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雨の中でダンスを踊れ。

昔、私の家には、みつはしちかこさんの漫画本「小さな恋の物語」が何冊かあった。私の姉が好きだったのだ。それで私が小中学生のころだったか、暇なときにパラパラと何度となく読んでいたのだった。

もともと私はそのイラスト(見れば誰もが知ってると思う。チッチとサリーが有名かな。)が好きだったので、夢中になるほどではなかったけれど、読むとほんわかと優しい気持ちになったものだ。

先日、図書館に行ったときのこと。3冊ほど借りる本を決めて、受付に持って行こうとしたとき、パッとみつはしちかこさんのあのチッチのイラストの本が目に飛び込んできて、思わず「懐かしぃ~!」って気持ちなって借りたのだった。

本のタイトルは「ひとりぼっちの幸せ」。漫画ではなくエッセイだ。私はそのイラストのイメージからなんとなく、毎日、幸せにのんびりと暮らしているような方だと思っていた。(もちろん、私の勝手なイメージですが。)

でも違っていた。うつ病を患ったり、大きな病気やスランプに陥ったりと、そのイラストのイメージとはだいぶかけ離れたものだった。もちろん、その性格は、チッチやサリーのように、とても優しいものだ。つくづく人の人生というものは、他人が勝手に想像するほど、単純なものではないのだとわかる。

その本の中でとても素敵なことが書かれてあったので紹介したいと思う。

いろいろと制約があっても「雨の中でダンスダンス」ですよ。私、この言葉が気に入ってるんです。ハーブ研究家のペニシア・スタンリー・スミスさんという方がテレビで言ってたこと。「人生は嵐が通り過ぎるのを待つためにあるのではない。雨の中でダンスを踊れ」どんなに悪いことがあっても、悪い中での喜びがある。雨の中でダンスができる力を持て、と。 
みつはしちかこ 「ひとりぼっちの幸せ」より。

嵐が来たら、通り過ぎるのを待つのが当たり前だと思っていた。もちろん、現実にはそのほうがいいのだと思う、けれども、この人生においては、きっと違う。ただ、待つのではなく、あえてその中でダンスを踊ることも大切なのだと、彼女は彼女の好きな言葉を語っている。

小心者の私としては、おぉ、って思った。なんて詩的な、それでいて素敵な言葉なんだろう。人生はどちらかというと、急がずゆっくりと流れてゆくほうがいいと私は思っている。それは間違いないと思う。けれども雨の中でダンスを踊るのも、時として必要なことなのだ。彼女がその言葉の中で伝えたいことは、恐らくただ、じっと待つことではなく行動することが、人生を豊かにするということなのだろう。人に心があり、手足があるのは間違いなく、そのためだ。

「悪い中での幸せがある」この想いは私も同じだ。同じ思いの人を見つけると本当にうれしい。もちろん、私も誰かの言葉から知り得たものだけれども、こんなふうに同じ想いを言葉や文字で伝える人と、私は一緒に手を取って伝えたいと思うのだ。

彼女の本にはこんな言葉も書いてあった。長いことお客さんと接する仕事をしている私としては「そうだよなぁ」とつくづく思った。

美しい顔というのは、美しい表情なのではないのかと思います。心が豊かでその時々の表情を生き生きと映し出す人。

私もそれこそが、美しい人なのだと実感する。もちろん、接客業では、お客さんだけでなく、接客する側にも同じことが言えるのだけど。これは仕事だけじゃなく、普段の生活においても、いつも美しい表情でいたいものだ。

さて、時折降る雨の中、私はどうするか?ダンスが苦手な(というか踊れない)私としてはとりあえず、明るく元気な表情で、この道を走ってゆくとするかな。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一