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何のために働くのか?|はなみちのビジレザ経営日記#7(バックナンバー)

<2017年12月11日に書いた記事です>

ビジネスレザーファクトリー(以下、ビジレザ)の「はなみち」こと、原口瑛子です。

前回のブログを書いたのが8月下旬。光陰矢の如し。あっという間に3ヶ月が過ぎました。

この3ヶ月で多くの出来事がありましたが、最大のイベントだったのは、10月初旬にメンバーと行ったバングラデシュスタディーツアー、通称BST!

今回はそのBSTを振り返りながら、私たちは何のために「働く」のか?というテーマで書きたいと思います。突然ですがあなたは何のために働いていますか?

12/5〜25の期間限定博多アミュエスト店

BST とは?

2014年に始まったビジレザは、2015年に初の直営店舗の天神店をオープン。その後、難波店川崎店品川店熊本店梅田店名古屋店梅田店広島空港店と、全国8店舗に拡大しました。

実は1店舗目である天神店がオープンした頃に、店舗メンバーと、こんな約束が交わされました。

「店舗の初期投資回収できたらバングラに行こう!」

店舗のメンバーはバングラのメンバーが作った商品を心を込めてお客さまに毎日届けてくれています。彼ら彼女らがビジレザの顔として最前線で頑張っている。

だからこそ、バングラの仲間を増やし続けられたと言っても過言ではありません。そして、どの店舗も早期に初期投資を回収することができました。

ですが、この約束はしばらく果たせませんでした。最大の理由はバングラの治安が不安定だったから。最も大きな出来事だったのは、2016年7月に起きたダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件でした。

当時、実は私は生産品質管理のサポートのために、バングラ工場で働いていました。事件の被害者が日本人含む外国人だったこともあり、私たち日本人メンバーは事件直後に日本に緊急帰国することになりました。

その事件以降、私はバングラに戻れず、ビジレザとしては、一緒にバングラに行くという店舗のメンバーとの約束を、果たせませんでした。

当然ですが、メンバーの命が最も大切。絶対にメンバーを危険な目に合わせるわけにはいきません。そして時は経ち、2017年も後半に。

バングラの治安も安定したため、ついにみんなとの約束を果たす時がきました。今回の渡航したメンバーは全部で19人。ほとんどのメンバーが初のバングラ!

福岡空港にて

BSTの目的とは?

バングラへの出発前、ファシリテーターのチャーリーとともに、BSTの目的を三つ設定しました。

一つ目は事業の目的をより深く理解すること。
二つ目はバングラという国をより深く理解すること。
三つ目はバングラの仲間をより深く理解すること。

最も大切だと考えていたのは、一つ目の目的でした。

ビジレザは、バングラの雇用を増やすために始まった事業です。バングラでは、貧しい家庭環境の人々も多く、働いた経験がない、教育を受けてないという理由から、働けない人々が多く存在しています。

シングルマザーや障害を持つ人々は、特に他の工場では採用されにくく、さらに採用された場合も、労働差別を受けやすいという課題があります。

バングラの工場では、そういった厳しい境遇で生きる人々を、優先的に正社員として採用し、その本人やその家族の生活を支えていきたいと考えています。

この事業の目的こそが通常のビジネスとは違うこと。ブランドの最前線で働く店舗メンバーにも、実際の目で見て、感じて、より深く理解してほしい。

バングラで見た景色がみんなの共通認識・共通言語となるBSTにしたい。そう決めて、いざバングラへ。

修学旅行並みにはしゃぐメンバー

バングラの仲間たちが待っていた!

ダッカから車で約40分。アシュリアという地域に工場があります。今夏、これまでの工場では生産キャパが追い付かず、メンバーも入りきれなくなったため、約1,000人が働くことができる新工場に移転しました。

新工場にもうすぐ到着…というとこで急に季節外れの大雨が降ってきました。車から外の風景を眺めていると、何やら工場へと続く長い長い行列が。

車を降りてよくよく見てみると、なんと約800人のメンバーたちが、土砂降りの中で私達の到着を待ってくれていたのです!

大雨の中で待ってくれていた
大号泣を笑顔で見守ってくれている

事業の目的を知る

工場に入りマネジメントチームとの交流がスタート。現在、工場のメンバーの約800名を率いているのが、このマネジメントチームのメンバーです。

 マネジメントチームと

マネジメントチームに、工場の生産ラインを案内してもらいました。店舗メンバーにとって、実際の生産工程を見るのは初めてのこと。

毎日店頭で販売する商品が、想像以上に多くの工程と時間をかけて、一つの形になっているということが、店舗メンバーにとっては、印象的だったよう。

生産工程を経験
生産工程を経験

生産工程を見ながら、ラインメンバーに話を聞きました。「この工場で働き始めたきっかけは?」「ここで働き始めて何が変わった?」「あなたの夢は何?」

障害があるから、他の工場では雇ってくれなかった。だけどこの工場では雇ってくれて、座って仕事ができるようにしてくれる。メンバーも家族のように接してくれるから、とても感謝している。

足に障がいのあるメンバーの答え

今まで働いたことがなく、他の工場では面接さえしてくれなかった。でもこの工場では自分の家庭状況を聞いて雇ってくれた。今は子どもにご飯を食べさせることができるている。子どもの将来のためにお金を貯めたい。

シングルマザーのメンバーの答え

他の工場では、セクハラや労働差別があったけど、この工場では一切なくて、安心して働くことができている。将来自分の子どもも、ここで働いて欲しい。

他の工場で働いていた女性メンバーの答え

メンバーの言葉を聞きながら、改めてビジレザの事業の目的を実感しました。

 ラインメンバーの一人

バングラという国を知る

今回のBSTでは、革の鞣し工場にも見学に。バングラで革と言うと、必ず出てくるワードは、ハザリバーグという地域です。

1970年代から革の加工工場が集まる地域ですが、排水処理が未整備で、鞣しの過程で使用される化学物質が川に流れ出る環境汚染や、労働者の健康被害、児童労働など、各課題がメディアで報道されていた地域。

数年前から政府は革の加工工場に立退勧告を出し、現在は多くの鞣し工場が移転しています。今回は、その移転先の工場を見学に。なお、ビジレザの革も移転先の鞣し工場から調達しています。

移転先の鞣し工場では、環境汚染や労働問題の改善が進んでおり、ビジレザもお客さまに安心して商品をお届けできることを再確認できました。

鞣し工場にて

その他、ダッカにあるフリースクールも見学しました。教育費が払えない貧しい家庭の子ども達が無料で学ぶことができる学校です。

お話を聞くと、バングラでは子ども達は幼い頃から働き手と捉えられ、女の子は学校よりも早く結婚させたいと考える、貧しい家庭も多く存在するとのこと。

バングラのさまざまな社会問題に触れ、ビジレザがアプローチする雇用創出という視点だけでなく、より広い視点でメンバーと意見を交わすことができました。

フリースクールにて

ビジレザは開始当初から、雇用創出は社会問題を解決するファーストステップだと考えていました。工場では彼らに働く場を提供するだけでなく、住居や教育医療など備えたボーダレスビレッジを作りたい。

工場がスタートして約3年。新工場では、少しずつその取り組みが始まっています。

例えば、ドクタールームの完備。ラインメンバーの多くは、これまで貧しい生活をしていたため、慢性的に栄養不足のメンバーも多く、熱中症などで倒れるメンバーも多くいます。そのためのドクタールーム。

念願のキッズルームも準備中でした。工場は、6割が女性で、子どもがいるメンバーも多くいます。その子ども達を預けられるキッズルーム。年内スタート予定で預けたいと手を挙げるメンバーがとても多いとか。

実はこういう労働環境の工場は周辺にはありません。バングラの工場のロールモデルになろう。これがバングラの工場のメンバー達が目指している未来です。

 キッズルームはもうすぐ完成

メンバーを知る

工場見学2日目は、店舗メンバーも一つの商品を作ってみることに。見学では簡単に思えた生産工程も自分で作ってみると…実は難しい!自分の手で作ってみることで、商品をより深く理解することができました。

悪戦苦闘してようやく一つの商品が完成。みんな大感動でした。ラインメンバーの高い技術やものづくりへのこだわりを知った店舗メンバー。バングラメンバーとの交流を経て、お互いの理解が深まってきました。

出来上がった商品とメンバー

私たちの滞在期間中、バングラメンバー達はずっと私たちに付き添い、様々なサポートをしてくれました。

夜遅くに空港に迎えに来てくれたメンバー。道を歩く時にさり気なくサポートしてくれたメンバー。工程を一生懸命伝えてくれたメンバー。言葉は通じないけど、いつも笑ってくれていたメンバー。

短い滞在ではありましたが、すべては書ききれないほどに、お互いのことを知ることができた時間でした。

 集合写真

私たちは何のために働くのか?

社会人になると一日の多くの時間を働いて過ごしています。私たちは何のために働いているのでしょうか?

私はボーダレスでジョインして明確に答えられるようになりました。社会問題を解決するため。ビジレザにおいては、バングラの雇用を増やすため。

正直、お金も地位も興味ありません。そう言うと、「何を綺麗事を」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、本当です。

それよりも、社会に対してどんなインパクトを残していけるのか?つまり、ソーシャルインパクトこそが、私にとっては重要です。

工場の様子

今回みんなと行ったBSTを通して、本当に多くの学びがありました。事業の目的を達成するために今の私たちはどんなアクションを起こすべきなのか?

帰りのトランジットの空港では、参加したメンバーひとりひとりが、自分のアクションプランを設定し、みんなの前で発表しました。

私は、決めました。それは、ビジレザで働くみんなが同じ目的を持って同じ方向に向かって走ることができるように、このBSTを定期的に開催すること。

早速、2017年11月にBST2、2018年1月にBST3、2018年2月にBST4を開催することを決定しました。

明確な目的があれば、走る方向が決まり、努力の矛先が決まる。明確な目標があれば、目標と今の自分との距離が分かり、必要な努力の量が決まる。

ソーシャルインパクトを考えるとまだまだビジレザは発展途上。だからこそ事業の目的を見失わずに、しっかりと地に足をつけて走り続けたいと考えています。

世界中の働く人々の明るい未来をつくれるように。

空港でアクションプランを発表

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