.O.C.ボルドー及びボルドー・シュペリュール生産者組合は温暖化対策として、赤用にトウリガナショナル、アリナルノア、マルスラン、カステ、白用にアルヴァリーニョ、プティマンサン、リロリーナを補助品種に認定。I.N.A.O.の承認を経て決定する。クレマンド・ボルドーは瓶内二次発酵による発泡性ワイン。白はカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ、マルベック(コット)、プティ・ヴェルド、カルムネール、セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、ミュスカデルが主要品種として認められ、補助品種のコロンバール、メルロ・ブラン、ユニ・ブランを最大30%まで用いることができる。ロゼに認められているのはカベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、メルロ、マルベック(コット)、プティ・ヴェルド、カルムネールの黒ブドウのみで、果皮浸漬により色付けする。瓶内熟成期間は最低9カ月である。

■Médoc メドック地区
 ボルドー市の北、ジロンド川の左岸を南北に延びるワイン産地。ピレネー山脈から流れてきたギュンツ氷期(新生代第四紀更新世)の砂利が、数10mの深さまで堆積している。砂利はジロンド川沿いに多くみられ、河口に向かうほど、また内陸ほど少なくなり、粘土質の土壌が目立ってくる。砂や砂利の多い砂標質土壌はカベルネ・ソーヴィニヨンの生育に適しており、力強く、骨格のしっかりしたワインを生む。これにカベルネ・フランやメルロをブレンドしてバランスをとることが多い。メドック地区は南のオー・メドックと北のメドックに分かれ、オー・メドックには6つの村名A.O.C.がある。特に村名A.O.C.には後述する格付けシャトーがあり、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体とする長期熟成タイプの高級ワインを生み出している。メドック地区のA.O.C.で認められているのは赤のみで、自やロゼを造ると、A.O.C.ボルドーに格下げせざるを得ない。

■主要なA.O.C.ワイン
⁃ Médoc メドック(赤)
⁃ Haut-Médoc オー・メドック(赤)
⁃ Saint-Estéphe サン・テステフ(赤)
⁃ Pauillac ポイヤック(赤)
⁃ Saint-Julien サン・ジュリアン(赤)
⁃ MoulisまたはMoulis-en-Médoc ムーリスまたはムーリス・アン・メドック(赤)
⁃ Listrac-Médoc リストラック・メドック(赤)
⁃ Margaux マルゴー(赤)

 メドックがボルドー市の北から河口のル・ヴェルドン・シュール・メールまで51カ村に認められるのに対し、オー・メドックはそのうち南部の28カ村に限られる。そのような関係でメドックはオー・メドックの下位A.O.C.と思われがちだが、最大収量、最低糖度、最低アルコール度数などの規定には両者で差はない。認められているブドウ品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ、マルベック(コット)、プティ・ヴェルド、それにカルムネール。これらの認定品種はオーメドックに属する6つの村名A.O.C.も同様である。いくら砂礫質のメドックといっても、実際には粘土質の土壌も多く、内陸は涼しいため、完熟したカベルネ・ソーヴィニヨンを収穫できる土地は限られている。従ってメドック及びオー・メドックにおける実際の作付け比率はメルロのほうが多い。ブレンド比率的にも当然メルロ主体となり、まろやかで親しみやすいワインを生む。オー・メドックの村名A.O.C.では最も北に位置するサン・テステフは浅い砂礫の下に粘土石灰質の土壌をもち、堅牢で骨太なワインが多い。その南のポイヤックは砂礫質の土壌が顕著にみられ、どのシャトーもカベルネ・ソーヴィニヨンの比率が高めで、力強く骨格のしっかりしたワインを生む。さらに南に隣接するサン・ジュリアンは、砂利の混じった粘土質や粘土石灰質の上を砂利が覆う土壌で、骨格のしっかりしたワインもある一方、力強さとしなやかさを兼ね備えたワインも多い。
 ムーリスとリストラック・アン・メドックはやや内陸に位置するため川面の輻射熱を受けることができず、年によってはカベルネ・ソーヴィニヨンの完熟が難しい。従ってメルロの比率の高いワインが多く、村名A.O.C.の中では柔らかみがあり、比較的早めに楽しめる。マルゴーはマルゴー村のほか、スッサン、カントナック、ラバルド、アルサックの計5カ村で構成される、オー・メドック最大の村名A.O.C.で、サン・ジュリアンからやや南に離れている。砂礫質の小さな丘や粘土石灰質の土壌が点在し、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロの調和のとれたワインが多く、オー・メドックの村名A.O.C.では最もエレガントとされる。

■Graves グラーヴ地区
 ボルドー市の南、ガロンヌ川の左岸を北西から南東に延びるワイン産地。オー・メドック同様、ガロンヌ川が運んできたギュンツ氷期の砂利(=グラーヴ)に覆われ、これが産地名となっている。ボルドー地方の最南部に位置するうえ、ガロンヌ川の輻射熱も影響し、一般的にメドックよりもブドウの生育は早い。メドックのA.O.C.が赤ワインのみに限られるのに対し、グラーヴでは白ワインの生産も認められ、ガロンヌ川沿いの中流域には貴腐ワインの産地であるソーテルヌ &バルサック地区を内包する。上質の赤ワインを産出するグラーヴ北部は1987年に独立し、ペサック・レオニャンのA.O.C.を名乗っている。

■主要なA.O.C.ワイン
⁃ Graves グラーヴ(赤、辛口白)
⁃ Graves Supérieures グラーヴ・シュペリュール(甘口白)
⁃ Pessac-Léognan ペサック・レオニャン(赤、辛口白)
グラーヴ及びグラーヴ・シュペリュールは、ボルドー市の北西にあるエズィーヌ村からランゴン市の先に位置するサン・パルドン・ド・コンク村までの42カ村に認められ、ペサック・レオニャンはそのうち、ペサック村やレオニャン村など北部の10カ村のみに認められたA.O.C.である。最大収量はグラーヴの赤が65hℓ / ha、辛口白が68hℓ / haなのに対し、ペサック・レオニャンは赤白ともに54hℓ / haとより厳しい。従って、理論的にはペサック・レオニャンをグラーヴに格下げすることが可能である。グラーヴ・シュペリュールは貴腐または遅摘みにより熟度の上がったブドウから造られる、残糖34g / ℓ以上の甘口白ワインに認められたA.O.C.である。グラーヴ及びペサック・レオニャンの赤ワインに認められている品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ、マルベック(コット)、プティ・ヴェルド、それにカルムネール。砂利質の土壌に恵まれたペサック・レオニャンの赤ワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランの比率が比較的高めで長期熟成タイプのものが多い。それに対してグラーヴの赤ワインは、砂や粘土質の土地も多いことからメルロの比率が高く、柔らかみのあるワインとなる。グラーヴとペサック・レオニャンの辛ロ白ワイン、それにグラーヴ・シュペリュールの甘口白ワインに認められている品種は、いずれもセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニョン・グリ、ミュスカデルの4つ。辛口ほどソーヴィニヨン・ブランの比率が高く、甘ロほどセミヨンの比率が高い傾向がある。

■格付け[1855年の格付け]
 1855年に開催されたパリ万国博覧会の展示品の1つとして、時の皇帝ナポレオン3世の要請を受け、ボルドー商工会議所が作成したシャトーの格付け表。正式名称は「ジロンド県産の格付け赤ワイン及び白ワイン」であり、建前的
にはジロンド県内のすべてのシャトーを対象としたものだが、作成したのがボルドー商工会議所のため、リブルヌ商工会議所が管轄するドルドーニュ川右岸のサンテミリオンやポムロールのシャトーは顧みられず、赤ワインはメドックのシャトーに限定された。唯一の例外は、当時から名声の高かったグラーヴのシャトー・オーブリオンである。このため、今日この格付けは「1855年のメドック格付け」や「1855年のメドック及びグラーヴ格付け」と呼ばれることが多い。格付けは試飲によって決められたものではなく、過去数十年にわたる取引価格をもとに決定された。1855年4月18日に発表された格付けでは、第一級に4シャトー、第二級に12シャトー、第三級に14シャトー、第四級に11シャトー、第五級に16シャトーの計57シャトーが選ばれた。その後、相続による分割や他のシャトーへの吸収などを経て、今日、61のシャトーが格付け表に名を連ねている。万博の会期中、第五級にシャトー・カントメルルが加えられたほか、1973年にシャトー・ムートン・ロッチルドが第二級から第一級への昇格を果たした。150年以上の間にシャトーの所有者は目まぐるしく変わり、ブドウ畑の拡張や分割も行われているが、これ以降、見直しが行われる様子はない。

[CrusClassésdeMédocen 1855メドックの1855年格付けワインコミューン欄の()はA.O.C.出典:Consell des Grands Crus Classésen 1855(並び順は出典に準ずる)
* 1:このほかに、Cháteau Haut-Brion(Pessac)がメドック地区ではないが唯一選ばれた
* 2:Château Mouton Rothschildは1973年昇格
* 3:旧名は1976年よりCháteau Mouton Baronne Philippe

■Premiers Grands Crus プルミエ・グラン・クリュ(4)
*Cháteau Lafite-Rothschild シャトー・ラフィット・ロッチルド
Cháteau Latour シャトー・ラトゥール
Cháteau Margaux シャトー・マルゴー
Cháteau Mouton-Rothschild シャトー・ムートン・ロッチルド* 2

■Deuxièmes Grands Crus ドゥジエム・グラン・クリュ(14)
Cháteau Rauzan-Séglaシャトー・ローザン・セグラ
Cháteau Rauzan-Gassies シャトー・ローザン・ガシー
Cháteau Léoville-Las Cases シャトー・レオヴィル・ラスカーズ
Cháteau Léoville-Poyferréシャトー・レオヴィル・ポワフェレ
Cháteau Léoville-Barton シャトー・レオヴィル・バルトン
Cháteau Durfort-Vivens シャトー・デュルフォール・ヴィヴァンス 
Cháteau Gruaud-Laroseシャトー・グリュオ・ラローズ
Cháteau Lascombes シャトー・ラスコンブ
Cháteau Brane-Cantenac シャトー・ブラーヌ・カントナック
Cháteau Pichon-Longueville Baronシャトー・ピション・ロングヴィル・バロン
Cháteau Pichon-Longueville Comtesse de Lalande シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド
Cháteau Ducru-Beaucaillou シャトー・デュクリュ・ボーカイユ
Cháteau Cos d'Estournel シャトー・コス・デストゥルネル
Cháteau Montrose シャトー・モンローズ

■Troisièmes Grands Crusトロワジェム・グランクリュ(14)
Cháteau Kirwan シャトー・キルヴァン
Cháteau d' Issanシャトー・ディサン
Cháteau Lagrange シャトー・ラグランジュ
Cháteau Langoa-Barton シャトー・ランゴア・バルトン
Cháteau Giscours シャトー・ジスクール
Cháteau Malescot Saint-Exupéry シャトー・マレスコ・サン・テグジュベリ
Cháteau Boyd-Cantenac シャトー・ボイド・カントナック
Cháteau Cantenac-Brown シャトー・カントナック・ブラウン
Cháteau Palmer シャトー・パルメール
Cháteau La Lagune シャトー・ラ・ラギュンヌ
Cháteau Desmirail シャトー・デスミライユ
Cháteau Calon-Ségur シャトー・カロン・セギュール
Cháteau Ferrière シャトー・フェリエール
Cháteau Marquis d'Alesme-Becker シャトー・マルキ・ダレーム・ベッケール

■Quatrièmes Grands Crus カトリエム・グラン・クリュ(10)
Cháteau Saint-Pierre シャトー・サン・ピエール
Cháteau Talbot シャトー・タルボ
Cháteau Branaire-Ducru シャトー・ブラネール・デュクリュ
Cháteau Duhart-Milon-Rothschild シャトー・デュアール・ミロン・ロッチルド
Cháteau Pouget シャトー・プージェ
Cháteau La Tour-Carnet シャトー・ラ・トゥール・カルネ
Cháteau Lafon-Rochet シャトー・ラフォン・ロッシェ
Cháteau Beychevelle シャトー・ベイシュヴェル
Cháteau Prieuré-Lichine シャトー・プリウレ・リシーヌ
Cháteau Marquis de Terme シャトー・マルキ・ド・テルム

■Cinquièmes Grands Crus サンキエム・グラン・クリュ(18)
Cháteau Pontet-Canet シャトー・ポンテ・カネ
Cháteau Batailley シャトー・バタイイ
Cháteau Haut-Batailley・シャトー・オー・バタイイ
Cháteau Grand-Puy-Lacoste シャトー・グラン・ピュイ・ラコスト
Cháteau Grand-Puy-Ducasse
シャトー・グラン・ピュイ・デュカス
Cháteau Lynch-Bages シャトー・ランシュ・バージュ
Cháteau Lynch-Moussas シャトー・ランシュ・ムーサ
Cháteau Dauzac シャトー・ドーザック
Cháteau d'Armailhac シャトーダルマイヤック(1989年より名称変更)*)
Cháteaudu Tertre シャトー・デュ・テルトル
Cháteau Haut-Bages-Libéral シャトー・オーバージュ・リベラル
Cháteau Pédesclaux シャトー・ペデスクロー
Cháteau Belgrave シャトー・ベルグラーヴ
Cháteau de Camensac シャトー・ド・カマンサック
Cháteau Cos-Labory シャトー・コス・ラボリ
Cháteau Clerc-Milon シャトー・クレール・ミロン
Cháteau Croizet-Bages シャトー・クロワゼ・バージュ
Cháteau Cantemerle シャトー・カントメルル

[グラーヴの格付け]
 1855年の格付けではシャトー・オー・ブリオンを唯一の例外として、グラーヴのワインが選ばれなかったことから、生産者組合の要請に応じ、INAOによって任命された審査委員会が作成した格付け表。1855年から100年近く後の1953年に発表され、1959年に承認された。1855年の格付けと違って階級分けは行われず、16のシャトー名がワインの色とともに列挙されている。1855年の格付けで第一級に選ばれたシャトーオー・ブリオンは、もちろんこの格付けにも入っているが、当時すでに造られていた白ワインが除外されているのは、生産量が余りに少ないため、オーナーのドゥロン家が辞退したためである。格付け時にはなかったが、その後、白ワインや赤ワインを造り始めたシャトーも少なくない。グラーヴの格付けシャトーはすべて、1987年に制定されたA.O.C.ペサック・レオニャンに属している。

[Crus Bourgeois クリュ・ブルジョワ] 
 1855年の格付けに漏れたメドックのシャトーを対象として、1932年にボルドー商工会議所とジロンド県農業会議所の権威のもと、「クリュ・ブルジョワ」の格付けが発表された。ブルジョワは中産階級を指し、クリュ・ブルジョワという概念はシャトーの所有者の社会的地位を表す言葉として、以前からすでに存在していたという。
 この格付けは省庁の認可を受けたものではなかったが、2000年に農務省の省令で、クリュ・ブルジョワの規定が定められ、Cru Bourgeois クリュ・ブルジョワ
の上位階級として、Cru Bourgeois Supérieur
クリュ・ブルジョワ・シュペリュールと、最高位に当たるCru Bourgeois Exceptionnel クリュ・ブルジョワ・エクセプシオネルが設定された。これに基づき、2003年に公式の格付けが初めて発表されたが、審査の公正さに異論が噴出。2007年、ボルドーの行政控訴院はこの格付けを無効とする判決を下した。その後、シャトーのオーナーらは「メドック・クリュ・ブルジョワ連盟」を作り、格付けではなく、1つの認定としてクリュ・ブルジョワの名称復活を発表。メドックの8つのA.O.C.に属するシャトーを対象に、仕様書の遵守、第三者機関による官能検査の合格、第三者機関の訪問調査受け入れなど諸条件を満たした場合にのみ、クリュ・ブルジョワの認定を与えることとした。審査は毎年行われ、2年前のヴィンテージの認定シャトーが、毎年9月に発表される。2019年は2017年ヴィンテージが対象で、226のシャトーがクリュ・ブルジョワの認定を受けた。無効となった格付けのように上位階級がないことから、ほかとの差別化を求めるシャトー・シャス・スプリーンやシャトー・プジョーなど参加を見送る有カシャトーが多く、上位階級の復活が連盟内で検討されている。

出典:Union des CrusClassésde Graves(並び順は出典に準ずる)
* 1:下記すべてのA.O.C.名はPessac-Léognanである。
* 2:Cháteau Haut-Brionの白は、生産量の少なさから、格付け入りを辞退した。
* 3:Chateau La Tour-Haut Brionは2005ヴィンテージを最後に生産が中止された。そのブドウ畑はCháteau La Mission Haut- Brionに併合され、La Chapelle de la Mission Haut-Brionにブレンドされている。
* 4:Cháteau Laville Haut-Brionは、2009ヴィンテージから、Cháteau La Mission Haut-Brion Blancに名称変更された。

Cháteau Haut-Brion シャトー・オー・ブリオン
Cháteau Bouscaut シャトー・ブスコー
Cháteau Carbonnieux シャトー・カルボニュー
Domaine de Chevalier ドメーヌ・ド・シュヴァリエ
Cháteau Couhins シャトー・クーアン
Cháteau Couhins-Lurton シャトー・クーアン・リュルトン
Cháteau de Fieuzal シャトー・ド・フューザル
Cháteau Haut-Bailly シャトー・オー・バイィ
CháteauLa Mission-Haut-Brion シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン
CháteauLa Tour-Haut-Brion シャトー・ラ・トゥール・オー・ブリオン
Cháteau Latour Martillac シャトー・ラトゥールマルティヤック
Cháteau Laville Haut-Brionシャトー・ラヴィユ・オー・ブリオン* 4
Cháteau Malartic-Lagravièreシャトー・マラルティック・ラグラヴィエール
Cháteau Olivier シャトー・オリヴィエ
Cháteau Pape Clément シャトー・パプ・クレマン
Cháteau Smith-Haut-Lafitte シャトー・スミス・オー・ラフィット



[Crus Artisans クリュ・アルティザン] 
 1855年の格付け当時からある概念で、車大工、蹄鉄工(ていてつこう)、馬具師、製樽工などの職人(アルティザン)が、その片手間に造っていたワインが起源。1994年に欧州連合が「クリュ・アルティザン」の名称をラベルに記すことを認め、2002年に規定を作成。2006年の省令で初めて44の生産者がクリュ・アルティザンに認定された。5年ごとに見直しが行われることになっており、公式サイトによれば、現在その数は36となっている。

■特殊な用語
[Second Wine セカンドワイン]
 英語でセカンドワインやセカンドラベル、フランス語でスゴン・ヴァンと呼ばれるワインは、シャトーで造られるワインのうち、そのシャトーのメインラベル(英語でファーストラベル、フランス語でグラン・ヴァンともいう)の水準に達していないワインをブレンドし、別のラベルでリリースするもの。ファーストラベルの品質を維持するために考案された。
 多くの場合、樹齢が若い区画のブドウや条件的に劣る区画のブドウがセカンドワインに用いられるが、熟成中の試飲により格下げされたワインが、セカンドワインにブレンドされることもある。大きなシャトーではセカンドワインの品質を底上げするため、その下にサードワインまたはサードラベルを設けているシャトーもある。
 セカンドワインの名前は突然変わることがあり、また輸出先によって異なる名前を用いているシャトーも少なくない。かつては規模の比較的大きなメドックのシャトーに限られていたが、ペサック・レオニャンやサンテミリオンでもセカンドワインを造るシャトーが増えている。

■Saint-Emilion&Saint-Emilion Satelite サンテミリオンとサンテミリオン衛星地区
 ドルドーニュ川右岸に位置する歴史的な町、サンテミリオンを拠点に広がるワイン産地。バルバンヌ川を挟んで北側には、いずれもサンテミリオンの名が付く4つのA.O.C.があり、これをサンテミリオン衛生地区と呼ぶ。いずれのA.O.C.も赤のみに認められ、白やロゼを造るとA.O.C.ボルドーに格下げとなる。
 サンテミリオンもその衛生地区も、土壌はおおむね石灰岩を母岩にもつ粘土石灰質土壌で、主に栽培されるブドウ品種はメルロ。それにカベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンが適宜ブレンドされる。サンテミリオンのワインの中にはしっかりとしたストラクチャーをもち、長期の熟成に耐えるもののどもあるが、その多くは口当たりなめらかで、しなやかな喉越しをもつ。
 サンテミリオンでも1955年に最初の格付けが行われ、その後6回見直しが行われている。

■主要なA.O.C.ワイン
⁃ Saint-Emilion サンテミリオン(赤)
⁃ Saint-Emilion Grand Cru サンテミリオン・グランクリュ(赤)
⁃ Saint-Georges Saint-Emilion サン・ジョルジュ・サンテミリオン(赤)
⁃ Montagne Saint-Emilion モンターニュ・サンテミリオン(赤)
⁃ Lussac Saint-Emilion リュサック・サンテミリオン(赤)
⁃ Puisseguin-Saint-Emilion ピュイスガン・サンテミリオン(赤)
 A.O.C.サンテミリオンは、サンテミリオンの町を中心とする9市町村に認められており、これはリブルヌ市を除き、1999年にユネスコの世界遺産に登録された「サンテミリオン管轄区」の8町村と重なる。管轄区とは12世紀、英国の支配下における裁判所の管轄地を意味する。
 土壌はサンテミリオンの丘の斜面や台地が、石灰岩を母岩とする粘土石灰質、南のドルドーニュ川に近い平野部は砂がちの土壌で、ポムロールと隣接する北西部にメドックと同じギュンツ氷期の砂利質土壌がみられる。栽培品種はメルロ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、マルベック(コット)、カルムネールを主要品種とし、補助品種としてプティ・ヴェルドを10%未満まで認めている。実際には多くのワインがメルロ主体で、それにカベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドする。ただし北西部の砂利質土壌からは、カベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンを主体とし、繊細ながら長期熟成に耐え得るワインが生み出されている。近年の気候変動を理由に、粘土石灰質の土壌ながらカベルネ・フランの比率を高めるシャトーも少なくない。
 サンテミリオン・グラン・クリュは格付けとは無関係のA.O.C.で、最大収量や最低アルコール度数の規定をA.O.C.サンテミリオンより厳しく定めたもの。A.O.C.ボルドーに対するA.O.C.ボルドー・シュペリュールと同様の関係である。
 バルバンヌ 川を挟んでサンテミリオンの北に位置する4つの衛星A.O.C.は、いずれも粘土石灰質の土壌をもつ。モンターニュ、リュサック、ピュイスガンはそれぞれ村の名前で、サン・ジョルジュはモンターニュ村の一部である。
 品種規定は微妙に異なり、サン・ジョルジュ・サンテミリオンはメルロ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニョン、マルベック(コット)、カルムネール、プティ・ヴェルドの6品種を等しく認める一方、ほかの3つのA.O.C.はメルロ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、マルベック(コット)を主要品種とし、補助品種のカルムネールとプティ・ヴェルドの作付け比率を10%未満と定めている。ただしモンターニュ・サンテミリオンは、そのブレンドにおいて主要品種を7割以上含まなければならない。
 サンテミリオン衛星地区のワインはおしなべてメルロの比率が高く、しなやかな味わいのワインが多い。

■格付け
[サンテミリオンの格付け]
 サンテミリオンの格付けは、1855年の格付けから100年後に実施された。格付けは第一特別級(プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ)と特別級(グラン・クリュ・クラッセ)の2階級からなるが、第一特別級は上級のAとその下のBに分かれるため、実際には3階級である。
 1855年の格付けと大きく異なるのは、10年ごと(必ずしも正確に10年ごとではないが)に見直しが行われることで、これまでに1969年、1986年、1996年、2006年、2012年の6回にわたって改訂されている。2006年の見直しではその公正性を巡って訴訟が起こり、2011年までの暫定措置として1996年の格付けを復活。これに2006年昇格のシャトーも加えるという折衷策がとられた。最新の格付けは2012年発表のもので、これまでシャトー・オーゾンヌとシャトー・シュヴァルブランの2シャトーのみが君臨していた最高位の第一特別級Aに、新たにシャトー・パヴィとシャトー・アンジェリュスが加わっている。

2012ヴィンテージから適用される格付け 『出典:Syndicat Viticole de Saint-Emilion)

Premiers Grands Crus Classés(アルファベット順
CháteauAngélus(A)シャトー・アンジェリュス
シャトー・オーソンヌ Cháteau Ausone(A)
シャトー・ボーセジュールCháteau Beauséjour(Duffau-Lagarrosse デュフォー・ラガロス)
シャトー・ボー・セジュール・ベコ Cháteau Beau-séjour-Bécot 
シャトー・ベレール・モナンジュ Cháteau Bélair-Monange
シャトー・カノン Cháteau Canon
シャトー・カノン・ラ・ガフリエール Cháteau Canon la Gaffelière
シャトー・シュヴァル・ブラン Cháteau Cheval Blanc(A)
シャトー・フィジャック Cháteau Figeac
クロ・フルテ Clos Fourtet
シャトー・ラ・ガフリエール Cháteau la Gaffelière
シャトー・ラルシス・デュカスCháteau Larcis Ducasse
ラ・モンドット La Mondotte
シャトー・パヴィ Cháteau Pavie(A)
シャトー・パヴィー・マカン Chateau Pavie Macquin
シャトー・トロロン・モンド Cháteau Troplong Mondot
シャトー・トロットヴィエイユCháteau Trottevieille
シャトー・ヴァランドローCháteau Valandraud 

Grands Crus Classés(アルファベット順)
シャトー・ラロゼ Cháteau l'Arrosée
シャトー・バルスタール・ラ・トネル Cháteau Balestard la Tonnelle
シャトー・バルド・オー Cháteau Barde-Haut
シャトー・ベルフォン・ベルシエ Cháteau Bellefont-Belcier
シャトー・ベルヴュ Cháteau Bellevue
シャトー・ベルリケ Cháteau Berliquet
シャトー・カデ・ボン Cháteau Cadet-Bon
シャトー・カップ・ド・ムルラン Cháteau Cap de Mourlin
シャトー・ル・シャトレ Cháteau le Chatelet
シャトー・ショーヴァン Cháteau Chauvin
シャトー・クロ・ド・サルプ Cháteau Clos de Sarpe
シャトー・ラ・クロット Chateau la Clotte
シャトー・ラ・コマンドリー Chateau la Commanderie
シャトー・コルバン Cháteau Corbin
シャトー・コート・ド・バロー Cháteau Cóte de Baleau
シャトー・ラ・クスポード Cháteau la Couspaude
シャトー・ダッソー Cháteau Dassault
シャトー・デステュー Cháteau Destieux
シャトー・ラ・ドミニク Cháteau la Dominique
シャトー・フォジェール Chateau Faugères
シャトー・フォリ・ド・スシャールCháteau Faurie de Souchard
シャトー・ド・フェラン Cháteau de Ferrand
シャトー・フルール・カルディナル Cháteau Fleur Cardinale
シャトー・ラ・フルール・モランジュ Cháteau La Fieur Morange
シャトー・フォンブロージュ Chateau Fombrauge
シャトー・フォンプレガード Cháteau Fonplégade
シャトー・フォンロック Chateau Fonroque
シャトー・フラン・メーヌ Cháteau Franc Mayne 
シャトー・グラン・コルバン Cháteau Grand Corbin
シャトー・グラン・コルバン・デスパーニュCháteau Grand Corbin-Despagne
シャトー・グラン・メーヌ Cháteau Grand Mayne
シャトー・レ・グランド・ミュライユCháteau les Grandes Murailles
シャトー・グラン・ポンテ Cháteau Grand-Pontet
シャトー・ギュアデ Cháteau Guadet
シャトー・オー・サルプ Cháteau Haut-Sarpe
クロ・デ・ジャコバン Clos des Jacobins
クーヴァン・デ・ジャコバン Couvent des Jacobins
シャトー・ジャン・フォール Cháteau Jean Faure
シャトー・ラニオット Cháteau Laniote
シャトー・ラルマンド Cháteau Larmande
シャトー・ラロック Cháteau Laroque
シャトー・ラローズ Cháteau Laroze
クロ・ラ・マドレーヌ Clos la Madeleine
シャトー・ラ・マルゼル Cháteau la Marzelle
シャトー・モンブスケ Cháteau Monbousquet
シャトー・ムーラン・デュ・カデCháteau Moulin du Cadet
クロ・ド・ロラトワール Clos de l'Oratoire
シャトー・パヴィ・デュセス Cháteau Pavie Decesse
シャトー・ペビ・フォジェールCháteau Peby Faugères
シャトー・プティ・フォリ・ド・スタールCháteau Petit Faurie de Soutard
シャトー・ド・プレサック Cháteaude Pressac
シャトー・ル・プリウレ Cháteau le Prieuré
シャトー・キノー・ランクロ Cháteau Quinault l'Enclos
シャトー・リポー Chateau Ripeau
シャトー・ロシュベル Cháteau Rochebelle
シャトー・サン・ジョルジュ・コート・パヴィCháteau Saint-Georges-Cóte Pavie
クロ・サン・マルタン Clos Saint-Martin
シャトー・サンソネ Cháteau Sansonnet
シャトー・ラセール Cháteaula Serre
シャトー・スタール Cháteau Soutard
シャトー・テルトル・ドーゲイ Cháteau Tertre Daugay
シャトー・ラ・トゥール・フィジャック Cháteaula Tour Figeac
シャトー・ヴィルモリーヌ Cháteau Villemaurine
シャトー・ヨン・フィジャック Cháteau Yon-Figeac





(参考)2011年まで有効のサンテミリオンの格付け(出典:Syndicat Vitieele de Saint-Emilon)

プルミエ・グラン・クリュ・クラッセPremiers Grands Crus Classés
シャトーオーソンヌ(A)Cháteau Ausone
シャトーシュヴァルプラン Cháteau Cheval Blanc 
シャトーアンジェリュス(B)Cháteau Angélus
シャトーボーセジュールベコ Cháteau Beau-Sejour-Bécot
シャトーボーセジュール Chateau Beauséjour(Duffau-Lagarrosse デュフォ・ラガロス)
シャトーベレールモナンジュ Cháteau Belair-Monange(ex Chāteau Belair 旧シャトーベレール)
シャトーカノン Cháteau Canon
シャトーフィジャック Chateau Figeac
シャトーラガフリエ Cháteau La Gaffelière
シャトーマグドレーヌ Cháteau Magdelaine
シャトーパヴィCháteauPavie
シャトーパヴィマカンCháteauPavie Macquin
シャトートロロンモンドChateau Troplong Mondot
シャトートロットヴィエイユChateau Trottevieille
クロフルテClos Fourtet

グランクリュークラッセ Grands CrusClassés
シャトーバルスタールラトネルCháteauBalestard la Tonnelle
シャトーベルフォンベルシェCháteauBellefont-Belcier
シャトーベルヴュCháteauBellevue
シャトーベルガChateau Bergat
シャトーベルリケCháteauBerliquet
シャトーカデボンCháteauCadet Bon
シャトーカデビオラ。Chateau Cadet-Piola
シャトーカノンラガフリエールCháteauCanon laGaffelière
シャトーカップド-ムルランCháteauCap de Mourlin
シャトーショーヴァンCháteauChauvin
シャトーコルパンCháteauCorbin
シャトーコルバンミショットCháteauCorbin-Michotte
シャトーダッソーCháteauDassault
シャトーデステューCháteauDestieux
シャトーフォリドスシャールCháteauFaurie de Souchard
シャトーフルールカルディナルCháteauFleur Cardinale
シャトーフォンプレガードCháteauFonplégade
シャトーフォンロックChateau Fonroque
シャトーフランメーヌCháteauFranc Mayne
シャトーグランコルパンCháteauGrand Corbin
シャトーグランコルパンデスパーニュCháteauGrand Corbin Despagne
シャトーグランメーヌCháteauGrand Mayne
シャトーグランポンテCháteauGrand Pontet
シャトーギュアデCháteauGuadet
シャトーオーコルバン Cháteau Haut Corbin
シャトーオーサルプChateau Haut Sarpe
シャトーラロゼCháteauL'Arrosée
シャトーラクロットCháteauLa Clotte
シャトーラクスポードCháteauLa Couspaude
シャトーラドミニクCháteauLa Dominique
シャトーラマルゼルChateau La Marzelle
シャトーラセールCháteauLa Serre
シャトーラトゥールデュパン(シャトーラトゥールデュパンフィジャック)CháteauLa Tour du Pin(exCháteauLa Tour du Pin Figeac) 
シャトーラトゥールデュパンフィジャック(ジローベリヴィエ)CháteauLa Tour du Pin Figeac(Giraud-Bélivier)
シャトーラトゥールフィジャックCháteauLa Tour Figeac
シャトーラニオットCháteauLaniote
シャトーラルシスデュカスCháteauLarcis Ducasse
シャトーラルマンドCháteauLarmande
シャトーラロックCháteauLaroque
シャトーラローズCháteauLaroze
シャトールプリウーレCháteauLePrieuré
シャトーレグランド・ミュライユCháteauLes Grandes Murailles
シャトーマトラCháteauMatras
シャトーモンプスケCháteauMonbousquet
シャトームーランデューカデCháteauMoulin du Cadet
シャトーパヴィデュセスCháteauPavie Decesse
シャトープティフォリドスタールCháteauPetit Faurie de Soutard
シャトーリボーChateau Ripeau
シャトーサンジョルジュコートパヴィCháteauSaint-GeorgesCótePavie
シャトースタールCháteauSoutard
シャトーテルトルドーゲイCháteauTertre Daugay
シャトーヴィルモリーヌCháteauVillemaurine
シャトーヨンフィジャックCháteauYon FigeacクロードロラトワールClos de l'Oratoire
クローデジャコパンClos des Jacobins
クローサンマルタンClos Saint-Martin
クーヴァンデジャコバンCouvent des Jacobins

 [ボムロール]
ポムロールには、サンテミリオンのような格付けはないが、勝るとも劣らないワインを生産している。主なものを以下に挙げる。

シャトー・ペトリュス Cháteau Pétrus
シャトーラコンセイヤント Cháteau la  Conseillante
シャトーガザン CháteauGazin
シャトーネナン CháteauNénin
ルパンLe Pin
シャトーセルタンドメイCháteauCertan-de-May
シャトーレヴァンジルChateau l'Evangile
シャトーラフルール。CháteauLafleur
シャトートロタノワCháteauTrotanoy
ドメーヌドレグリーズDomaine de T'Eglise
フルールベトリュスCháteaula Fleur-Pétrusa Pomerol urà
シャトーラトゥールアポムロールCháteauLatour a Pomerol
シャトープティヴィラージュ。Chateau Petit-Village
ヴィューシャトーセルタンVieux Chateau Certan

■Pomerol&Lalande-de-Pomerol ポムロールとラランドドポムロール
 サンテミリオンの北西に隣接する小さなワイン産地。バルバンヌ川を境界に、南がポムロール、北がラランド・ド・ポムロールで、いずれのA.O.C.も赤のみが認められている。ポムロールの土壌はしばしば粘土質といわれるが、純粋な粘土質土壌は小高い丘の頂点に位置するペトリュスの畑に限られ、ほかの畑はドルドーニュ川の支流であるイル川によって運ばれた、新生代第四紀の小石で覆われている。とはいっても底土は粘土であり、ブドウ品種はメルロが80%を占める。粘土に含まれる酸化鉄の影響により、熟成が進むと官能的なフレーバーが醸し出される。ポムロールのシャトーはいずれも規模が小さく、生産量が限られていることから、他のA.O.C.のワインと比べて高価なものが多い。ラランド・ド・ポムロールは粘土、小石、砂が混ざった土壌で、やはりメルロの比率が高く、ポムロールの弟分的なワインを生む。

■主要なA.O.C.ワイン
Pomerol ポムロール(赤)
Lalande-de-Pomerol ラランド・ド・ポムロール(赤)
ポムロールはポムロール村とリブルヌ市の一部に認められたA.O.C.。認定品種はメルロ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、マルベック(コット)、プティ・ヴェルドだが、実際にはメルロが圧倒的に主体で、メルロ100%のワインも存在する。ラランド・ド・ポムロールはラランド村とその東に降接するネアック村に認められたA.O.C.。メルロ、カベルネ・フラン、カべルネ・ソーヴィニヨン、マルベック(コット)を主要品種とし、補助品種のカルムネールとプティ・ヴェルドの作付け比率は10%未満。主要品種を70%以上ブレンドすることが定められ、こちらもメルロの比率が高い。
Fronsadais フロンサデ
ポムロール、ラランド・ド・ボムロールの両A.O.C.とは、イル川を挟み西に位置するドルドーニュ川右岸のワイン産地。「モラス・デュ・フロンサデ」と呼ばれる軟質砂岩が特徴で、粘土石灰質の土壌にこれが混じっている。フロンサックとカノン・フロンサックの2つのA.O.C.があり、どちらもメルロが主体の赤ワイン。ドルドーニュ川に面し、急な斜面をもつカノン・フロンサックの方がより肉付きのよいワインを生む。

■主要なA.O.C.ワイン
Fronsac フロンサック(赤)
Canon Fronsac カノン・フロンサック(赤)
フロンサックはフロンサック村のほか近隣の6カ村からなるA.O.C.で、主要品種はメルロ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン。補助品種としてマルベック(コット)、プティ・ヴェルド、カルムネールも認められているが、主要品種は作付け比率で80%、ブレンドで50%を占めなければならず、カルムネールとプティ・ヴェルドの作付け比率はそれぞれ10%以下と定められている。カノン・フロンサックはA.O.C.フロンサックの南部2カ村、フロンサックとサン・ミシェル・ド・フロンサックにのみ認められたA.O.C.。品種規定はフロンサックと同じで、最大収量や最低アルコール度数の規定にも違いはない。

■ Cótes コート
 3つの河川、ガロンヌ、ドルドーニュ、ジロンド川沿いに点在するワイン産地。A.O.C.名に「コート(丘)」とあるように、丘陵地の斜面にブドウ畑があることを意味する。2007年に旧コート・ド・カスティヨン、ボルドー・コート・ド・フラン、プルミエール・コート・ド・ブライ、プルミエール・コート・ド・ボルドーの4A.O.C.は「コート・ド・ボルドー連合」を組織し、2009年ヴィンテージからA.O.C.コート・ド・ボルドーを名乗ることを決定した。このA.O.C.は単一の旧A.O.C.域内のワインでも、複数の旧A.O.C.のワインをブレンドしたものでも名乗れる一方、よりテロワールを明確にしたい場合は、カスティヨン・コート・ド・ボルドーのように、旧産地名を表す名称の前または後にコート・ド・ボルドーを付け加えることもできる。2016年にサント・フォワ・ボルドーが連合に加わり、A.O.C.サント・フォワ・コート・ド・ボルドーと名乗るようになった。コートの付く産地ながら、コート・ド・ブールは連合を途中で離脱し、従来どおり独自のA.O.C.を貫く道を選んでいる。単なるコート・ド・ボルドーは赤のみに認められたA.O.C.だが、旧産地名付きコート・ド・ボルドーはそれぞれ赤あり、辛口白あり、甘口白ありとバラエティに富んでいる。

■主要なA.O.C.ワイン
Cótesde Bordeaux コート・ド・ボルドー(赤)
Cadillac Cótes de Bordeaux カディヤック・コート・ド・ボルドー(赤)
Castillon Cótesde Bordeaux カスティヨン・コート・ド・ボルドー(赤)
Blaye Cótesde Bordeaux ブライ・コート・ド・ボルドー(赤、辛口白)
Francs Cótes de Bordeaux フラン・コート・ボルドー(赤、辛口白、甘口白)
Sainte-Foy Cótes de Bordeaux サント・フォワ・コート・ド・ボルドー(赤、辛口白、半甘ロ白、甘口白)
コート・ド・ボルドーは5つの旧産地のどこでも名乗れ、またそのうちの複数をブレンドすることも可能なA.O.C.で、赤のみが認められている。カディヤック・コート・ド・ボルドーはガロンヌ川右岸の旧プルミエール・コート・ド・ボルドーにとって代わったA.O.C.だが、赤のみであり、同一地域で造られる白は引き続き
A.O.C.プルミエール・コート・ド・ボルドーを名乗る。
 カスティヨン・コート・ド・ボルドーはドルドーニュ川右岸、サンテミリオンの東にある旧コート・ド・カスティヨンで赤のみ。
 ブライ・コート・ド・ボルドーはジロンド川右岸に位置する旧プルミエール・コート・ド・ブライで、赤と辛口白に認められている。同一エリアの赤としてブライ、辛口白としてコート・ド・ブライのA.O.C.があるが、ブライの赤は最大収量、最低アルコール度数ともにブライ・コート・ド・ボルドーよりも厳しく、コート・ド・ブライの辛口白は品種構成が異なっている。フラン・コート・ボルドーはドルドーニュ川右岸の旧ボルドー・コート・ド・フランと同一のA.O.C.で、赤のほか、辛口と甘口(残糖51g / ℓ超)の白が認められている。
 新たに加わったサント・フォワ・コート・ド・ボルドーは、ドルドーニュ川左岸、アントル・ドゥー・メール地区の最東端に位置する旧サント・フォワ・ボルドーのこと。南西地方のA.O.C.ベルジュラックに囲まれている。赤のほか、辛口から半甘口(残糖17〜45g / ℓ)、甘口(残糖51g / ℓ以上)の白まで多様なワインを生み出す。赤用品種の規定は全6A.O.C.共通で、メルロ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、マルべック(コット)を主要品種とし、補助品種のカルムネールの作付けは10%未満、プティ・ヴェルドは同じく15%未満。マルベックを必ずブレンドしなくてはならず、補助品種の比率は15%以下と定められている。
 ブライ・コート・ド・ボルドー、フラン・コート・ボルドー、サント・フォワ・コート・ド・ボルドーの白用品種は、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン ・グリ、セミヨン、ミュスカデルを主要品種とし、コロンバール、ユニ・ブランが補助品種で、その作付け比率は15%以下とする。
 規定は上記のとおりだが、赤はメルロ主体の親しみやすいタイプが多い。

Cótesde Bourg コート・ド・ブール(赤、辛口白)
 ドルドーニュ川とジロンド川の右岸、川に面した町ブールを中心とする15町村に認められたA.O.C.。ブールまたはブルジェと名乗ることもできる。認められている品種は、赤がメルロ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、マルべック。白がセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、ミュスカデル、コロンバール。A.O.C.全体の作付け面積ではマルベックの比率が10%とほかと比べて高く、スパイシーな風味が特徴となっている。

Blaye ブライ(赤)
ブライ・コート・ド・ボルドーと同一のエリアで造られる赤のA.O.C.。最大収量や最低アルコール度数などの規定はこちらのほうが厳しい。メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランを主要品種、カルムネール、マルベック(コット)、プティ・ヴェルドを補助品種とし、作付け比率は主要品種が50%以上、カルムネールとプティ・ヴェルドは15%以下。カルムネールは単体で10%以下。醸造においては主要品種を50%以上ブレンドし、マルベックは50%以下、それ以外の補助品種は合計で15%以下とする。

Cótes de Blaye コート・ド・ブライ(辛口白)ブライ・コート・ド・ボルドーと同一のエリアで造られる辛口白のA.O.C.。主要品種がコロンバールとユニ・ブラン、補助品種がソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、セミヨン、ミュスカデルと、辛口白でもブライ・コート・ド・ボルドーとは品種構成が異なる。作付け比率はコロンバールとユニ・ブランで60〜90%を占め、ブレンドでは主要品種の比率が50%を割ってはならない。

■ Entre-Deux-Mers アントル・ドゥー・メール地区
 ドルドーニュ川とガロンヌ川に挟まれた広大な地域。斜面は様々な方向を向き、土壌も砂、粘土、小石、粘土石灰など多様なテロワールをもっている。同名のA.O.C.をもつ辛口白ワインで有名だが、A.O.C.ボルドーに格下げされるものの、同じエリアから赤ワインも多く造られている。また特殊な微気候により、貴腐ブドウによる甘ロワインのA.O.C.もある。

■主要なA.O.C.ワイン
 Entre-Deux-Mers アントル・ドゥー・メール(辛口白)
この地区を代表する辛口白ワインのA.O.C.。ソーヴィニョン・ブラン、セミヨン、ミュスカデル、ソーヴィニヨン・グリを主要品種とし、その作付け比率は70%以上。補助品種はメルローブラン、コロンバール、モーザック、ユニブランで、メルロー・ブランの作付け比率は30%以下、他の3品種は10%以下。醸造では2つ以上の主要品種をブレンドし、補助品種の割合は最大30%と定められている。多くの場合がソーヴィニヨン・ブランとセミヨンをブレンドした、さわやかなタイプの白ワインである。

Entre-Deux-Mers Haut-Benauge アントル・ドゥー・メール・オー・ブノージュ(辛口白)
内陸の9カ村で造られる辛口白ワイン
に認められるA.O.C.。品種規定はアントル・ドゥー・メールと同じ。

Bordeaux Haut-Benauge ボルドー・オー・ブノージュ(辛口白、甘口白)
上記のアントル・ドゥー・メール・オー・ブノージュと同ーの生産地域ながら、辛口から甘ロの白まで認められるA.O.C.。ブドウ品種はセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、ミュスカデルの4品種のみ認められる。甘口白の残糖は60g / ℓまで。

Premières Cótesde Bordeaux プルミエール・コート・ド・ボルドー(甘口白)かつては赤ワインのA.O.C.でもあったが、2009年から赤はカディヤック・コート・ド・ボルドーを名乗ることになり、プルミエール・コート・ド・ボルドーは甘口白のA.O.C.としてのみ残されている。品種はセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、ミュスカデル。残糖34g / ℓ以上。

Cadillac カディヤック(甘ロ白)
Sainte-Croix-du-Mont サント・クロワ・デュ・モン(甘ロ白)
Loupiac ルーピアック(甘ロ白)
この3つはいずれもガロンヌ川右岸で造られる甘口白ワインのA.O.C.。対岸にはソーテルヌ、バルサックが位置する。樹上で乾燥したブドウを遅摘み、または貴腐化したブドウが用いられる。セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、ミュスカデルの4品種が認められているが、多くのワインがセミヨン主体。ルーピアックとサント・クロワ・デュモンは残糖45g / ℓ以上、カディヤックは51g / ℓ以上と定められている。

cótes de Bordeaux Saint-Macaire コート・ド・ボルドー・サンマケール(辛口白、甘ロ白)
ガロンヌ川右岸に位置し、サンマケール村など10カ村に認められている白ワインのA.O.C.で、辛口から甘口まで造られる。認められている品種はセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、ミュスカデル。

Graves de Vayres グラーヴ・ド・ヴェイル(赤、辛口白、甘口白)
アントル・ドゥー・メールの北西部、ドルドーニュ川左岸に位置するA.O.C.。赤、並びに辛口から甘口までの白が造られるが、今日では辛口が主流。その名のとおり小石の多い土壌である。赤はメルロ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、カルムネール、マルベック(コット)、プティ・ヴェルド。白はセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、ミュスカデルを主要品種とし、補助品種のメルロ・ブランの作付け比率は30%以下。白は主要品種を65%以上ブレンドする。

■Sauternes&Barsac ソーテルヌ&バルサック地区
グラーヴ地区の南部、ガロンヌ 川左岸に位置する貴腐ワインで有名な産地。ブドウが熟す秋になると、森の中を流れる小川シロンは水温が低くなる。それがガロンヌ 川に合流し、2つの河川の水温差により秋に霧が発生。この湿った環境からボトリティス・シネレアという菌がブドウ畑に広がり、午後になって霧が晴れると、ボトリティス・シネレアの生じたブドウは水分が蒸発して貴腐化する。こうして糖分、フレーバー、酸の凝縮した貴腐ブドウとなる。畑を何回にも分けて回って貴腐ブドウを収穫し、注意深く醸造したのが、極甘口の貴腐ワインである。1855年格付けでは赤ワインだけでなく、実は白ワインも格付けされ、この地区の甘ロワインが選ばれた。

■主要なA.O.C.ワイン
Sauternes ソーテルヌ(甘口白)
Barsac バルサック(甘口白)
極めて長期にわたる熟成が可能な世界最高峰の貴腐ワインに与えられるA.O.C.。
A.O.C.バルサックはバルサック村のみだが、A.O.C.ソーテルヌはソーテルヌ、バルサック、ポンム、ファルグ、プレニャックの5カ村に認められる。従って、バルサック村のシャトーで造られた貴腐ワインは、どちらのA.O.C.を名乗ることもできる。使用が認められている品種はセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニョン・グリ、ミュスカデル。果皮の薄い品種のほうが貴腐化しやすいため、多くはセミヨンが主体となる。必ず貴腐ブドウが生じ、残糖は45g / ℓ以上なければならない。

Cérons セロンス(甘口白)
バルサックの北に位置するセロンス、イラ、ポデンサックの3カ村に認められた、甘口白ワインのA.O.C.。品種はセミヨン、ソーヴィニョン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、ミュスカデル。樹上で乾燥した遅摘みのブドウ、または貴腐ブドウを用い、残糖45g / ℓ以上を必要とする。

■格付け
 1855年のパリ万国博覧会では白ワインも格付けされ、ソーテルヌ、バルサックのワインが対象とされた。一級のプルミエ・クリュに10、二級のドゥジェーム・クリュに11の21シャトーが選ばれたが、シャトー・ディケムは別格扱いされ、一級の中でも最高のシュペリュールとされた。その後の分割などにより、現在は27のシャトーが格付けされている。


[CrusClassésde Sauternes et Barsac en 1855ソーテルヌ及びバルサックの1855年格付けワイン]コミューン欄の()はA.O.C.出典:Consell des Grands CrusClassésen 1855(並び順は出典に準ずる)

Premier Cru Supérieur プルミエクリュ・シュペリュール(1)
Cháteaud 'Yquemシャトー・ディケム

Premiers Crus プルミエ・クリュ(11)
Cháteau La Tour Blanche シャトーラトゥールブランシュ
CháteauLafaurie-Peyragueyシャトー・ラフォリベラゲ
CháteauClos-Haut-Peyragueyシャトークロ・オーペラゲ
Cháteaude Rayne Vigneauシャトー・ド・レーヌヴィニョー
CháteauSuduirautシャトー・スデュイロー
CháteauCoutetシャトー・クーテ
CháteauClimensシャトー・クリマンス
CháteauGuiraudシャトーギロー
CháteauRieussecシャトーリューセック
CháteauRabaud-Promisシャトーラボープロミ
CháteauSigalas Rabaudシャトーシガララボー

DeuxièmesCrusドゥジエム・クリュ(15)
Cháteaude Myratシャトー・ドミラ
CháteauDoisyDaèneシャトードワジダエーヌ
CháteauDoisy-Dubrocaシャトードワジ・デュブロカ
CháteauDoisy-Vvédrinesシャトー・ドワジ・ヴェドリーヌ
Cháteaud' Archeシャトー・ダルシュ
CháteauFilhotシャトー・フィロ
CháteauBroustetシャトーブルーステ
CháteauNairacシャトーネラック
CháteauCaillouシャトーカイユ
CháteauSuauシャトースオ
Cháteaude Malleシャトー・ド・マル
CháteauRomer du Hayotシャトーロメールデューアヨ
CháteauRomerシャトー・ロメール
CháteauLamotheシャトー・ラモット
CháteauLamothe-Guignardシャトーラモットギニャール


参考資料 日本ソムリエ協会教本2021
隔月刊誌Sommelier  




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