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パラグラフは、段落のことじゃなくて、 もしかして…… 「英語のそこのところ」第72回

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2015年4月16日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 英語には英語の文章の書き方というのがありまして、それを痛感させられた話です。(著者)

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

最新刊!  
「英語の国の兵衛門」「英語のそこのところ」の作者徳田孝一郎の作った英語テキスト「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト9 形容詞とその仲間たち2」販売中!

 前巻の「形容詞とその仲間たち」で形容詞・不定詞の形容詞的用法・分詞を取り上げ、様々な表現をするスキルを身に着けていただきましたが、今回は、文で名詞を飾りたいときに使う関係代名詞・関係副詞です。
「質問をしてくる奴=私たちにいくつかの質問を頼む少年たち」
「あいつらがする質問=少年たちが私たちに頼むいくつかの質問」
と言った日本語を英語にする手順をすっきり身に着けることができます。

【本文】

 あまり自慢になる話ではないんですが、わたしはこうやって文章を書かせていただいてお代をちょうだいしてるのが、不思議になるときがあります。

 だって、文章修業と言ったものをまるでやってないものでして。。。はい<m(__)m>

 大学の友人で、有名なマンガ家さんの担当編集者をやっていたヤツがいるんですが、やっぱりそういう正統派はすごい。なんでも入社してすぐに、ポンと商品の写真を一枚、渡されるんだそうです。よく少年週刊漫画誌の裏にあるようなあれ。わたしが子どものころは

「毎日使うだけで背が5センチ伸びる! 奇跡のストレッチマシーン」(そんなの怪我する)とか、
「かけるだけで、視力がよくなる魔法のメガネ」(メガネなんだからよくなるのは当たり前)とか、

 いわゆるインチキ臭い、いや確実にインチキの広告が載っていましたが、あの手の商品の写真を渡される。でもって、それに「売り文句」「煽り文句」を付けろと言われるんだとか。

 で、そりゃ、何百人に一人の激戦を生き残って出版社に入社したわけですから、友人もそれなりに腕に、いや、筆に覚えがある。さささっと、コピーを書いて上司に渡す。例えば、こんなところでしょうか。

「みるみる筋肉もりもり! つけるだけで男らしい二の腕が作れるリストバンド」

 なかなかよさそうでしょ。努力なしに筋肉がつきそう。

 でも、上司はちらっと見て、ポンと突き返すだけ。コメントもないそうです。なんだ? と思いながら、席に戻ってまた次のコピーを考える。でもって、提出するんだけど、同じ反応。

 これを丸一日繰り返したんだとか。

 なんともはや、根性のあるやつです。わたしなんかすぐキレちゃうに違いありません。

 結局、友人が作ったコピーは一つも採用されずに、ほかの先輩編集者が作ったものが「売り文句」になったらしいんですが、これ、はじめから採用するつもりはないんですね。

 一つの写真からどれだけ言葉をひねり出せるか、どれだけ伝わる言葉のヴァリエーションを持てるかという訓練なんです。もちろん、その過程で辞書を引いたり、参考になる広告を見たりもして、そうやって文章修業をさせられる。明らかに友人の文は、大学時代よりもすっきり魅力的なものになっていったのを憶えています。

 それに対してわたしなんか「会社の有料ホームページにコンテンツが少ないからなんか書いて」なんてカジュアルに業務命令が来て、んじゃ、英文法を題材にして、そのまま解説したって面白くないから笑い話にして書くかってお気楽極楽なノリで書いたものが、たまたま本になっちゃったという人間なんで、友人に悪いぐらい。偶然とは恐ろしいものです。

 でも、思うんですが、どうして日本では「作文指導」って必須科目じゃないんでしょうねぇ。

 みんながみんな、文章を書いて暮らすわけじゃないにせよ、社会人になったら多かれ少なかれ、文章を書くのが仕事になると思うんですが。
 プレゼンテーションの資料だってそうだし、日々の報告書だってそう。どこまでも、文章を書くことからは逃れられない。なのに、そういうことは「学校じゃ教えてくれない!」なんて(笑) 青臭いことを思っちゃいます。

「ああ! まただよ。どうして、こう日本人はちゃんと文章をかけないんだ!」

 斜むかいの席に座るDidoが、奇声を上げて、背もたれに躰を預ける。ぎぎぎぃっと椅子が軋む音がする。このままだと、あの椅子は今日中に壊れるに違いない。なんといっても、Didoは190センチ100キロという雄大な馬体、いや体格なのだ。あんなに思いっ切り体を預けられたら、大黒柱でも折れる。

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