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日本でダメリーマンだった男はタイでエリートになれたのか?

結論から言うと、会社による

タイでの1社目はIT系の企業に契約社員として入社した。部署のリーダーは日本人で、面接も彼がしてくれたのだが、その時の印象は「怖そうだが頼りになりそうな人」という感じだった。実際彼はその通りの人で、怒ると迫力があり怖いが、判断力やリーダーシップに優れていて、とても頼りになる人だった。

彼に対してはほとんど不満はなかったが、面談等で「〇〇さん(私の名前)、あなたの給料〇〇さん(優秀なタイ人社員)の3倍だよ。あなた1人で〇〇さん3人雇えるんだよ(だからもっとしっかり働け)」ということを何度か言われてそれが鬱陶しかった。この給料を提示したのは会社側で、僕はこれより安ければ入社しない気だった。もし入社後の僕を見て給料に見合わないと思うなら、減給か契約解除を申し出ればいい話だ。それを日本的な圧をかけるやり方であのように言うのは、古き悪しき日本の会社慣習以外の何物でもない。

しかしリーダーに対する不満は上記面談でのシーンだけだった。

そんなリーダーを支えていたのが、やはりこれまた日本人のサブリーダーだった。リーダーは厳しいが真っすぐで礼節をわきまえ、古臭さはあるが強い日本人像を体現したような人だったのに対し、サブリーダーは英語がうまく頭も切れるが、常に打算的で保身的で処世術に長け、そして何を考えているのかわからないような人だった。

僕はこのサブリーダーからパワハラまがいの行為を1年近くにわたって受けた。その時に感じたのは、海外における日系企業に現地採用として勤めるということは、日本人の数が少ないが故にすごく狭いコミュニティであり、合わない上司や同僚と一緒になった時に逃げ場がないということ。

しかし日系企業で日本人として働いている以上、タイ人のように気に入らなければすぐに辞めるという発想には至らない。

リーダーもサブリーダーも僕と同じ現地採用であったが、最初からマネージメントのポジションで入社しており、これまでのキャリアも社会人としてのスキルも僕やその他の日本人現地採用とは違うレベルであった。そのため、彼らは現地採用でありながら駐在員に近いマインドを持っていた。

しかし人間関係の点でいうと悪いことばかりでもなく、同じぺーぺーの現地採用同士で仲良くなったり、タイ人社員と仲良くなれたことはよかった。この会社は大手だったこともあり、入社してくるタイ人社員は有名大学を卒業して英語が堪能な子ばかりだった。一方で、日本人現地採用は、上記のリーダー、サブリーダー以外は日本ではうだつのあがらないようなダメリーマンばかりなので、能力でいえばタイ人の方が上だったように思う。情けない話だが。

そんなわけで悶々としていたところへある日、新しいプロジェクト起ち上げにつき異動の話を聞きつけて僕は真っ先に手をあげた。

異動後は上記のリーダー、サブリーダーとも離れ、日本から出向してきたグループ会社の日本人駐在員を上司に迎え働くことになった。別会社ということもあり彼らは部下を威圧するようなことは全くなく、むしろこちらが申し訳なくなるくらい気を遣ってくれた。

そんな上司の期待に応えたいところだったが、共に働いた他のタイ人社員の優秀さと比較すると、ダメリーマンである僕のダメっぷりが徐々に目立つようになった。これが日本で同じ日本人同士で働いているのならさほど問題ないのだが、僕はタイの地でタイ人の給料の2.5倍ほどで働いていたのでいかにもコスパが悪い。

いたたまれなくなり、僕は退職した。

現在タイで2社目。今もこの会社で働いているので詳細は書かないが、1社目は親会社が日本でも有数の大手企業、タイ人社員も優秀な人が集まっていたのに対し、今の会社は親会社はそこそこ(コロナ禍でやや経営が傾いている)、タイ人社員も並以下の社員が多い。そんな中にあり、僕はエリートというほどではないが、特段ダメリーマンというレッテルを貼られるようなこともなく、日々働いている。

要は、高校受験の時に意識したアレだ、背伸びしてちょっといい高校に入ってそこで落ちこぼれになるか、底辺の学校でトップになるかみたいな話だ。

僕は転職してつくづくよかったと思ってる。最初の一行で述べたように、入社する会社によって、まわりの環境によって自分の立ち位置や評価がこんなにも変わるものかと思い知らされた。

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