素敵な風景とバックミラーの彼女。

画像1 車を運転していて、素敵な風景に出会うと「あぁ、写真に撮りたい!」ってよく思うようになった。いやいや、わき見運転にならないように注意しなきゃ!って、そのたび気を引き締める私がいる。いっそのこと、この目でシャッターが切れたらなぁ…なんて、バカなことを思う自分に思わず苦笑いしてしまう。
画像2 交差点の赤信号で車をとめる。何気なく右横に目をやると、古い喫茶店の木のドアに、かわいい木の枝がいくつも絡まって伸びている。まるで古い絵画のようだ。なんて美しいのだろう。たくさんの素敵な風景たち。でもそのすべてを、カメラで写真に撮れるわけじゃない。そう思うと、ほんの少しだけ切なくなる。
画像3 ふと、バックミラーに目をやると、後ろの車の若い女性が、私と同じ右横を見つめていた。前の車の私のその視線の先が気になったのだろうか?その風景を見つけて彼女も、なんだかうれしそうに見える。写真には撮れないけれども、彼女にもこの素敵な風景を見せてあげることができた。それだけで、うれしく思う私がなんだか可笑しく思えた。信号がやがて青に変わる。車をまた走らせる。しばらくして気がつけば、彼女の赤い車は、もう、バックミラーから消えていた。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一