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星の名は。(the, a(an), ~s の使い方)「英語のそこのところ」第138回


【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2017年7月6日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 the, a(an), ~s の使い方、みなさん、悩まれるところですよね? ということで、それを「星の王子さま」と「イデオン」に絡めてのお話です。無料です。(著者)

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これを機にぜひお手に取ってみてください。

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 この「ドリル18」で「The Matrix」 を題材に英文を作っていきます。

判らない。これはただの偶然なわけがない。
なにいってる?
オラクルさ。預言者が告げたんだ。俺の選択にかかってると。
どんな?
なにする気?
侵入する。おれは行く。
ネオ、彼は自分を犠牲にしてあなたを、それを無にしないで。
俺は彼が信じていたものとは違う。救世主じゃない。トリニティ。預言者も認めた。
いいえ、そうよ。
残念だが普通の男だよ。
それは違う。

英語でどう言うのでしょうか? 
このテキストを使えば、きっちり身に付きます。お試しください。

【本文】

 去る者は日々に疎しって言葉がありますが、確かにそれは本当で、私くんだりでも20年も英語や英会話をお伝えしていると2000人近い方と知り合いになっていたりする。でも、その中でもいつも連絡を取り合っている方は一握りで、やっぱり、音信がなくなると縁が薄くなっちゃいます。
「そう言えばあの最初に中学受験を世話した連中はどうしているかなぁ。もう34になっているはずだが」なんてたまに縁が薄くなったやつらのことを思ったりする。でも、まぁ、その世代のなかでまだ何人かは連絡を寄越してくれるので、講師稼業をやっていた人間としては幸福なほうなんだと思っている次第です。

 そういう音信がないと縁が薄れるというのは、こういう連載物でも同じことのようです。このエッセイも第1回から3年半以上、執筆させていただいているんですが、最初のころにやった「冠詞の使い分け」などは書いている側からすると「もうあのネタは一回やっちゃったからなぁ」と臆す気持があって、なかなか再度書く気にならないんです。でも、友人の編集者に言わせると「そんなの関係な~~~い」ってことになるんだそうで。
「面白くて、ためになるんだったら、何回でも同じネタを使いまわしてもいいんだよ。読者なんてその場で愉しんで、すぐに忘れてしまう生き物なんだから、そのネタは飽きた、もういいよって言われるまで、同じネタで踊り続ける臆面のなさがプロってもんなの。それにさ、第一、お前。お前の文章が人の心に残ると思ってんの? それこそ自惚れだよ
 なんて、褒められてるんだか貶されてるんだか判らないことを言われる。まぁ、この男、そのあたりの商売の機微に精通している男で、ある格闘マンガを内容は変わらないのにタイトルを変えただけで、売り上げを倍にしたって伝説を持っている編集者。なので、連載物ってのはそういうものなのかなぁ、なんて納得せざるを得ない。
 書き手としては、同じネタで木戸銭をいただくのは心苦しいところはあるんですが、レッスンで英語をお伝えしていて、う~む、一度まとめてお話しした方がいいなぁと思うこともあるんで、ああ、あのネタかと思われるだろうなと思いつつも、今回はまたぞろ「the とa(an), ~s と『なにもつけない』」という冠詞の使い分けのお話をしたいと思っております(なにくどくど書いてるんだか、絶対、あのネタかなんて思う人はいないから、どんどんやれ という友人の編集者の声が聞こえてきました、始めましょう)。

 さて、この「冠詞」というやつは本当に面倒なもので、私もいまだにたまに間違えることもあるんですが、以前働いていた英会話スクールで、Native English Speakerを質問攻めにして、ああ、Native English Speaker はこういうフローで考えているのかと発見したことがあります。それは、Native English Speakerたちは
名詞に冠詞をつけるのではなくて、
冠詞に名詞をつけるってこと
です。
 え~、それってどういうこと?
 と思われるでしょうが、たとえば、我々Native Japanese Speakerが
バラが一輪咲いているのを見て、
「ああ、きれいなバラだな」
 という。
 Native Japanese Speakerは、
様子を表して、次にものの名前を持ってくる
思考回路を持っていることになります。
 一方で、Native English Speakerはこういう。
“Oh, what a beautiful rose!”
 Native English Speakerは、
数えて、様子を表して、次にものの名前を持ってくる
思考回路を持っているんですね。この「数えて」というのはちょっと不十分な判断基準なんで、もう少し詳しく話すと、
特定のものかな? 
数えられるもの・数えたいものかな? 
という「カテゴライズ」の判断を初めにするんです。彼らNative English Speakerにとって、今から伝えられるものが、特定のものなのか(知っていたり、常識だったり)? いくつあるのか? というのは非常に重要な情報なんでしょうね。だから、そういう思考回路が生まれているんだと思います。
 そういう意味では、我々Native Japanese Speakerは、
生け垣にバラが何輪か咲いていても、
「ああ、きれいなバラだな」
 という。表現は変わらない。
 でも、Native English Speakerにとっては大違いで、
“Oh, what beautiful roses!”
 となる。
 特定のものかどうか? 数えたいかどうか? というフローなんで、するっと” s “ がつきます。

 次に、特定のものかどうか? というのはどういう場合かですが、例えば、恋人に、一緒に見た一輪のバラがきれいだったこと伝える場合、我々Native Japanese Speakerであれば、
「バラきれいだったね?」
 というと思います。これをNative English Speakerであれば、
“It was the beautiful rose, wasn’t?”
 という。一緒に見たあのバラは他とは違う「スポットライト当てたい」バラです(王子様があの星に残してきたあの気難しい見栄っ張りの我侭なバラなのです(笑))。なので、the をつける。で、次に数えるか、数えないかを考える。「ああ、あれは一輪だったな」ということで、” s “ をつけない。はい! the rose の出来上がりです。

 このNative English Speakerの思考回路を身に付けるとたいがい冠詞の間違えはなくなるので、困ってらっしゃる方にはよく説明するんですが、この間のことですが、一瞬詰まってしまう質問を受けまして。いやぁ、英語をお伝えしながら、天文分野のことまでお伝えすることになるとは。言語の宇宙は広く深いですねぇ。

「じゃぁ、revolve を使って英文を作ってみよう。そうだな、こういうのどう? 『地球は太陽の周りを公転している』」
 徳田はSkypeのインスタントメッセージで即興の問題を受講生に送った。
「また、徳さんの趣味が出てるなぁ~、これ。宇宙SFだね」
 地球が太陽の周りを公転しているだけで、宇宙SF? いったいどんなSFだ? という突っ込みはせずにおく。大学生の女性だけに、SFは縁遠いのだ。「君の名は」も充分にSFだと思うが、彼女にとっては違うものらしい。去年「君の名は」の感想を語り合っていて「あれはSFだね」と発言して徳田は不興を買っていた。SFはいつまでも迫害を受ける星のもとに生まれている。
「駄弁ってないで、早く訳す」
「は~い」
 いたって素直にディスプレイの向こうで受講生がキーボードをたたき始める。
「はい、送信」
 エンターキィを押す音がすると、徳田のSkypeに英文が表示された。便利なものだ。相手は遠く離れた新宿にいるというのに。
“Earth revolves around Sun.”
 と表示されているのを見て、徳田はぶっぶ~っと首を振った。
「え~? どこ?」
 自信があったのか相手はむくれながら、画面を確かめた。
「sun にはthe がいるの。スポットライト当てないと」
 徳田は以前説明した冠詞の使い分けを思い出してもらうように言う。
「太陽は、いっぱいあるでしょ? そのうちの我々の……」
「え? ちょっと待って。太陽っていっぱいあるの?」
 そこかぁ~っと徳田は頭を抱えた。
「太陽って固有名詞だと思ってた」
「うんにゃ」
 徳田は首を振る。
「たとえば、宇宙人がいるとして、宇宙人にとって昼をもたらす星があればそれをなんて呼ぶと思う?」
「う~~~ん、その宇宙人の名前は?」
「じゃぁ、バッフ・クラン人」
 元ネタは徳田が一番好きな映画のイデオンだが、そんなことは知るまい。
「なにそれ、オタクっぽ~」
「うるさい。判っていることを何度も言うな。で、昼をもたらす星をなんて呼ぶ?」
 絶対間違えるだろうなぁっと思いつつ徳田は答えを促した。
「そりゃ、フッバ・ラクン星でしょ」
「ぶっぶ~っ。バッフ・クラン人は昼をもたらす星を『太陽』って呼ぶんだよ。あと、バッフ・クランね。どうでもいいことだけど」
「あたし、なんて言った?」
「フッバ・ラクン」
 ディスプレイの向こうでひとしきり笑いが巻き起こる。
「で、判った? 太陽ってのは、惑星に昼をもたらす星って意味なの。だから、この宇宙にはたくさんあるわけ」
「わかった、わかった」
 笑い過ぎて泣きながら彼女は言った。
「でも、ちょっと待って、じゃあearth にはthe がつかなくていいの?」
「もちろん、つけるさ。でも、Earth と大文字にするならつけなくてもいい。ホモ・サピエンスの生まれ育まれた星という意味だからね」
「へぇ、じゃあ、フッバ・ラクンの地球は?」
「だから、バッフ・クラン」
「フッバ・ラクン、バッフ・ラクン、フッバ・クラン、あれ、おかしいな、言えない。あはは」
 何度も言ってはちゃんと言えない自分にまた笑いだした。徳田はしょうがないので、頬杖をついて潮が引くのを待つ。こうなってしまっては何を言ってもツボに入ってしまう(笑)
「で、そろそろよろし? バッフ・クランの地球も、同じことさ。彼らが表現するならthe earth かEarth だね。バッフ・クラン人が生まれ育まれた星ってことなんだから」
「じゃあ、あたしたちからすると?」
「Baffu Kuran’s earth になる」
「そうかぁ、宇宙には地球もたくさんあるんだな。SFも残念なことばかりじゃないね。勉強になる」
 徳田は苦笑せざるを得ない。やはりSFは迫害を受ける星のもとに生まれているようだった。

 SF者の私にとっては意外でしたが、一般的には星の呼称には一般名詞と固有名詞が混ざって使われているのはあまり意識されていないことのようです。太陽、地球、月は一般名詞ですし、水星、金星、火星、木星などは固有名詞です。なので、我々ホモ・サピエンスの太陽、地球、月はスポットライトを当てたいので、the が必要になります。水星、金星、火星、木星は、他に存在しないのでスポットライトを当てる必要はないことになります。意外にSFもイケてるでしょ?(笑)みなさん、たまにはSFを。

(初出 水戸みかど商会ファクシミリ配信誌 2017年7月6日)

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 ひとつ目は、能動的な学習だということ。
 English Sentence Maker は書き込み式のテキストです。各Lesson ごとの解説を読み、そのあとに掲載されている日本文をご自身のノートもしくはkindle のノートブックなどに英語にして書き入れてください。その際に、知らない単語は調べたりせずに、日本語のまま英語の文の位置においてください。そうすることで、知っている単語、知らない単語を区別し、身に着けるべき単語を浮かび上がらせることが出来ます。

 ふたつ目は、どの文法事項を使うかの判断基準を身に着けられるということ。
 小・中・高校と長い間英語を学ぶために、多くに人々は英語の現在形、過去形などの文法事項を知っています。しかし、残念ながら、その文法事項をどういう場合に使えばよいかという判断基準を身に着けていません。

 たとえば、ここ何ヶ月かフットボールに夢中になっているということを伝えたい場合に使うべき時制は、現在形でしょうか? それとも現在進行形でしょうか? 迷われると思います。
 この知ってはいるけれども使い方に迷ってしまう文法事項を使う判断基準を各Lesson ごとの解説でくわしく説明しています。それを理解することで、英語を使う際に十全にあなたの感情や意見、思っていることを伝えることが出来るようになります。

 みっつ目は、英語を英語で考えることが出来るようになるということ。
 English Sentence Maker は日本語を英語にしていくことで、英語を習得していくテキストです。しかも、どういうときに、どういうことを言いたいときに、どの文法事項を使えばよいかという判断基準が出来ていくために、日本語の文字面を英語に移していくのではなく、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを英語にするというスキルを身に着けることが出来ます。頭の中のイメージから英語を作ることが出来るということは、そこに日本語は介在しません。つまり、英語を英語で考えることが出来るようになるのです。

具体的には、

私は彼が来るだろうことを知っていた。

という日本語を英語にする際には、日本語の文字面を英語に移していくと、

I knew that he will come.

と、しがちです。「知っていた」なのでknew、「来るだろう」なのでwill comeというわけです。
 しかし、よく考えてください。「彼が来るだろう」というのは、「私が知っていた」過去の時点のことです。であれば、「彼が来るだろう」と書いてあっても、過去から見た未来のwould を使って、would come としなければなりません。日本語をその字面のまま英語にしてはいけないのです。しかし、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを、判断基準をもって英語にすることが出来れば、問題はなくなります。頭の中に時の流れのイメージがあるために、

I knew that he would come.

という英文が難なく作れるようになります。 英文作成力や速読力を付けたいと思っておられる方ぜひ、手に取ってみてください。必ず、英語・英会話が出来るようになります。

☆「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト」および「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル」で使っている英文はすべて、Native English Speakerと協同で製作したものです。安心して、Native English Speakerの自然な英語を知り、習得してください。

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