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英語のそこのところ 第22回 ところ違えば、マナーも違う

著者 徳田孝一郎
イラストレーター 大橋啓子

 徳さんは、日本人ぽくないね。
 と、Native English Speakerから言われるというお話はしたことがあります。理由は、意思表示がはっきりしていて、理由付けがあって、つまり理屈っぽいということですね、ええそういうことです、理屈っぽくて面倒、いや、Native English Speakerには話しやすいということだったのですが、別のNative English Speakerから同じような話の流れで、ほかの日本人と違って礼儀正しいから、といわれたことがあります。
『はて?』
 と、一瞬なる。わたしはどちらかと言えば、ぶっきら棒なほうで、友人に礼儀正しいなんて言われたことがない。というか、そんなこと言われたと友人たちに話せば、一晩中笑いの種に困らなくなる。酔っぱらって、殴り合いの喧嘩をしたり、呑み屋の二階から道路に飛び降りようとする人間を世間一般に「礼儀正しい」とは言いません。
 でも、褒められて否定するのもなんだし、必死で「礼儀正しい」理由を考えて、
「一応、徳田は武家だったらしいからね、昔は(没落したけど)」
 なんて理由にもならないことを言うと、いや、そうじゃないとのこと。
「じゃあ、なんで?」
 と訊くと、
「徳さんは、話すときに目をそらさないんだよ」
 とのたまう。
 ああ、そっちかと、それならわたしも納得しました。早くそれをいえ、家のことなんて恥ずかしいことを言っちまったじゃないかと、ちょっと赤面です。

 これは、わたしの憶測なんですが、終戦の直後に生まれた人ってアメリカ万歳って人が多い気がします。かく言うわたしの母も1946年生まれなので、正義の味方のアメリカ、明るくて豊かなアメリカ、かっこよくておしゃれなアメリカ、にあこがれて育ったようです。いわゆる価値観が醸成させる12歳ぐらい、1955年ぐらいまで、アメリカは軍国主義からの解放者だったわけですから、それも当然なのかもしれません。しかも母は対馬出身、身近にアメリカ兵がよくいたそうです。
 そんなんですから、うちの生活スタイルはどちらかというとアメリカ的でした。朝は、トーストにハムエッグにコーヒー(幼稚園ぐらいから朝はずっとコーヒーです)。夜もよくパンとハンバーグやビーフシチューなどの主菜が多かったように思います。わたしがコメをあまり食べないのは明らかにこのあたりからきている。
 そんな中で、母がどこから聞きかじってきたのか「話すときは目を見て話せ」というのがあったんです。

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