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これが僕のやり方

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中学2年生の段田太一は、エネルギー波を出すために悪戦苦闘する。が、ある日ヒントを掴む。
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2016年1月の記事一覧

小説『これが僕のやり方』――⑧リスクなんて

小説『これが僕のやり方』――⑧リスクなんて

 筋肉痛が治るとすぐに発動させる。左手親指と人差し指の間でスプーンに亀裂が入り割れる感覚がある。その後すぐ意識が途切れそうになる瞬間。

 ――来る

 いつもの視界が暗くなっていくやつ。膝が曲がっていって力が入らない。体がぐしゃっとなる0.6秒前。

 スプーンが落下して「カーン」と鳴る。

 力が入る。
 自分の感覚に驚く。力が入る。
 膝をつき、フローリングに手をつく。その手さえも上半身を支

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小説『これが僕のやり方』――⑦イメージを重ねる

小説『これが僕のやり方』――⑦イメージを重ねる

(前回:小説『これが僕のやり方』――⑥僕の友達)

 その日の夜、自分の部屋で僕は再びスプーンの砂状化に挑戦する。
 前回は目覚めた直後の勢いでやってしまったので、意識的にできるのかどうかわからなかった。しかもどういう感覚でやればいいのかもよくわかっていない。

 まずあの夢を思い出してみる。
 触れたものすべてが砂状に変化する夢だった。
 その直後に起床し、現実で触れたものも砂になった。つまり夢

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小説『これが僕のやり方』――⑥僕の友達

小説『これが僕のやり方』――⑥僕の友達

(前回:小説『これが僕のやり方』――⑤夜未知、おかまいなし。)

「うぅ、うう、うううぅー……」
 僕は痛くて泣いた。目をつむっても涙はこぼれた。
 気持ちはそろそろ大人になったつもりでいたけど痛いとまだ泣いてしまう。

 僕は絶対に目を開けない。
 開けたら夜未知が僕を嘲り笑って見下ろしているにちがいない。

「うっ!」

 僕のお尻に衝撃。蹴られた。そして僕は悟る。
 これは僕に痛みを与えるた

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小説『これが僕のやり方』――⑤夜未知、おかまいなし。

小説『これが僕のやり方』――⑤夜未知、おかまいなし。

(前回:小説『これが僕のやり方』――④弱者の妄想)

 通い慣れた校舎を見ても、この中学に初めて登校するような気分だった。
転校したことがないからわからないけど、転校生と同じ気持ちではないだろう。
 発見したことを実験する科学者みたいなものだろうか。僕は科学者じゃないからわからないけど。

 教室のある2階に行くまでに、下駄箱の前でクラスメイトとすれ違う。
 1週間ぶりの登校に少し驚きが混じっ

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