夕暮れカモメ東雲の街に着く

 冷たい人がいる。雨は降っていない。去年ちょっとだけやったバイトの源泉徴収票が今頃送られてきていて、そうか世の中もうすぐ年度末だもんね、と納得する。学生だった年度が終わる。レンタルショップで借りたい作品だけが借りられていて、ままならないなぁ、と思う。
 
 三宅唱監督の映画、「きみの鳥はうたえる」を久しぶりに見た。


「やっぱり誠実じゃない人なんだね」
「あ、そうだ、ゴムもってる?」


石橋静河が飲む角ハイボールの350ml(濃い目じゃないほう)
コンビニで買うブラックニッカ700ml


「あの、ベッドやなくてセックスの方です」
「恋愛って、なんなんですかね。なんでみんな嘘つきなんですかね」


あの映画で交わされる台詞や情景はどれも痛みを孕んでいて、場合によってはそれが誰かの鬱屈を抜栓することもある。本当にいい。それ以上の感想は多分、偉い人が色々書いているからそれでいい。北海道、函館という街は塩ラーメンと競馬場の街。それに夜景が綺麗らしい、ということはしっているのだけれど、空気を吸ってみたいな、あの街の空気に溶けてみたいなと思わされる。今の僕にはきっと少し冷たくて、すこし忘れたい匂いがしそうだなと思う。函館は多分行くこともないくらい遠いからテキトーに言うだけ。いつかどこかの街にしっかりと住むことがあるとすれば、その街のことを忘れたくなるまでは忘れないでいようと思う。


 特定の誰かの邪魔をしないように、誰かと一緒にいることは、少しずつ難しい。できないことはないけれど、往々にしてどこかで息が詰まる。誰の邪魔もしないように生きようと嘯いているほうがきっと生きやすいだろうなと思う。邪魔って一体なんだろう、誰かと一緒にいることとは、どういうことでしょうか。
 わからないけれど、わからないことをわからないなりにわかろうとすることはきっと大事なことだ。
 そんなこときっとみんな分かっている。題に意味はないけれど、きっと誰にも行くべきところがあって、帰る場所が見つかる。見つかるといいなと思う。僕にも。あなたにも。

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