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【読書録】ハードウェアハッカー

 たとえばほとんどの消費者は、ツルツルの鏡面仕上げのプラスチックのほうがザラザラしたサテン仕上げものより高品質だと信じている。どちらも構造的な機能の面では違いがない。でも、鏡面仕上げのほうがずっと手間がかかる。射出成形の金型を細心の注意で苦労して磨かねばならないし、すべてのプロセスで労働者は白い手袋をしなければならない。毛筋ほどの傷がついているだけで、欠陥として大量のプラスチックが廃棄され、輸送するときにも鏡面仕上げの面はフィルムで保護しなければならない。 これだけの努力や無駄を経たあげくに、ユーザーがまっ先にすることは何だろう? 鏡面仕上げの1面に、汚い指紋をベタつける。開封から1分以内に、そこは鏡面ではなくなる。あるいはもっとひどいのが、保護フィルムをつけたまま使い、最終的にはサテン仕上げよりも見た目を悪くする。 サテン仕上げと比べて見よう。サテン仕上げなら保護フィルムなんかいらないし、工員にとってもユーザーにとっても扱いやすく、長持ちして、歩留まりもずっといい。ユーザーが使っても、小さな傷が隠れるし、指紋も細かい汚れも見えない。たぶんサテン仕上げのほうが、鏡面仕上げよりも長期的な顧客体験は上だろう。(アンドリュー“バニー”ファン「ハードウェアハッカー~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険」)



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