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読書 - 参謀の思考法

会社の成長は所属人材以上に大きくならない、つまり経営陣以上には大きくならない。当社の経営陣は、CEO,COO,CTO,CSO(service),CFOで構成されている。私はCFOであるが、現状の役割分担では参謀的な役割は私に該当することになるため、長期的な視点でどんな思考が必要なのか気になり本書を手に取った。

著者は、株式会社ブリジストン元CEO荒川詔四さん。新卒でブリジストンに入社し、2年目から海外に赴任。40代に現場の課長職であったところ、突如、社長直属の秘書課長を拝命。その後、アメリカ大手のファイアストンの買収からPMIまで従事する社長の参謀役として活躍した方である。

概要

参謀とは、会社の進めたい方向(ビジョン)を代表と共有し、バックキャスティングで合目的的に考え、行動する。その考えと行動の落とし込みは、会社にとって原理原則とは何かを考え抜き、それを行動規範とする。その行動規範に背くことは、例え代表でも意見を戦わせて議論すべきである。また、人間関係の泥臭い部分もうまい方向に導き、解決させるような人間である。

上司を機能させる

世の中には様々な上司がいる。彼らをうまく使っていかないといい参謀にはなれない。

経営の取り巻きでもカリスマ経営者のもとにいる経営陣は、Yesマンであることも少なからずある。しかし、参謀というのは上司(リーダー)の見据えている世界を理解し、その世界を実現するために深く考え続ける。そして、上司の先を行く思考を持って、上司に意見をする。参謀とは、上司の意思決定のパフォーマンスを最大限引き出す役割である必要があることから、迎合という行為はタブーである。実は、このパフォーマンスの最大化というのは、信長と秀吉にも言えて、秀吉が信長の草履を懐で温めたのは、足元の冷えは思考力の低下に繋がるからであり、それを察した信長は秀吉を近くに置き続けたのである。

つまり、上司の不完全性を補うのが参謀の仕事、独立した思考と判断力を持つ自立した存在である必要ある。

また、時には使えない上司のもとに就くこともある。しかし、参謀は上司が使えなくてもしゃしゃりでないでうまく使うことを考えるような人である。
上司を押しのけて前に出ることは、時にはトップマネジメントに大きな評価を与える可能性はあるが、押しのけられた人間は面白いとは思わない。その感情的な部分が後の仕事に支障をきたす恐れがあるので気を付けるべき。つまり、人の気持ちを推し量る度量が参謀には必要であるということである。

これでは評価されないという意見もあるかもしれないが、周りは正当な評価をするのが世の常である。従って、自己顕示をあえてしなくても見ている人は見ており、評価はされるということである。逆に自己顕示欲の強さは本人の自信のなさの現れとなるためしない方がいい。

上司を機能させ、職場を機能させ組織として成し遂げることに集中することができるように考えるべきである。

合目的的に考える

参謀とは思い描いている未来を実現するためのサポートを役割も担っている。それは、合目的的なことに徹することが重要、つまり目的に合致することだけやり合致しないことは一切しない。とはいえ、トラブルは頻発する。

参謀はトラブル耐性を身に着けることが必要である。トラブルが起きるということは正常であると考えるようにする。また、感情的な言い分には乗っからず、冷静に起こっている事象の全体を眺めて打ち手を考えることである。

トラブルの処理の方法のコツ
・目的を置き去りにしてトラブルを追いかけない
・現場を責め立てても解決しない
・目的は会社の損失を最小限にすること
・相手を責め立てない、トラブルが起きるのは仕組みがおかしいのであって個人を責めるのは違う
・相手を責め立てないのは、人の自尊心を傷つけるのは長期的にマイナスであり、自分は価値のある存在であるという自尊心を傷つけられた人は敵意を抱くためである
・敵意を抱くと本当のことも話さなくなり、情報隠蔽するようになるため後々に大変になる

理論より現実に学ぶ

参謀と言われると、どうしても理論派が思い浮かんでしまう。しかし、これは現実とはずれている認識である。
現実として、本で得る知識や理論は大事だが、現場で起きることは個別具体的なのである。従って、完全に教科書的に当てはまるもの事象は存在しないのである。問題を解決するには、現場に足を運び表面的ではなく本質的な問題を突き止める努力をすることが必要なのである。
クリティカルな解決方法はひょんなものであったりして本などには書かれていないことも多々あるし、些細なことと思っても大掛かりな解決をする必要もあるかもしれない。(本書の事例では、事故が起きないようにする効果的な解決方法は食事後の体操であったと述べられている)
つまり、難しいことなのか否か、きちんと見分けるには問題が起きてる場所に行くこと、百聞は一見にしかずである。

原理原則を軸に行動する

参謀は、上司が道を外しそうになった時に行動修正させる役割も必要である。
正しい行動を促すことを可能にするには、正しい思考をする必要がある。
正しい思考をするのに大事なこと、それは、
何が原理原則なのか?を日々本気で考え抜くこと、その原理原則で自らを律することである。

ここで1つの意見が出る。
原理原則を軸にするとガチガチに制約が出るということである。
しかし、これは誤解があり、効果は真逆である。
なぜなら、原理原則を決めると、やってはいけないことを決めることができるので、やらないことをやらない限り自由になことができるのである。

人間関係

参謀は人間関係の軋轢に直面することが多々ある。(上記のトラブル耐性に通ずる)
例えば、経営戦略はバックキャスティングで試行するため、打ち手が非連続なことが少なくない。そのため既存部署から理解が得られず不満が出ることがある。参謀は、このようなことをまとめていく必要もあるのである。
しかし、ここでもポイントがある。人間関係は悪いのがデフォルトであると考え、合い目的的に仕事するのに徹することである。ただ、人間関係は悪いのがデフォルトとはいえど、必要最低限のケアは必要である。これは、人間関係を破局に向かわせると仕事が進むものも進まなくなり、結果的にゴールが遠ざかる可能性があるためである。

また、大企業等でもよくある派閥の話。人間の本質は派閥を作るものである。これは認めるべき事実である。
参謀である以上直属の上司側(社長側)の人間と色がついてしまうもの。なので、参謀はそのことは認識しておく必要がある。
しかし、合目的的に動く必要あるので、中立的立場を取る必要はある。
これを実現するには会社の未来のためになることは、反対派閥でも意見は取り入れ社長に提案することが大事なのである。この原理原則に基づいた行動が、結果的に中立的な立場を作っていくものである。

また、出世欲が強いのは参謀には向かない、合い目的的な提案指摘をするのが参謀なためそのマインドは邪魔なもの。出世欲は、時に上司への迎合を促すマインドセットになってしまうためである。

最後に

参謀は、理論派ではなく現場に足を運び問題点を抽出する必要がある。これは、やはりそうなんだなという理解である。このご時世であるためかなりの仕事をリモートで行っているが、現場からの距離が遠いのはよくないと直感的に思っていた。参謀役でも現場に足を運んでいるのは見習うべき事実である。また、出世欲がない方が参謀に向いているなど、マインドセットがよくわかる1冊である。より詳細に知りたいと思った方は是非本書を手にしてもらうといいだろう。





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