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邂逅 

八月、東京の空はよく晴れていて鳥や蝉の声が響いていた。
まさに夏と言うべき日だ。
そんな本来であれば喜ぶべき美しいはずの日に僕は疎ましさを感じていた。

「僕は人を愛せない」

たった一つ、その感情が僕の心の奥底に死ぬまで解けない呪いとして沈澱していた。

そんな時一人の女性に出会った。いや、今思えば出会うべくして出会ったと言うべきだろうか。
しかし、その時の第一印象は「怖い」だった。
全てがミステリアス、深入りは危険だ、この女には何かある。気を抜けば全てを暴かれ狂わされてしまうだろう。と

水晶ですら敵わない美しい眼。年不相応な大人びた顔立ち。
百合と言うべきか、いや、不意に枯れ落ちる椿のような儚さがある。
ただ、ただ美しい。眺めていたい。

しかし、それは感想であって好意ではなかった。
花を見て美しいと感じるものと同じだろう。

そして街を歩きながら警戒と陰鬱を心に抱きながら彼女について知ろうとした。
探りを入れつつ紐解こうとしていった。
意外にも彼女はそれに対してそれほど拒むことなく話をしてくれる。

しくじったと思った。好意を抱いてはいけないと思っていてもそれすらも打ち砕く気高さ。
知れば知るほどに僕は彼女に魅了されていった。
彼女の持つ譲れない考え方、自分の欲求に素直で人間らしく、美しい生き方。


ああ、もう文章なんてどうだっていい、読みやすさとかも関係ない。僕はただ
「好き」になったんだ

彼女の持つ闇、痛み悲しみ苦しみ全てを知りたいんだ。
僕は溺れたい、大きなコンプレックスや悲しみを彼女は理解してくれる
僕が僕を嫌っても受け入れてくれるだろう。
闇に光が見えた。少しだが愛の糸口が見えた。

君は鍵であって光なんだ、だから僕はずっと君を見ていたい
そして僕を見ていて欲しい。

だから、強く、美しく、今を生きて。






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