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意味で伝えるのではなく「英語のそこのところ」第106回

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2016年4月14日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 日本人とコミュニケーションを取ろうとして、Native English Speakerは我々に気づかないところで苦労しているようです。今回はそんなお噺です。(著者)

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

 2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

大好評! Kindle で一日500ページビュー 「English Sentence Maker」シリーズ

 English Sentence Maker は、あなたの感情や意見、思っていることを伝えるためにはどの時制や助動詞、文法事項を選ぶべきかがわかる実践英語・英会話力養成テキストです。

 著者の主宰する英会話スクール「英語・直観力」の企業向けテキストから、契約企業様向けの問題文などを差し替え、一般向けに手直ししました。

 7年間で100名以上のビジネスピープルを単独での海外出張や海外赴任ができるスキルを持った国際ビジネスピープルにした実績があります。

 ぜひ、この実績あるテキストを信頼し、完全マスターしていただき、世界を相手にビックディールを成し遂げ、人生を愉しんでください。このテキストはその扉を開くカギになります。

 実践英語・英会話力養成テキストEnglish Sentence Maker は、3つの特色を持っています。

 ひとつ目は、能動的な学習だということ。
 English Sentence Maker は書き込み式のテキストです。各Lesson ごとの解説を読み、そのあとに掲載されている日本文をご自身のノートもしくはkindle のノートブックなどに英語にして書き入れてください。その際に、知らない単語は調べたりせずに、日本語のまま英語の文の位置においてください。そうすることで、知っている単語、知らない単語を区別し、身に着けるべき単語を浮かび上がらせることが出来ます。

 ふたつ目は、どの文法事項を使うかの判断基準を身に着けられるということ。
 小・中・高校と長い間英語を学ぶために、多くに人々は英語の現在形、過去形などの文法事項を知っています。しかし、残念ながら、その文法事項をどういう場合に使えばよいかという判断基準を身に着けていません。

 たとえば、ここ何ヶ月かフットボールに夢中になっているということを伝えたい場合に使うべき時制は、現在形でしょうか? それとも現在進行形でしょうか? 迷われると思います。この知ってはいるけれども使い方に迷ってしまう文法事項を使う判断基準を各Lesson ごとの解説でくわしく説明しています。それを理解することで、英語を使う際に十全にあなたの感情や意見、思っていることを伝えることが出来るようになります。

 みっつ目は、英語を英語で考えることが出来るようになるということ。
 English Sentence Maker は日本語を英語にしていくことで、英語を習得していくテキストです。しかも、どういうときに、どういうことを言いたいときに、どの文法事項を使えばよいかという判断基準が出来ていくために、日本語の文字面を英語に移していくのではなく、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを英語にするというスキルを身に着けることが出来ます。頭の中のイメージから英語を作ることが出来るということは、そこに日本語は介在しません。つまり、英語を英語で考えることが出来るようになるのです。

具体的には、

私は彼が来るだろうことを知っていた。

という日本語を英語にする際には、日本語の文字面を英語に移していくと、

I knew that he will come.

と、しがちです。「知っていた」なのでknew、「来るだろう」なのでwill comeというわけです。しかし、よく考えてください。「彼が来るだろう」というのは、「私が知っていた」過去の時点のことです。であれば、「彼が来るだろう」と書いてあっても、過去から見た未来のwould を使って、would come としなければなりません。日本語をその字面のまま英語にしてはいけないのです。しかし、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを、判断基準をもって英語にすることが出来れば、問題はなくなります。頭の中に時の流れのイメージがあるために、

I knew that he would come.

という英文が難なく作れるようになります。 英文作成力や速読力を付けたいと思っておられる方ぜひ、手に取ってみてください。必ず、英語・英会話が出来るようになります。

☆「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト」および「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル」で使っている英文はすべて、Native English Speakerと協同で製作したものです。安心して、Native English Speakerの自然な英語を知り、習得してください。

新発売! 「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル6 時制・助動詞・名詞・副詞・仮定法・形容詞・比較  オープン問題」発売中!

English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト第10巻で、「比較」を扱いましたので、ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリルでも、比較を含めたトレーニングを行います。

 比較は「ある基準で比べる」表現ですが、知っておくと非常に表現の幅が広がります。思ったことを英語にする際に、便利ですのでここでマスターしてください。

【本文】

 このまえ花見をしたかと思えば、あっという間に4月も中旬です。遅ればせながら進学、新社会人のみなさま、おめでとうございます。新しい環境、新しい人間関係に慣れられたころでしょうか?
 新社会人と言えば、就職して関西に行った私の教え子からこんな話を聞いたことがあります。
 なんでも、新人研修の一環で新しい製品の売込みをお得意様にしたらしいんですが、一通り売込みが終わった後に、お得意様から、
「考えておくよ」
 の一言。
 やったぁ、おれって才能あるじゃん、いきなり契約が取れそう と有頂天になったんだそうです。
 で、同行した研修役の先輩に、
「先輩、いつ返事を伺いに行きましょうか?」
 って言ったら、「あほかっ」とひとこと。
 何のことかわからずに怪訝な顔をしていると、関西では「考えておくよ」というのは断りの言葉だと教えてくれたとか。
 なるほど、柔らかに波風を立てないようにする関西風のやり方なんだなぁっと感心です。意思表示のやり方は東京より奥が深い(笑)
 とはいっても、東京の意思表示に深みがないかというとそうでもなくて(笑)、大学卒業して初めて就職した進学塾は、東京の下町にあったんで独特の意思表示する人がいました。それはそれで、困った覚えがあります(泪)

「徳田君は、どこに住んでるの?」
「今は吉祥寺ですけど、今度、行徳に引っ越します。会社に近い方がいいんで」
「なんだ、川向うから川向うじゃないか、川向うなんて人の住むところじゃないね。お江戸に住まないとダメだよ。まぁ、と言ったってここも0メートル地帯で人の住むとこじゃないけどね」
「はぁ」
 という具合。どう反応していいかわからない。けなされているような気もするけど、冗談を言われているような気もする。
「はぁ、じゃないよぉ、はぁじゃ。新入社員なんだから元気よくしないとね。元気のない新入社員なんて碌なもんじゃない。まっ、しかし、会社の近くに住もうなんてのはいい心がけだ」
 って、ようやくと最後に言いたいことらしい言葉が出てくる。褒めようと思って、それがストレートに出てこなくて、いろいろぐるぐる話をしてからやっと、照れくさい言葉が出てくるんです。
 なんなんだ、この人はと初めは思いましたが、周りの人から話を聞いて納得がいく。この人は生まれも育ちも東京の住吉で、三代前づついての「ちゃきちゃきの江戸っ子」ってやつだったんです。で、荒っぽいきつい断定的な言葉で、自分を悪く見せとかないと本音が言えないらしい。柔らかに波風立てないようにする関西風のやり方とは正反対に、意思表示がぼけていて九州の山猿の私としては意思疎通に手古ずりました。
 そんなわけで、Native Japanese Speaker同士でも慣れない環境、新しい人間関係に手古ずるんですから、これがNative English Speakerとなるとなおさら。4月はNative English Speakerから相談を持ち掛けられることが多い月でした。

「ちょっと、徳さん、いいかな?」
「どうしたの?」
 徳田がキーボードを打つ手を止めて、Fredに向き直った。赤毛でスーツを着たNative English Speakerが徳田の隣に座る。
「これ、ここの会社の話じゃないんだけど、いい?」
「いいよ。べつに。どうしたの?」
「あのさぁ、おれこの前、中学校の先生に授業のやり方を変えてくれって頼んだんだよ」
 Fredは私立中学・高校でALTをしている。ALTは、アシスタント・ランゲージ・ティーチャーの略で日本人の英語の先生と一緒になって英語の指導をするのが主な仕事だった。
「……うん」
 徳田は、こいつはっきり言っちまったんじゃないだろうなぁと心配する。先生という人種は総じて自分のやり方に意見されることを嫌うからだ。
「おれさ、機械じゃないんだよ。授業の時に、ただ先生の言うとおりに発音することばっかりやらされて、まるでロボットみたい扱われるんだ。そんなのは、CDでも使ってやってもらって、おれはもっと生徒に話しかけたほうがいいと思うんだ。例えば、先生と掛け合いでもして、その会話に生徒が入ってくるとかさ。そのほうが生の英会話になるんだしね。いいやり方だと思わない?」
「まぁねぇ」
 と徳田は濁してこたえた。いいやり方だろうけど、日本人の英語教師はやりたがらないだろうなと推測がつく。英語教師として、生徒の前で恥はかきたくないのが人情だろう。英語が話せないのがばれると困るというわけだ。
「で、そうしたら、その先生、なんて言ったかというと『それは難しいわ ( It’s difficult. )』って言ったんだよ」
「なるほど、それで?」
 徳田は首を傾げる。なにを相談したいのかピンとこない。
「それが先週の話なんだけど、今日聞いてみたら、また同じこと言ううんだよ。『それは難しいわ ( It’s difficult. )』って。ねぇ、これってどういうこと?」

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