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満足の度合い「英語のそこのところ」第109回

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2016年5月26日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 たくさんのNative English Speakerたちと接していると、時たま思うことが、彼らがとっても欲深いことです。なんでかな? と思っていたんですが、DNAのせいという説もあるらしくって。Richと話していていろいろ考えさせられたというお話です。(著者)

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

 2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

いよいよ、新展開! 映画や小説の台詞を英語にして英語力を鍛える「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル7」発売中!

 English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト(全10巻)で、英文法を網羅しましたので、ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル7から、様々なコンテンツの名言、名台詞を英語するより実践的なトレーニングをやっていきます。

 この「ESM Practice 7」では、
せっかく来たのに、こんなのないよ。(from 新世紀エヴァンゲリオン)
やっぱ、人生この時のために生きてるようなもんよね。(from 新世紀エヴァンゲリオン)
バルセロナは5-1でミュンヘンに負けたよ。
ミュンヘンは3ー0でリヨンに勝ったよ。
なんてゴールだ!
人類はもはや孤独ではないのだ。(from 幼年期の終り)

などの名言、名台詞を扱いますのでお愉しみ。

大好評! Kindle で一日500ページビュー 「English Sentence Maker」シリーズ

 English Sentence Maker は、あなたの感情や意見、思っていることを伝えるためにはどの時制や助動詞、文法事項を選ぶべきかがわかる実践英語・英会話力養成テキストです。

 著者の主宰する英会話スクール「英語・直観力」の企業向けテキストから、契約企業様向けの問題文などを差し替え、一般向けに手直ししました。

 7年間で100名以上のビジネスピープルを単独での海外出張や海外赴任ができるスキルを持った国際ビジネスピープルにした実績があります。

 ぜひ、この実績あるテキストを完全マスターしていただき、世界を相手にビックディールを成し遂げ、人生を愉しんでください。このテキストはその扉を開くカギになります。

 実践英語・英会話力養成テキストEnglish Sentence Maker は、3つの特色を持っています。

 ひとつ目は、能動的な学習だということ。
 English Sentence Maker は書き込み式のテキストです。各Lesson ごとの解説を読み、そのあとに掲載されている日本文をご自身のノートもしくはkindle のノートブックなどに英語にして書き入れてください。その際に、知らない単語は調べたりせずに、日本語のまま英語の文の位置においてください。そうすることで、知っている単語、知らない単語を区別し、身に着けるべき単語を浮かび上がらせることが出来ます。

 ふたつ目は、どの文法事項を使うかの判断基準を身に着けられるということ。
 小・中・高校と長い間英語を学ぶために、多くに人々は英語の現在形、過去形などの文法事項を知っています。しかし、残念ながら、その文法事項をどういう場合に使えばよいかという判断基準を身に着けていません。

 たとえば、ここ何ヶ月かフットボールに夢中になっているということを伝えたい場合に使うべき時制は、現在形でしょうか? それとも現在進行形でしょうか? 迷われると思います。
 この知ってはいるけれども使い方に迷ってしまう文法事項を使う判断基準を各Lesson ごとの解説でくわしく説明しています。それを理解することで、英語を使う際に十全にあなたの感情や意見、思っていることを伝えることが出来るようになります。

 みっつ目は、英語を英語で考えることが出来るようになるということ。
 English Sentence Maker は日本語を英語にしていくことで、英語を習得していくテキストです。しかも、どういうときに、どういうことを言いたいときに、どの文法事項を使えばよいかという判断基準が出来ていくために、日本語の文字面を英語に移していくのではなく、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを英語にするというスキルを身に着けることが出来ます。頭の中のイメージから英語を作ることが出来るということは、そこに日本語は介在しません。つまり、英語を英語で考えることが出来るようになるのです。

具体的には、

私は彼が来るだろうことを知っていた。

という日本語を英語にする際には、日本語の文字面を英語に移していくと、

I knew that he will come.

と、しがちです。「知っていた」なのでknew、「来るだろう」なのでwill comeというわけです。
 しかし、よく考えてください。「彼が来るだろう」というのは、「私が知っていた」過去の時点のことです。であれば、「彼が来るだろう」と書いてあっても、過去から見た未来のwould を使って、would come としなければなりません。日本語をその字面のまま英語にしてはいけないのです。しかし、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを、判断基準をもって英語にすることが出来れば、問題はなくなります。頭の中に時の流れのイメージがあるために、

I knew that he would come.

という英文が難なく作れるようになります。 英文作成力や速読力を付けたいと思っておられる方ぜひ、手に取ってみてください。必ず、英語・英会話が出来るようになります。

☆「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト」および「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル」で使っている英文はすべて、Native English Speakerと協同で製作したものです。安心して、Native English Speakerの自然な英語を知り、習得してください。

【本文】

 ボールを受けた徳田に、がっしりした相手選手がチャージをかける。貧弱な体格の徳田だが、意外に倒れない。
「くっ」
 見かけによらない粘りを見せて、ボールをキープする。
 イラついた相手が、容赦なく徳田の足に蹴りを入れる。簡単にボールが取れると思った相手からの意外な抵抗に腹を立てたのだ。
「このっ」
 徳田が、お返しにと肘を相手に叩き込んだ。一瞬相手が止まる。
「ヘイ! とくさん」
 Good timing!
 徳田が、今までにやったこともないヒールキックで、パスを出した。案の定、バランスを崩した徳田はひっくり返ったが、神様はいるものだ。コロコロと弱いパスが声を出したRichのもとに転がる。
 パンッ!
 と小気味いい音がして、シュートがゴールマウスに飛んだ。ネットが揺れ、歓声が上がった。
 これで、2対1だ。
 Richの周囲にチームメイトが集まってハグする。不様に転がった徳田もよろよろとその輪に加わった。
「よし! 1点返したわよ。あと10分あるわ。勝つのよ!」
 Catherineが、鋭い目をしてみんなに檄を飛ばした。
「Yeah.」
 Richが、拳を作ってこたえる。
「ええ、もういいじゃん、1点取れたし、充分だよ」
 へろへろの徳田が弱気なことを言うと、Catherineが徳田を睨みつけた。
「勝つのよ。勝たなきゃ、許せない」
「へぇ~ぃ」
 ふらふらしながら徳田は自陣に戻った。
 でも、まぁ、今のもラッキーゴールだったし、これまでだよなぁと徳田は思う。
 いい気になって、新宿の有名百貨店の屋上で開催されているフットサル大会にエントリーしたのはいいが、5チーム総当たり戦で、3連敗。しかも、すべて完封負け。ほかのチームは明らかにいつも練習している本格的なチームで、徳田のチームが力不足なのは明らかだった。
 ぴーっと、レフリーのホイッスルが鳴る。
 ああ、もうちょっと休ませてくれよぉ。
 徳田は出そうになる顎をひいて、足を動かした。

「まぁ、初めての大会で1点取れたんだからよかったじゃん」
 タイムアップのホイッスルのあと、チームメイトの須田がそういうとCatherineとRichが首を振った。
 ぜいぜいと息を切らして、Catherineが吼える。
「なんで、そんなレベルで満足できんのよ! 負けたんだよ! しかも、5対1なんて信じられない」
「だって、練習もせずに1点取れたんだからいいじゃん」
 これは徳田だ。怪我をしたのか、右足を引きずっている。
「あたしが言いたいのは、そういうレベルで満足しちゃいけないってことよ。明日から、練習しましょう!」
「無理、ムリ……」
 須田と徳田は、ここははっきりさせなければと慌てて手を振った。Catherineのこの勢いに巻き込まれると仕事終わりに練習だなんて言って、死ぬ思いをさせられるに決まっている。
『まったく、どうしてこう欲深いんだか』
 徳田は、フットサルコートにひっくり返ると、夜空を見上げた。

 以前、働いていた英会話スクールは、スタッフの仲が良くてうまく時間が合えばこんなふうにフットサル大会に参加したものです。男女混合で参加できるし、新宿のデパートは近いので、良いリクリエーションになっていました。
 ただ、そういう時に感じるのは、Native English Speakerたちの負けず嫌いというか、欲深さというか、まぁ、私としては汗を流して愉しめれば満足なんで、練習もしてないのに勝てるわけがない、ラッキーで点がとれればいいやぐらいの気持なんですが、彼らは本気なんです。やるからには、勝たないといけないという気合で臨んでいました。

 初めのころは、Native English Speakerって何事も本気で真剣にやるもんだなぁと思っていたんですが、たくさんのNative English Speakerと接しているとこれはそういうレベルの話ではなくて、これはどうも「欲」の問題じゃないのかなっと思ってくる。
 いろんなことで、Native English Speakerは、欲深いなぁって感じることが多くあるんです。
 たとえば、どうしてそういう話になったのかは、憶えてないんですが、あるNative English Speakerと話しているうちにインセスト・タブーの話になったことがあります。いわゆる近親相姦が禁忌であることは、人類全体の文化(ヒューマン・ユニバーサル)なんですが、これ、実は理由がよくわかってない。日本では生物学的な理由づけがよく言われることですが、法的に許されている従弟従妹同士の結婚なら遺伝的疾病のリスクが低いかというと、そういうきちんとしたデータがあるわけではないんですね。なので、遺伝子疾病リスクが高くなるからというのは理由にならない。
 私の専門の現代哲学からの有力な説としては、太古からの社会において、人類は「女性」を交換して仲間を作るという習俗があるから、というのがあります。
 つまり、家族内での結婚が許されてしまうと、ほかの家との交換が行われなくなるので、仲間が作れなくなる。なので、親族婚をタブー視して無理やりにでもほかの家との「女性」の交換を生じさせて、裏切る可能性の低い仲間を作り、血族の生存に役立てるというわけです。「女性」をモノ扱いするということに関しては、今の観点からして問題ですが、非常に大切なものを交換すること自体が、実はインセスト・タブーの理由だったのだというのはうなずける説だと思っています。
 さて、こういう話をすると、だいたいのNative Japanese Speakerは、「へぇ」っと言って終わるんです。ほら、現に、これを読んでいるあなた、今「へぇ~」って言ってたでしょ? そこで満足、お腹いっぱいになる。でも、Native English Speakerってね、次の矢が出てくるんです。
「じゃあ、動物はどうなのかな?」なんて、思わぬ質問が飛び出します。
 面白い話を聞いて、ああ、そうかぁ、へぇ で終わらない。踏み込みが深い。知識欲旺盛だなぁっと思う。
 そういう欲ということでは、彼らNative English Speakerは知識欲に限らず、物欲も、金銭欲も、食欲も旺盛で、生臭い話になるので詳しくは書きませんが、契約交渉や、条件交渉は、いやはや気の重い業務でした。これぐらいでいいじゃない? というところで納まらない。必ずやり取り(やり合い?(笑))があって、妥協点を見出さなきゃならない。年一回の給与交渉の時期は、ほとほと疲れ果てたものです。
 一度、半分愚痴めいてRichとそういう話をしたことがあるんですが、Richいわく欧米人が日本人より欲深いのはDNAのせいなんだそうでして。

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