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おしゃれに気を使うのは、「英語のそこのところ」第79回

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2015年6月11日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 日本語の中に入り込んでいる英単語の中には、Native English Speakerが使う意味とはまったく違っている意味になっているものが結構あります。良かれと思って使っているのに、むっとさせることも。注意したいものです。(著者)

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

最新刊!  
「英語の国の兵衛門」「英語のそこのところ」の作者徳田孝一郎の作った英語テキスト「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト9 形容詞とその仲間たち2(関係詞)」販売中!

 前巻の「形容詞とその仲間たち」で形容詞・不定詞の形容詞的用法・分詞を取り上げ、様々な表現をするスキルを身に着けていただきましたが、今回は、文で名詞を飾りたいときに使う関係代名詞・関係副詞です。
「質問をしてくる奴=私たちにいくつかの質問を頼む少年たち」
「あいつらがする質問=少年たちが私たちに頼むいくつかの質問」
と言った日本語を英語にする手順をすっきり身に着けることができます。

【本文】

 このあいだダウンのコートを脱いだと思ったら、もうじめじめと蒸し暑くなってきました。昔はこんなに春が短かったでしょうかねぇ。冬と夏が長くなって春と秋が短くなっているような気がする。なんだが騙されたような感じです。まあ、誰も騙しちゃいないんでしょうが。

 でも、こういう季節は、着るものに悩まされますね。
 普段、わたしは自宅の書斎で仕事をしているんで、ジーンズにTシャツという格好でいいんですが、週に3・4回は、お座敷がかかって人様の前に立たせていただいたりする。なにも三味線や小噺をさせていただくわけではなくて、一芸の英語・英会話をお伝えさせていただく。まぁ、わたしは自分のことをコンバーター(変換器)ぐらいに考えていて、小難しい英文の作り方や話し方をなんとか面白おかしくご披露できればとおもって、人前に立たせていただいているんですが、そんな時に、ジーンズにTシャツってわけにはいきません。最低限、ジャケットとシャツは着ないとね。みなさんに失礼ですから。

 で、この時期が一番悩むんです。
 普通のジャケットって3シーズン、秋・冬・春って着ていいものなんですが、この時期の本格的夏の前の2週間か3週間かそこらに、真冬と同じものでいいかっていうと、う~む、ちょっと暑苦しい気がする。でも、かといってシャツだけというのも、なんだか嘘寒い。
 さて、どうしたものか?
 と、毎年、クローゼットの前で思案に暮れる日々です。
 こういうのは、着物の世界にもあるそうで、秋から春に着る着物は「袷」、夏は「うすもの」と決まっていて、その中間に着るのが「紗あわせ」。紗あわせはやっぱりごく限られた時期にしか着られないらしくて、相当な衣装持ちじゃないと手を出さないのだとか。
 そう考えると、そんなに服を持ってないわたしなんか3シーズンのジャケットで充分、誰も見ちゃいないんだから、ウールのジャケット着て行けってことになります(笑)

 いま気づきましたが、こんなことを書いていると、わたしの出身地の福岡県人には馬鹿にされそうです。彼の地では、男がファッションのことを話したりするのはご法度。ましてや、ちょっとカッコつけた格好をすると、
「つやつけとう」
 って言われて、心臓を貫かれる。血を噴き出しながら、しばらく路上で倒れてなければならない(笑)
 ちょっと解りにくいかもしれないので、説明させていただくと、「つやつけとう」というのは、「艶」を身に着けているということで、「おしゃれしている」という意味です。共通語にしてしまうとなんだかニュートラルな意味で面白くも何ともありませんが、福岡で男がこれを言われるのはもうほんとに恥ずかしいんです。「自然体じゃない」とか「無理してる」とか、言う裏の意味があって、そして、枕詞として『男のくせに』というのが「艶つけとう」の前に入る。
「男のくせに、素の自分で勝負せずに、着飾って、実力がない」
 という長々とした意味が込められている。これを面と向かって言われた際の屈辱感や恥ずかしさは半端じゃありません。

 こういうおしゃれの話なんか男がするもんじゃない、ましてやおしゃれそのものをするなんて、っていう空気は、福岡の男尊女卑っていうか女尊男卑っていうか、あまり開明的でない平等的でないものだと思うんですが、実は意外にNative English Speakerにもそういうところがあります。

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