満員電車の救世主
満員電車に乗って何が困るか、それは、空席に対する反応だ。
座れるに越したことはない、しかし席が空いた時の反応に人間性が現れるんじゃないかとドキドキして、モゴモゴした反応をしてしまうのだ。
どういうことか。
例えば満員電車に乗り込んで、つり革をもって立っているとする。
すると次の駅で、斜め前の人が立ち上がって降りようとしている。そして私と同じように空きそうになっているその席に意識を向けている人がいる。感じるのだ。
これはいくべきか、いかざるべきか。
そう思ったが最後、モゴモゴとした反応になってしまう。
こういった場合、往々にしてその席はいっ時空席になる。
混み合った満員電車の中でだ。
そうなってしまうと、近くに立っている人はタイミングを完全に逸し、座るに座れないことになる。
おおよそ複数人が、そのぽっかりと空いた席に意識を集中している。しかし一歩を踏み出さない。いや踏み出せない。
あるはずのないものを感じているのか、それともニュータイプなのか。
こういった場合、さっと座ってしまうか、どうぞ、と一声かければいいのかもしれない。お年寄りや妊婦さんがいればそうするべきだろう。
しかしである。
どうぞ、なんて言えない。
え?それあなたの席なんですか?と自らにクソリプを投げてしまうからだ。
いまだ自意識の塊なのだ。
そして訪れる、モゴモゴした時間。苦手でしかない。
満員電車の中で、空席を作っていることへの若干の罪悪感と、自らの自意識に挟まれてどうしていいかわからない。
いったい、いったいどうすればいいんだ!
「ああ!あそこ空いてるがな、すわろすわろ!ちょっとそこ座りますぅ~!」
一つはなれた出口から、おばちゃんの声がきこえる。
救世主ハズカム。
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