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【Wine ワイン】NV Chandon Brut Rose Methode TraditionalChandon

繊細な泡立ちと品の良い果実味と複雑性。

楽天
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■Producer (生産者)
Chandon

■Country / Region (生産国 / 地域)
Yara Valley / Victoria / Australia

■Variety (葡萄品種)
65% Pinot Noir 
30% Chardonnay 
05% Meunier

■Pairing (ペアリング) 
牡蠣
海老の天ぷら
エンパナーダ

■Australia

■プロフィール
オーストラリアの国土の広さ(759万㎢)は、ヨーロッパ全体のおおよそ7割に匹敵する。ブドウ栽培地域は、国の南半分にあたる南緯31度から43度の間に帯状に分布し、東端のニュー・サウス・ウェールズ州から西端の西オーストラリア州まで3,000km超に渡って、ワイン産地が点在している。ブドウ栽培面積の合計は14万6,128ha(2018年)で、ボルドー(112,200ha)より多く、カリフォルニア(194,136ha)より少ない。各産地は様々な土壌特性をもち、異なる気候区分に分類される。得意とするブドウ品種も異なり、同一の品種であっても味わいには違いがみられる。代表品種シラーズも、温暖地域から冷涼地域、粘土質から花崗岩質まで、さらにヴィオニエとの混醸など、様々なスタイルがみられる。広い国土に点在するワイン産地故に、「多様性」豊かなワインとなっている。それらの産地には、最も大きな「州(State)」「地域(Zone)」から「地区(Region)」「小地区(Sub-region)」まで、「地理的呼称(GI = Geographical Indication)」地域が、114カ所定められている(2019年現在)。ワイン生産量は12,900,000hℓ(2018年)となっている。人口(2,400万人)規模から勘案して国内消費量には自ずと限界があり、輸出が全ワイン販売量の6割を占めている。ただ、近年の気候変動や地球温暖化による旱魃の頻発、極端な気象現象を踏まえ、ワイン生産業界は将来の栽培面積が増えることを予測していない。一番の障害となっているのは、使用可能な「水」の恵みが限られている点である。コスト上昇が顕著な灌漑用水を使うブドウ栽培は、安価なワイン生産を困難にしている。チリやスペインなどとの国際競争で、価格競争力を失いつつある低価格ワイン用の畑は採算が合わなくなり、再編され、栽培面積は全体に横ばいから縮小の状況にある。一方、灌漑用水に過度に頼ることのない中高級ワインの産地は、大きな水の問題は抱えていない。2018年のワイナリー数は、過去最高を記録した2014年よりも105社減少し2,468社。1990年代後半は800社程度だったことを勘案すると、この20年弱で3倍に増えた。The National Vintage Surveyのヴィンテージ2019レポートによると、ブドウ破砕量5,000t以上のワイン生産者は39社で、全生産量の89%を占める。一方、ブドウ破砕量500t未満の小規模生産者数は全体の8割を占めるが、これらのワイナリーの生産量を合計しても全生産量の3%未満である。このことは90年代末から2000年代初めにかけて、大手ワイナリーの再編が進んだ一方で、家族経営の中小ワイナリーが注目を浴びるようになったこと、「個人」による、個性的な魅力を兼ね備えたワイン造りが隆盛していることを表している。大手ワイナリーの醸造技術者が独立したり、ブドウ農家の子息がワイン造りを始めたり、都市で資金を蓄えたビジネスマンが自ら醸造家としてワイナリーを興すなど、「ライフスタイル」の選択肢として、ブドウ栽培ワイン造りを選び取る、新しい現象が現在のオーストラリアワインを物語っている。オーストラリアワインは、日本を含めた世界の輸出市場で品質の安定した「量販ブランドワイン」や「ファインワイン」の生産国として、一定のイメージを築きあげてきた。カ強い果実の豊かなバロッサ・ヴァレーのシラーズから、寒冷なタスマニアの瓶内二次発酵スパークリング、若い造り手の間で起きている「ナチュラル・ワイン・ムーヴメント」までを、「オーストラリア」という大きな括りのなかで、どのように新しいメッセージを発信したらよいのか腐心している。「多様な産地」「大多数の中小生産者」「先進的な研究技術開発力」「多彩で冒険的なワイン造り」は、認知度に濃淡はあるものの徐々に輸出市場で理解が進んでいる。歴史18世紀後半〜第二次世界大戦までオーストラリアに最初にワイン用ブドウ樹が持ち込まれたのは、1788年。ニュー・サウス・ウェールズ州の初代総督だった英国海軍Arthur Phillip アーサー・フィリップ大佐が、南アフリカの喜望峰とブラジルからシドニーにもたらしたものだった。これが今日までの230年超にわたるワイン造りの最初の一歩となった。その後、ブドウ栽培は内陸部へ移動し、1825年にはJames Busby ジュームズ・バズビーによってニューサウス・ウェールズ州ハンター・ヴァレーに本格的なブドウ園が開設される。その後、1840年ごろまでにタスマニア州、ヴィクトリア州、西オーストラリア州、南オーストラリア州へと商業的なブドウ栽培ワイン生産が広まっていった。「オーストラリアのワイン用ブドウ栽培の父」と形容され、重要な遺産を残したのは、英国移民で当時ブドウ栽培研究指導にあたった前述のジェームズ・バズビーである。1831年に、4ヵ月かけて欧州をめぐりブドウ樹・枝合わせ680本を入手し、これを「王立シドニー植物園」で栽培した。フランス・モンペリエの植物園で入手したものが、主体だとされている。後にバズビーがもたらしたブドウ樹が他の産地に拡散し、ブドウ栽培の礎を築くことになる。「バズビー・クローン」の一例として、豪州の多くのピノ・ノワール栽培で用いられている「MV6」があげられる。ブルゴーニュ「クロ・ド・ヴージョ」の畑のものとされ、果実のアロマは穏やかであるものの、優れた骨格をもつクローンとして国内で特徴づけられている。1840年代には、バロッサ・ヴァレーに現ドイツ周辺(シレジア地域)から宗教的迫害を逃れてきた人々が入植し、ワイン造りを始める。比較的冷涼な隣のクレア・ヴァレーやイーデン・ヴァレーにリースリングが植えられ、屈指のリースリング産地となったのは、そのためである。バロッサやクレアの土地ワイナリーにドイツ名が多いのも、ドイツ系移民の影響である。スワン・ヴァレーには旧ユーゴスラビア周辺からの移民、リヴァーランドやグリフィス周辺には第二次大戦後のイタリア移民など、当然ながらワイン造りの基礎はヨーロッパの移民たちが築いたものだった。1877年、ヴィクトリア州ジロング近郊でフィロキセラが発見される。この頃から、ブドウ栽培ワイン醸造は、南オーストラリア州に傾斜していく。しかしながら興味深いのは、当時植えられたフィロキセラ禍以前のブドウ古樹がヴィクトリア州、南オーストラリア州、ニュー・サウスウェールズ州にも数多く現存し、いまだにそれらのブドウからワインが造られていることである。ヴィクトリア州ゴールバーン・ヴァレーにある「タビルク」の1860年植栽のシラーズは、現在もワインを生み出しており、あまりに有名である。砂地であるため、フィロキセラが生息できなかったと考えられている。近年記録が更新され、バロッサ・ヴァレーの「Langmail Winery ラングメール・ワイナリー」が所有する1843年植栽のシラーズが、オーストラリア最古のワイン用ブドウだとされている。なお南オーストラリア州のワイン産地は、いまだにフィロキセラの被害を受けた経験がなく、他州からの来訪者が畑に入る場合は注意が必要である。1880年代以降、ワイン造りのトレンドは、ドライなテーブルワインから酒精強化ワインへと比重を変えていく。ポルトガルのポートワイン産地がフィロキセラ禍で大きなダメージを受け、その重要な代替品として英国への輸出が徐々に拡大した。1929年以降は、英国の優遇策もあり、輸出に拍車がかかり、その大部分を甘い酒精強化ワインが占めていった。同時に国内市場も、酒精強化ワインで占められるようになる。1930年代にはワイン生産の7制以上が南オーストラリア州に集中し、拠点化していった。戦後〜第2次世界大戦を経て、1950年代以降、消費トレンドは長かった酒精強化ワインの時代から、再びテーブルワインへと変化していく。ドイツの低温発酵技術を導入し、リースリングを使った白ワインが発売され、人気を博した。ー方赤ワイン。1940年代後半に、ペンフォールズ社の醸造技術者Max Schubert マックス・シューバートが、シェリー造りの勉強のために欧州に渡る。しかしボルドーの赤ワイン造りに影響を受けた同氏は帰国後、テーブルワインに大きな変化をもたらす。1951年に「Grange Hermitage BINI グランジ・ハーミテージ」(当時の表記のまま)を試験生産する。同氏は、オーストラリアならではの赤ワイン造りを発想して、①複数の異なる畑のシラーズを100%用い、②アメリカンオークを使い、③樽内で発酵を終了させ、熟成させた。スタイルの変遷はあるものの、①〜③のブロセスにはオーストラリアの赤ワイン造りのエッセンスが詰まっている。しかし50年代前半当時、これを披露すると酷評された。1960年代まで同氏はひっそりと造りつづけざるをえなかった。60年代、たまたまペンフォールズに滞在していたフランス人が、セラーにあったこのワインを試飲し「フランスの優れたワインに違いない」と、当時の経営陣の前で絶賛したことが発端で、以後賞を取るなどして、マックス・シューバートによるペンフォールズでのドライ・テーブルワインの生産が本格化する。このことは、60年代以降若い世代がワイン飲用に入ってきたことで、オーストラリア人の階好が変化したことも反映している。市場は徐々に変わる。量を支えるワインは「Flagon フラゴン」と呼ばれる2ℓ入りガラス瓶のジェネリック名ワイン「ホワイト・バーガンディ」「モーゼル」「クラレット」などが主流となっていった。1960年の1人当たりワイン消費量は5.1ℓ、70年には8.2ℓに伸長した。ニ方向のワイン造りの確立ペンフォールズのように複数の地域や区画のブドウをアサンブラージュして、ハウススタイルを造るワイン生産者が、今日までワイン生産の主役を務め、隆盛してきた。「マルチ・リージョナル・ブレンド」「マルチ・ディストリクト・ブレンド」と呼ばれ、量販品から「グランジ」のような高級ワインまで、地域や区画の異なる畑・品種を用い、アサンブラージュするワイン造りの手法である。その利点は、量販品についてはシャンパーニュ造りに通じる。複数のブドウ産地を用いることで、収穫年による品質のばらつきを少なくし、消費者にいつも同じ味わい、変わらぬハウススタイルを提供することが重要な目的となっている。高級品については、各収穫年の最高の地域・区画のブドウを確保することで、高いレベルの品質維持を目的としている。従っていずれの場合でも、収穫年による供給地やアサンブラージュ比率の違いがみられる。一方で単一畑最高峰のシラーズとして、「グランジ」と対極に位置するHenschke ヘンチキ社の「Hill of Grace ヒル・オブ・グレース」は、豪州の代表品種シラーズを知る上で、好対照を成している。1958年からイーデン・ヴァレーの単ー畑・高樹齢のブドウを用いて生産されているもので、ヘンチキ家5代目スティーヴン・ヘンチキ氏がその生産を引き継いでいる。「アサンブラージュ(組み立て構築)主義」と「単一畑(ひとつのテロワール)主義」の対照は、豪州ワインを知る上で重要な視点である。1970年代〜カスク70年代に入ると「Cask」(1ガロン= 4.5ℓ入り)と呼ばれるバッグイン・ボックス(BIB)が登場し、同時にジェネリック名「シャブリ」「モーゼル」など白ワインに、より消費がシフトしていった。しかし輸出産業としては育っておらず、良質のテーブルワインは国内で消費されていた。70年代までの赤ワイン造りは、当時のボルドーのスタイルを手本とし、ピーマン臭の残る青臭いものこそが、カベルネ・ソーヴィニヨンを初めとした赤ワインの美点とされていた。当時品評会の賞を獲得しているワインには、ピーマン臭が残っている。アルコール分は11〜12%程度と低かった。しかしこれらは、消費者から古くさいスタイルとして、人気を失っていく。これにより生産過剰が露呈し、政府は80年代抜根政策を実施している。代わりに80年代に入ると、冷涼な産地のピノ・ノワールとシャルドネが人気を集め始めた。タスマニア、モーニントン・ペニンシュラ、アデレード・ヒルズなどのワインが、最初に注目を得るのは、この頃である。90年代に入ると、ワイン産業は大きなうねりとともに「開花」していく。ワインは、世界の潮流と市場拡大に合わせて、より果実の充実成熟を目指すようになる。また94年にEUとの取り決めで、「ジェネリック名表示」を禁止したことで、「ブドウ品種表示」のワインが主流になっていく。90年代末には「シラーズ」が質・量ともに同国を代表する品種として、国内外で捉えられるようになる。ワイン・スペクテーター誌や批評家ロバート・パーカー氏が評価したおかげで、米国輪出の拡大はもちろん、国内でも人気が高まる。これは当時、米国カリフォルニア州にとってのジンファンデル、アルゼンチンにとってのマルベックのような、地域を特微づける「独自品種」を見出そうとする世界的潮流に合致していた。さらに米国のワインジャーナリズムの影響を強く受け、完熟、超熱したブドウへの傾倒がエスカレートしていく。これに伴いアルコール分も14%を超えるものが普通に見られるようになっていく。また、ワイン産業の構造を見る上でも、90年代は重要な期間だった。当時最大手で、(ペンフォールズ)(ウィンズ・クナワラ)など多数の有力ワイナリーを擁する「サウス・コープ」社、豪州のビールメーカー「フォスターズ」のワイン子会社であり、(ウルフ・ブラス)(ミルダラ)などをもつ「ミルダラ・ブラス」社、「BRLハーディ」社、仏ペルノ・リカールが所有し(ジェイコブス・クリーク)の英国輸出を成功させていた「オーランド・ウィンダム」社、それに米国への輪出で成功していた「ローズマウント」社の、いわゆる「ビッグ5」がワイン業界を牽引し、輸出拡大を通して健康的な競争を調歌していた。この後に続く「業界再編」を迎える2000年までの十数年は、豪州ワイン業界の「青春」といえる時代だった。


■2000〜2005年再編の時代
やがて世界的なワイナリーの再編の波が、オーストラリアにも押し寄せてくる。世界の他のワイナリーや世界的酒類企業がそうだったように、2000年以降、買収や合併によるワイナリーの巨大化こそが、事業発展の重要な鍵であるかのように、豪州の大手ワイン生産者も再編へ突き進む。まず、2000年、ミルダラ・ブラスがベリンジャー(米国カリフォルニア州)を買収し、「ベリンジャー・ブラス」となる。2001年には、サウスコープがローズマウントを買収する。しかし実態は、買収後にサウスコープ株を大量に保有したローズマウント側経営陣が、サウスコープを実質的に経営する。買収後の経営はうまくいかず、英国市場ではその後、「1本買うと、もう1本無料(Buy one、get one free)」といった安売りがスーパーで横行するようになる。2003年、コンステレーション・ブランズ(旧カナンデグア)がBRLハーディを買収する。これによりコンステレーションは、E&Jガロ社(米国)を抜き、世界最大のワイン会社となった。しかしその後2011年、事業再構築の目的で、買収したオーストラリアのワイン事業の株式80%を、シドニーの投資ファンドに売却した。そのユニットの現社名は「Accolade Wines アコレード・ワインズ」となっている。2005年、フォスターズは経営不振に陥っていたサウスコープを買収し、「ベリンジャー・ブラス」にすべてのブランドを収め、「フォスターズ・ワイン・エステーツ」に改名改組した。2010年に社名を「Treasury Wine Estates トレジャリー・ワイン・エステーツ」と改名、ビール事業から切り離し、個別のワイン会社として存在している。この再編劇でワイン産業が疲弊している中、新たな「極」として登場してきたのが、(イエローテイル)生産元の家族経営ワイナリー「カセラ・ワインズ」だった。2001年にく(イエロテイル)を米国で発売後、わずか5年で800万ケースを販売した。2014年には、バロッサ・ヴァレーの有名ブランド「Peter Lehman」を、2003年に買収したカリフォルニアHess Collectionを所有するスイス人オーナーから買収。バロッサの伝統あるブランドの所有権をオーストラリアに取り戻したと話題になった。また2016年、ラザグレンで150年の歴史ある「Morris Wines」を所有していたぺルノ・リカールがブランドの売却を発表した際にも買収に名乗りをあげ、再び伝統あるブランドを救済している。大手ワイナリー間の再編が進行したことで、かえって中小の家族経営ワイナリーが市場で存在感を示すようになった。



■スクリュー栓拡大の「引き金」
オーストラリア発の生産技術の刷新で最も重要なのは、クレア・ヴァレーのワイン生産者13社が2000年ヴィンテージから、白ワインにスクリュー栓(ステルヴァン)を採用することを一致して決めたことだ。この中には、クレア・ヴァレーを代表するリースリング生産者「Grosset グロセット」が含まれる。この宣言を皮切りに、その後オーストラリア、ニュージーランド、チリ、フランス(シャブリ)、ドイツなどで急速にステルヴァンが普及していく。世界的なワイン造りの文脈において、アロマを大切にする白ワイン造りで、コルクからスクリューへと「栓」が変更されていく重要な分岐点となった。



■多彩なワイン造りの開花と「ナチュラル・ワイン・ムーヴメント」
現在、ブドウ破砕量500t未満の中小ワイナリーが2,000社超を占める。大部分は、設立間もない若いワイナリーである。そのワイン造りは多彩で、シラーズを例にあげても個性的なスタイルがよくみられる。「力強く、熟したプラム、チョコレート、胡椒、アメリカンオークの甘い香り」を伝統的なスタイルとするなら、「アロマ重視の冷涼地栽培」「ヴィオニエとの混醸」「全房発酵」「自然発酵」「より長い発酵マセレーション」「高いフレンチオーク比率」「大樽による熟成」など、様々な表現がされるようになっている。これら現代的シラーズは、ローヌ地方の伝統技術を多数導入しているところが、逆説的で興味深い。その延長線上で、「ナチュラル・ワイン」の若い造り手が多数登場している。自然発酵で、亜硫酸(二酸化イオウ)をごく少量あるいは、使わず、瓶詰めされたもので、若い消費者に人気を得るようになっている。ルーシー・マルゴーやヤウマなどバスケット・レンジのブームを牽引するワインは日本へも盛んに輸出されている。品質は玉石混交で、既存の「醸造学」重視の醸造技術者からは、批判を浴びているところもあるが、豪州のワイン造りワイン文化に新しい側面を与えている。



■土壌及び産地のあり方
オーストラリアは世界7大陸の中で最も古い大陸で、様々な地質年代の土壌が各産地にみられる。鉄鉱石などの鉱山資源にも恵まれている。土壌の種類は豊富で、土壌が産地を象徴する場合がしばしばある。クナワラやライムストーン・コーストのテラロッサ土壌(鉄分を含んだ赤い表土と、白い石灰岩質土壌から成る)はカベルネ・ソーヴィニヨンに好適とされている。マセドン・レーンジズの岩山に分布する花尚岩質の土壌、マクラーレン・ヴェイルの砂質ローム土壌、モーニントン・ペニンシュラの粘土質と火山性土壌、タスマニアで特徴的な水はけの良い「ジュラシック・ドレライト(ジュラ紀の粗粒玄武岩)」など枚挙に暇がない。ワイン生産者の分布で特徴的なのは、ワイナリー間の距離である。欧州のワイン産地のように、畑やワイナリーが「密集」している地域は、限られる。「密集」産地の典型は、クナワラの中心域(東西2km・南北16km)、ヤラ・ヴァレー、マーガレット・リヴァー、バロッサ・ヴァレー、クレア・ヴァレー、ビーチワースなどがあげられる。しかし多くのワイン産地では、同じGIであっても隣のワイナリーとの距離が10km以上離れているようなケースが頻繁にみられる。森林・牧羊牧畜・穀物畑の合間にブドウ畑が突如として現れる、というのが豪州ワイン産地の風景である。有力生産者の周囲であっても、他のワイナリーが見あたらないのは普通である。この要因は、
1.灌漑用水の使用が制限されている場合がある。2.同じ土地に、牧羊・牧畜や穀物栽培をセットし、収入のリスク分散を図っている(欧州でいう三圃式農業にー部類似)。
3.土地が広い分、わざわざ他者との距離を近づける必要がない。
などがあげられる。隔絶された土地から有力なワインが登場する点が、豪州ワインの中小生産者のあり方を特徴づけている。なお、ブドウ栽培ワイン醸造の教育は、アデレード大学、チャールズ・ステュート大学の二校が双壁をなし、多くの国際的な醸造家栽培家を輩出している。またワインの品質向上には、各州で類繁に催される品評会「ショー・システム」が大きく貢献している。「ロイヤル・メルボルン・ワインショー」において仕込みから1年後の赤ワインで競う、「Jimmy Watson Trophy ジミー・ワトソン・トロフィー」は、醸造家にとって最も権威ある賞のひとつである。



■食文化とワインサービス
1997年、香港が英国から中国に返還された。そのタイミングで多くの香港在住者がオーストラリアへと移民した。多数の中華料理人も含まれる。歴史の項でもみたとおり、オーストラリアは140を超える国々から移民を受け入れ、様々な文化を取り入れて発展し続けている。中でも食文化は、現在大きな花を咲かせているところで、世界中の料理が楽しめるだけでなく、それらが融合した料理文化を育んでいる。大きな市場を町中にもつメルボルンは「グルメの都」と形容される。この国際色豊かな食文化を象徴するのは、和久田哲也氏によるシドニーの有名レストラン「Tetsuya's テツヤ」である。オーストラリアの食材を使い、和食の繊細さと様々な国の料理を連想させる多彩な料理を、オーストラリアワインと1組にして、何皿も提供する「デギュステーション・セットメニュー」(ムニュ・デギュスタシオン)のスタイルが特徴である。世界中の料理人に同氏の調理やサービス方法は、大きな影響を与えた。メルボルンでは、「Vue de Monde ヴュー・ド・モンド」や「Attica アッティカ」といった地元の食材をふんだんに使った洗練された料理が楽しめるファインダイニングがグルメの都をリードしている。イギリスの有名レストラン「The Fat Duck ファット・ダック」を率いるレストラングループは、2015年10月メルボルンに「Dinner by Heston Brumenthal ディナー・バイ・ヘストン・ブルメンタール」の2号店をオープン。2017年には「世界のベストレストラン50」授賞式がメルボルンで開催された。
BYO(Bring Your Own =レストランへのワインの持ち込み)は、アルコール販売の免許をもたない飲食店がサービスの一環として始めたもので、広く国中に広がっているユニークなワイン文化となっている。しかし現在では、ワインの品揃えに拘ったレストランやワインバーが増えており、そのような業態ではBYOは一般的ではない。
豪州の成人一人当たりのワイン消費量は、28.36ℓ(2017年)。



■主なブドウ品種
栽培されているブドウは、すべてヨーロッパから移植されたもので、オーストラリア固有品種や現地で開発された交配品種はほとんど存在しない。



[ワイン用ブドウ栽培面積(2015年)とブドウ生産量(2019年)と前年(2018年)比」
(出典:National Vintage Report 2019)

[白ブドウ]
栽培面積(ha)(2015年)
ブドウ生産量(t)(2019年)
ブドウ生産量前年比

Chardonnay シャルドネ
21,442 
356,250 
-12%

Sauvignon Blanc ソーヴィニヨン・ブラン
6,097 
90,474 
-1%

Pinot Gris ピノ・グリ / Grigio グリージョ
3,731 
70,474 
-7%

Muscat Gordo Blanco マスカット・ゴルド・ブランコ
2,210 
59,931 
4%

Semillon セミヨン
4,569 
53,921
-10%

Colombard コロンバール
1,791 
50,711 
-9%

Riesling リースリング
3,157 
23,520
-7%

Muscat Blanc à Petits Grains ミュスカ・ブラン・ア・プティ・グラン
853 
20,400 
-7%

Tlaminer トラミナー
840 
11,884 
-14%

Prosecco プロセッコ
183 
9,936 
42%

その他の白ブドウ
39,371 
-3%

合計
48,486 
786,871 
-8%

[黒ブドウ]
栽培面積(ha)(2015年)
ブドウ生産量(t)(2019年)
ブドウ生産量前年比

Shiraz シラーズ
39,893 
418,364 
-2%

Cabernet Sauvignon カベルネ・ソーヴィニョン
24,682 
253,581 
3%

Merlot メルロ
8,477 
118,117 
13%

Pinot Noir ピノ・ワール
4,948 
47,569 
-10%

Petit Verdot プティ・ヴェルド
1,120 
22,119 
1%

Ruby Cabernet ルビー・カベルネ
854 
13,402 
8%

Grenache グルナッシュ
1,507 
11,872 
-15%

Durif デュリフ
625 
11,845 
29%

Malbec マルベック
562 
6,098 
46%

Tempranillo テンプラニーリョ
736 
6,016 
13%

その他の黒ブドウ
32,600 
15%

合計
86,647 
941,583 
2%

白ブドウ+黒ブドウ合計
135,133 
1,728,454 
-3%



■ワイン法と品質分類
1929年に、オーストラリアワインの品質を高め、国際市場における評価を向上させるため、オーストラリア連邦政府(農水林業省)管轄の下に、ワイン・オーストラリア公社(WAC、旧オーストラリア・ワイン・ブランデー公社)が設立され、オーストラリアワインに関する種々の規定を定めている。
オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)の食品基準4.5.1(ワイン製造要件)により、アルコール4.5度未満はワインと認められない。また補糖は認められていない。酸化防止剤、保存料の表示が義務付けられ、その番号がラベルに記載される。
220-亜硫酸(ニ酸化硫黄)
200-ソルビン酸
300-アスコルビン酸(ビタミンC)
なお、2012年1月にオーストラリアワインの輸出許可制度が変更され、従来オーストラリアから輪出されるすべてのワインに課せられてきた輸出前検査が廃止された。しかしながら、100ℓ以上の出荷については従来どおり輪出許可が必要であり、また原料の受渡し、種類、数量、ヴィンテージ、品種、原産地、供給者、顧客などの情報についてより厳格な監査体制が導入されている。



■地理的呼称(Geographical Indications:以下GI)について
GI制度は、1980年代後半以降の欧州連合(EC)向け輸出の増加を背景に、ECとのワイン貿易協定(Agreements with the European Community on Trade in Wine第6条)ならびに知的財産法貿易関連事項に関する協定(TRIPS:Agreement on Trade- Related Aspects of Intellectual Property Rights第23条)を遵守するため、1980年のワインオーストラリア公社法(Wine Australia Corporation Act 1980)第VIB項が改正されて、1993年に導入された。その主な目的は、国際法に基づき、特定のGI内で収穫された原料ブドウで造られたワインの表示のみに当該GI名が使用されるよう、地名の利用を保護し、一方で、表示の信愚性を確保し、消費者の権利を保護することにある。また、法律では「問題になっている地理的呼称(GI)以外で製造されたワインについて、関係者による当該GIの利用を阻止するための法的手段を提供する」と定められている。この制度により、オーストラリア産地の地域(Zone)、地区(Region)、ならびに小地区(Sub-region)に関する公式な地名と解説が、産地の地図と解説文(地図のグリッド表示や座標、区域の境界線を示す道路や自然の境界標識)により提供されている。GIを決定する権限は、地理的呼称委員会(Geographical Indications Committee = GIC)がもっている。原料ブドウ栽培者、ワイン製造者、栽培者・製造者機関などの申請者からの出願を受けて、GICは公認の原料ブドウ栽培者機関やワイン製造者機関及びその他必要な機関との協議を経て、GIを決定する。ワイン・オーストラリア公社の規定第25項によると、GIの決定基準の概要には、以下の事項が含まれる。
*歴史(当該区域の一般史、ブドウ栽培歴、ワイン製造歴)
*地質
*気象条件
*収穫時期
*排水状況
*水源
*標高
*当該地区と地名の伝統的な利用
GI制度は、ヨーロッパの原産地呼称制度に類似しているが、ブドウ栽培とワイン製造方法については、ヨーロッパのように特定の原産地呼称に関連した厳格な規定制約がない分、栽培・醸造面での自由度が高いことが特徴である。オーストラリアには、ヴァラエタル・ワインとオーストラリア独自のヴァラエタル・ブレンドワインがある。オーストラリア産ワインのラベル表示については、下記の通り定められている。

(地理的呼称:GIの表示)
特定のGIで産出されたワインが85%以上含まれている場合、これを表示できる。3つ以下のGIで産出されたワインが含まれ、その合計が95%以上である場合、これらのGIを多い順に表示できる。

(ヴィンテージの表示)
特定のヴィンテージのワインが85%以上含まれている場合、これを表示できる。

(ブドウ品種の表示)
複数のブドウ品種が使用されている場合、原則的には全ての品種を多い順に記載することとなっているが、下記にあてはまる場合は、これが優先される。
・特定のブドウ品種が85%以上含まれる場合は、その品種だけを表示することが可能である。
・20%以上含まれるブドウ品種が3種類以下で、かつその合計が85%以上となる場合、この品種全てを表示する。
・5種類以下のブドウ品種を使用し、各品種が5%以上含まれている場合は、この品種全てを表示する。

また、ジェネリック・ワインは、これまでライン、モーゼル、クラレット、バーガンディなどヨーロッパの特定産地のワイン名称をつけたものが主に国内向け(輸出用にはDry White、Dry Redなどと表示)に販売されてきたが、2008年12月のEUとの合意により、2010年からこれらの名称は使用が禁止されている。同時にオーストラリアのワイン産地名もEU内で保護されている。なお、これまでオーストラリアワイン全体のマーケティング活動や輸出振興の役割を果たしてきた行政機関「ワイン・オーストラリア公社」(WAC = Wine Australia Corporation)と、ワインの研究開発行政機関「オーストラリア・ブドウ・ワイン研究開発公社」(GWRDC = Grape and Wine Research and Development Corporation)が2014年7月1日をもって合併した。新組織名は「オーストラリア・ブドウ・ワイン管理局」(AGWA = Australian Grape and Wine Authority)で、本部は旧組織と同じアデレードのナショナル・ワイン・センター(National Wine Centre of Australia)にある。



■ワインの産地と特徴
主なブドウ栽培地域は2018年7月現在、114のGIがあり、マレー・ダーリングとスワン・ヒル両GIはニュー・サウス・ウエールズ州とヴィクトリア州にまたがっている。2018年国内ブドウ栽培面積は、南オーストラリア州(51%)、ニュー・サウス・ウェールズ州(23%)、ヴィクトリア州(16%)、西オーストラリア州(8%)、タスマニア州、クィーンズランド州の順である。



③ヴィクトリア州Victoria(VIC)
中小規模生産者中心のワイン産地で、規模の大きなワイン生産者が牽引する南オーストラリア州のワイン産業とは、性格が異なる。また、内陸部から沿岸部まで、様々な気候土壌の産地が点在しており、ワイン造りは個性的で多様だ。ヤラ・ヴァレー以南のワイン産地は、主にピノ・ノワールとシャルドネに注力カしている冷涼なワイン産地が多い。ヤラ・ヴァレーよりも北に位置する産地には、シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨンを中心に、ピノ・ノワール、シャルドネが加わる。いずれにせよ、「冷涼産地」の美点を追求したワイン造りがどこでもより際立ってみられる。それはシラーズのスタイルにもよく現れる。1860年代、ヴィクトリア州は「John Bull's Vineyards(英国民のブドウ畑)」として知られていた。それは同州のワイン産出量、および英国向け輸出量が国内最多であったためである。他の州のブドウ栽培は、主に沿岸地域や沿岸に近い産地に限られているが、州全体が栽培に適している。過去30年間で同州のワイン産業は見事な発展を遂げた。現在では16地区に400を超えるワイナリーがある。


1.Yarra Valley ヤラ・ヴァレー
白:シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリ、リースリングなど
黒:ピノ・ノワール、シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨン
メルボルンから車で1時間程度(約60km)の距離で、日帰りでワインツーリズムが楽しめる、ヴィクトリア州を代表する重要産地。多くのワイナリーがセラードアとレストランを併設している。拠点となる町はヒールズヴィルで、複数のワイナリーがセラードアを構えている。ヤラ・ヴァレーは1838年に、ヴィクトリア州で最初にワイン用ブドウが植えられた地域。1860年代から70年代にかけてブドウ栽培が広がったが、その後南オーストラリア州の酒精強化ワインの需要が高まったことで、テーブルワイン生産に行き詰まり、1921年に産地はいったん途絶えた。1960年代になって、植物学者Bailey Carrodus ベイリー・カラドス博士によるYarra Yering ヤラ・イエリング(1969年設立)、地元の医師John Middlton ジョン・ミッドルトン博士によるMount Mary マウント・メアリー(1971年)、このほかWantirna ワンティルナ(1963年)、Yeringberg イエリングバーグ(1969年)などが設立されて、ワインの品質の高さが注目され始めると、産地形成が加速していった。批評家として高名なジェームス・ハリデー氏は、ヤラ・イエリングの存在に多大な影響を受け、同じWarramate Hills ワラマテ・ヒルズの麓に1985年、コールドストリーム・ヒルズを設立した(1996年にサウスコープに売却、現在はトレジャリーワイン・エステーツ傘下)。マウント・メアリーは、マロラクティック発酵しない長期熟成型のシャルドネで、ヤラ・ヴァレーのアイコン的存在。
また、モエ・エ・シャンドン社は「シャンドン・オーストラリア」を1986年に設立。瓶内ニ次発酵スパークリングワインの生産拠点として、発展している。ヤラ・ヴァレーの現在の栽培面積は2,150haで、赤ワイン用品種が3分の2を占める。主な品種は、シャルドネ、ピノ・ノワール、シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨン。ワイナリーは約140社が存在する。やや大陸性の気候で、昼夜の寒暖差が大きい。近年は遅霜の被害が頻発するようになっており、ブドウ畑は霜害対策のための設備投資が満んでいる。メルボルンやシドニーの若いソムリエに応える形で、最近はイタリア、スペイン品種やガメイなど新しいスタイルのワインが人気を得ている。ブドウ畑は、大きく3つのエリアに分けられる。ヤラ・グレン、イエリング、コールドストリームからグルーイアにかけて、最初に発展した、標高が比較的低く平坦な地域。「ヴァレー・フロア」と通称される。
マウント・メアリー、イエリング・ステーション、オークリッジ、ヤラ・イエリング、コールドストリーム・ヒルズ、ドメーヌ・シャンドンなど多くのワイナリーが集中している。比較的温暖で、ボルドー系黒ブドウ品種やシラーズにとって極めて重要な地域。シャルドネ、ピノ・ノワールにとっても重要。標高は100〜250 m程度と低い。年間降雨量は700〜1,200mm程度(成育期は500mm程度)。1月の平均気温は18.7℃。土壌はグレーや茶褐色の植壌土が分布。ワインは果実感豊かで、比較的柔らかく、ふくよかなものがみられる。
セヴィルからウーリー・ヤロック、ヤラ・ジャンクション、ホッドルス・クリーク、グラディースデールにかけての丘陵森林地帯は、「Upper Yarra Valley アッパー・ヤラ・ヴァレー」と通称される。標高は250〜360mほどで、比較的涼しいためにブドウの成熟はヴァレー・フロアよりも2〜3週間程度遅い。年間雨量は1,000〜1,600mmと多雨。非常に複雑な地質のエリアで、古生代(シルル紀・デボン紀)の海だった頃のシルトストーン、サンドストーン、頁岩が広く分布する。ワイナリーは点在する程度だが、ピノ・ノワールとシャルドネの有力な畑が多数みられる。酒質は堅牢、酸が高く、塩味を感じさせるものがみられる。ヴァレー・フロアの果実のリッチさとは、好対照をみせる。この地域からHoddles Creek ホドルス・クリークやMac Forbes マック・フォーブスに代表される若手の有力生産者が複数登場している。また、北側のディクソン・クリーク周辺は標高が200〜300mと高まる。花崗岩みられ、シラーズ、シャルドネのほかに近年、イタリア系品種が植えられている。
ヒールズヴィルには、オーストラリアを代表するクラフト・ジン「Four Pillars」の蒸溜所もあり、多くの観光客が訪れている。


2.Momington Peninsula モーニントン・ペニンシュラ
白:シャルドネ、ピノ・グリ
黒:ピノ・ノワール、シラーズ
モーニントン・ペニンシュラは、わずか30社程度の小規模生産者で構成されている冷涼産地にもかかわらず、この10年程度で、タスマニアと並びピノ・ノワールの重要な生産地として存在感が高まっている。その要因は、2003年から始めた隔年開催の国際イベント「Mornington Peninsula International Pinot Noir Celebration モーニントン・ペニンシュラ・インターナショナル・ピノ・ノワール・セレブレーション」や、モーニントン・ペニンシュラ・ヴィニュロンズ・アソシエーション(MPVA)が中心となって進める地区特性を見極める調査研究のほか、ブルゴーニュ生産者との交流、樹齢の高まり、若い世代の参入などがあげられる。2017年からMPVAの運営により、外部審査員による、オーストラリア中のピノ・ノワールを対象とする品評会「Australian Pinot Noir Challenge」を始めた。今後、毎年開催予定。ワイン造りの歴史は古く、1886年にこの地のワインが品評会で評価を受けた記録が残っている。その後、ヤラ・ヴァレーと同様に酒精強化ワインの需要の高まりや不況の影響で、1920年代にほとんどのブドウ畑が失われた。復活は1970年代からで、1972年にElgee Park Vineyard エルギー・パーク・ヴィンヤードが植栽(畑は現在も健在)。75年にNat White ナット・ホワイト夫妻によるMain Ridge メイン・リッジが始まり、造り手のパイオニアとして現在に至る。Stonier ストニアー、Paringa パリンガなどが70〜80年代に後に続いた。ワイン産業が再開してわずか50年足らずの、若い産地である。周囲を海に囲まれた風光明婿な半島で、気軽にマリンスポーツやワインツーリズム、温泉を楽しむリゾート地として人気がある。メルボルンから車で1時間強(約80km)で、通勤圏でもあることから近年は富裕層のセカンドハウスのために宅地化が進み、土地が高騰している。丘陵地で土地が狭いだけでなく、地価の高騰がブドウ畑の拡大を阻む原因になっている。現在ワイナリー数は約30で、その多くがセラードア(直売所)とレストランを併設している。栽培面積は約1,000ha。主要品種はピノ・ノワールで約500ha。そのクローンの大部分は、豪州でバズビー・クローンと称される「MV6」(クロ・ヴージョ・クローン)。シャルドネ250ha、ピノ・グリ120ha、シラーズ60ha程度。フィロキセラは到達しておらず、多くの畑が自根。海洋性の気候で、昼夜の寒暖差は穏やか。遅霜のリスクはほとんどない。しかし常に海からの強風にさらされている。ブドウ畑の標高は40〜250mと低い。1月の平均気温は19.2℃。年間降雨量は730mm(成育期は390mm)程度。モーニントン・ペニンシュラは新生代第三紀(1500万年前)頃に起きた隆起や断層運動で現在の形となった。ブドウ畑は、大きく2種類の土壌に分けられる。ひとつは、地図上アーサー・シートを頂点として、レッド・ヒル、メイン・リッジなど東側の麓に向かって玄武岩由来の赤土の土壌が分布する。多くの造り手がこの地にブドウ畑を展開している。標高は150〜200m程度。比較的保水性がよく、肥沃で、樹勢が強い。代表的な造り手は、バリンガ、メイン・リッジなど。赤い果実と豊かな酸、柔らかな余韻が特徴的。収穫は3月中旬と遅い。一方、北側のムールダック、チュロング、ヘイスティングス、バルナリングにかけての標高が低い(40m〜100m)ところは、古生代の海の堆積土壌と、第三紀の海の堆積士壊で、それぞれ単独で分布したり、入り組んだりしている。水はけは良い。アッパー・ヤラの土壌と類似性が指摘されている。代表的造り手は、Ocean Eight オーシャンエイト、Yabby Lake ヤビー・レイクなど。黒系の果実になりやすく、骨格がはっきりとしている。より力強さがあり、強いミネラル感がある。収穫は2月下旬と早く熟す。Montalto モンタルトやTen Minutes by Tractor テン・ミニッツ・バイ・トラクターは、玄武岩の赤土、海の堆積土壌、それぞれから単一畑ワインを生産している。玄武岩由来の赤土の土壌と、古い海の堆積土壌が降り合って分布し、ピノ・ノワールが主要品種になっている点で、オレゴン州ウィラメットヴァレー北部(ダンディヒルズAVAやヤムヒルカールトンAVA)と類似している。


3. Geelong ジロング
白:シャルドネ、リースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリなど
黒:ピノ・ノワール、シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨンなどピノ・ノワールとシャルドネの重要なワイン生産地である。
メルボルンから南西の海岸沿いに位置するこの地区は、海洋性気候の影響を強く受けるため気温は低く、日照時間が長く乾燥した気候で、シャルドネとピノ・ノワールの成熟に最適。1877年、フィロキセラが最初に発見されたのがここジロングだった。広いエリアは3つの小地区(非公式)に分類される。The Bellarine ベラリンはボートフィリップ湾内に突き出た半島で、海洋性気候。石灰岩の上に黒い玄武岩が覆う土壌を有する。The Moorabool Valley ムーラブール・ヴァレーは、ジロングとバララットの間に位置し、大陸度が高くなる。By Farr、Lethbridge、Bannockburnといったプレミアムワイン生産者が集中している。TheSurf Coast サーフ・コーストは「グレート・オーシャン・ロード」で有名なバス海峡に開けた海岸沿いのエリアで、気候は最も厳しくなる。


4. Goulburn Valley ゴールバーン・ヴァレー
白:シャルドネ、マルサンヌ、リースリング、ソーヴィニヨン・ブランなど
黒:シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨン 、メルロ、ムールヴェドルなどゴールバーン・ヴァレーの南側(上流側)の地域は豊かな歴史をもっており、1860年に設立されたTahbilk タビルクは、オーストラリアで最も長い歴史をもつワイナリーのひとつであり、設立当時の木造のセラーは、歴史的建築物として保存されている。1860年代に植えられたブドウの木から、今でも毎年何百ケースものワインが造られている。タビルクならびにMitchelton ミッチェルトン周辺の地域は現在、Nagambie Lakes ナガンビ・レイクスという小地区に分類されている。この地域は、内陸地方の谷底の気候で、日中の気温差が激しいが、ゴールバーン川に沿ってできた湖や小川がたくさんあるため、その気温差が多少和されている。灌漑用水が豊富にあり、ゆるい地盤の砂と石状の土壌が、色合いや風味を損なわずに大量のブドウが生産される。ゴールバーン・ヴァレーの下流(北側)も豊富な歴史を誇っている。1868年にTroyan Darveniza トロヤン・ダーヴュニザが、Shepparton シェパートンの近くのMooroopna ムーループナという場所にExcelsior Winery エクセルシア・ワイナリーを創業し、1890年までに300もの賞を海外で受賞した。現在、この地域の主なワイナリーはMonichino モニキーノである。土壌は場所によって大きく異なり、大きく3つに分類される。オーストラリア南東部で最も一般的な赤茶色の砂質植壌土、黄色や茶色の植壌土、有史前からのゴールバーン川の流れによって形成された石英砂となっている。この砂状の土壌は、フィロキセラを食い止め、タビルクの古いシラーズの木を守ってきたのである。


5. Pyrenees ピラニーズ
白:シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、マルサンヌなど
黒:シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、ピノ・ノワールなど
ピラニーズ地区にブドウが初めて植えられたのは1848年であった。その後150年、ワイン産業は断続的に発展し、現在は、カベルネ・ソーヴィニヨンとシラーズから造られたフルボディの赤ワインの重要な生産地として知られ、今後も継続的に発展を続けると思われている。ヴィクトリア州の西部地区はシャルドネの栽培に適している。非小地区はAvoca アヴォカ、Kara Kara カラ・カラ、Moonambel ムーナンベル、Redbank レッドバンクがある。この地区は気候の変化が多様である。全体的には温暖な気候のため、フルボディの辛口赤ワインの生産に適しているが、一方で、内陸に位置することから真夏の湿度が低く、春から初夏にかけては日中の気温差がある。晩夏の頃の最高気温は低く、積算温度も比較的低くなる。日照時間は十分にあり、ブドウ発育シーズン中の降雨量は限られているため、瀧渡が必要となる。ビラニーズ地区にはマイクロ・クライメットが存在する。最近、この地区では白ワインとスバークリングワインが有名である。


6. Beechworth ビーチワース
白:シャルドネなど
黒:シラーズ、カベルネ・ソーヴィニョン、ピノ・ノワールなど1852年に金鉱として発見されたのをきっかけに発展し、1856年に最初のブドウの木が植えられた。1980年代から本格的にワイナリーが設立され始めた。州道315号線沿い、標高400m付近、わずか10kmの距離の間に、Giaconda ジャコンダ、Castagna カスターニャといった個性的なワイン生産者が集まっている。土壌は柔らかさの度合いが異なるものの、ほぼ花崗岩質で覆われている。同じ気候土壌にも関わらず、造り手によって得意な品種が異なる。主な品種は、シャルドネ、ピノ・ノワール、シラーズ。ワインの特徴は品種を問わず、口中が冷やされるような印象の強いミネラル感をもつ。


7. Bendigo ベンディゴ
白:シャルドネ、リースリング、ソーヴィニヨン・ブランなど
黒:シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロなど
郊外の緩やかに起伏した土地で、湿度は低く、日照時間は長くて適度な降雨量がある。土壌は酸性で肥沃度が低いため、シラーズやカベルネ・ソーヴィニヨンをベースとした、芳醇な赤ワインを産出する。


8. Macedon Ranges マセドン・レーンジズ
白:シャルドネ、リースリング、ソーヴィニヨン・ブランなど
黒:ピノ・ノワール、シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨンなど
ピノ・ノワールとシャルドネでカルト的人気のBindi ビンディ、Curly Flat カーリー・フラットや、2011年にバイオダイナミック認証を取得して上質なワインを生産するCobaw Ridgeといった小規模の個性的な生産者が集まる地域。土壌は多様で花崗岩質の丘が連なり、非常に痩せた山の土壌のため少量の生産量となっている。プレミアム・スパークリング・ワインも造られる。



9. Heathcote ヒースコート
白:シャルドネが主
黒:シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨンなど
気候と土壌はこの地区の南北を貫く山脈の影響を受け、冷涼な東風が送り込まれるため、ブドウの発育期は涼しくなる。複数の有力生産者が、ここで得られる非常に凝縮感があり、深紫色のブラック・フルーツの香味をもつブドウにひかれ、高級なシラーズを生産している。近年評価が高まった。


10. King Valley キング・ヴァレー
白:シャルドネ、リースリング、ソーヴィニヨン・ブランなど
黒:カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーズ、メルロなどキング・リヴァー流域のブドウ栽培地。長い歴史をもつ小地区Milawa ミラワの標高が最も低く155m、南端のWhitlands Plateau ウィットランズ台地が標高800mで、オーストラリアで最も標高の高いブドウの産地のひとつとなっている。地形は、北部が平坦で、南部は山岳地帯である。大半のブドウ畑は比較的緩やかな傾斜の北向きもしくは北東向きの斜面に位置している。南北の気候の差は激しく、標高の低い北部から標高の高い南部に向かって徐々に降雨量が増え、積算温度が低くなる。ミラワの栽培期の雨量は329mm、ウィットランズでは630mmとなっている。ブドウの熟す時期も徐々に遅くなり、ワインのスタイルも変わる。標高の最も高い地域では早期に熟すタイプの白のみがテーブルワイン用に適しているが、この気候は良質のスパークリングワインを造るのに理想的といえる。


11. Rutherglen ラザグレン
白:シャルドネ、ミュスカデル、リースリング、セミヨンなど
黒:シラーズ、カベルネ・ソーヴィニョン、マスカット・ア・プティ・グラン・ルージュなど
この地区はマスカットとミュスカデル(オーストラリアで伝統的にトカイと呼ばれる)から造られる酒精強化ワインの産地として有名である。壮大なレンガ造りの建物とワイナリーで歴史的に知られており、ゴールドラッシュの時代にタイムスリップしたような雰囲気が味わえる。完全に大陸性気候で、夏は非常に暑いが、夜は涼しくなる。1858年設立の「Chambers Rosewood」や、1870年設立の「Campbells」など、家族経営で代々続く伝統ある生産者が有名。ラサグレンのシラーズは、厚みがあって豊潤なフルボディワイン。


12. Grampians グランピアンズ
白:シャルドネ、リースリング、ソーヴィニヨン・ブランなど
黒:シラーズ、カベルネ・ソーヴィニョン、ピノ・ノワールなど上品で力強さを兼ねた赤ワインが特産で、瓶熟成も大変長いのが特徴。公式の小地区に、Great Western グレート・ウェスタンがある。生産量の8割を赤ワインが占める。オーストラリア大分水嶺(グレート・ディヴァイディング・レンジ)の裾野に位置するところは、標高差がある。グレート・ウェスタン/グランピアンズ地区は、ヴィクトリア州の東部の産地よりはかなり涼しくなる。1,400℃を少し上回るほどと積算温度は低いが、ブドウ発育シーズンの日照時間の比率が高いため、その気候が補われ、湿度も適度になる。この地区は特に遅摘み品種の栽培に適し、代表される品種はシラーズである。


13. Henty ヘンティー
オーストラリア大陸で最も冷涼なワイン産地のひとつで、羊毛業で有名な農業地。主に赤土を覆う玄武岩にブドウ畑が広がっている。スパークリングワインと繊細な香りのするワインを生産している。主な品種はシャルドネ、リースリング、ピノ・ノワールなど。1975年設立のCrowford River クロフォード・リヴァーは、特にリースリングが有名で、Langton's Classificationでは「Outstanding」に格付けされている。


14. Alpine Valleys アルパイン・ヴァレーズ
標高150〜320m程度。分岐した川からできた4つの谷から成っている。標高により2つの全く異なった気候をもち、その土壌は川の恩恵を受け肥沃。他のアルプス地方同様、気候ははっきりとした大陸性気候で、春の霜は栽培に打撃を与え、収穫前の秋に再び霜が発生する。故に、丘陵地の風通しの良いところにブドウ畑を位置することにより、霜からの被害を最小限に抑えている。主な品種はシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンなど。


15. Murray Darling マレー・ダーリング
白:シャルドネ、マスカット・ゴールド、コロンバール、セミヨンなど
黒:カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーズ、メルロなど
ニュー・サウス・ウェールズ州との境に流れるマレー川に沿って、両州東西にまたがる広大な産地。生産量の多いブランドワイン用のブドウを得るのに、非常に重要な地域である。夏は暑く、日照時間が長いため乾燥している。ブドウ発育シーズン中の降雨量が少ないが、灌漑用水は豊富。品質は非常に安定している。

参考資料 日本ソムリエ協会教本、隔月刊誌Sommelier

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