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祭りと組写真について考える。

「写真で伝えるストーリー」


写真を撮る楽しさと、組み立てる楽しさ。祭りを撮ったあとは、どれだけ遅くに帰っても、朝がくるまでにチェックする。レタッチするのも好きだし、フォトセットを作るのも好き。

祭りにおいて、目の前にある出来事をどう捉え、どのように撮っていくか。表現というと言葉は大袈裟かもしれないけど、写真を組み立てていくことで「祭りのストーリー」が完成する。ストーリーを考えながら撮影することに加え、アウトプットする写真を組み立てるという一連の流れは、僕にとって祭り写真の醍醐味だ。

今回は、僕なりに考えてきた「祭りの組写真」についてまとめたいと思う。

祭りの組写真の目的

一年に一度しかない祭りの「その瞬間」は、とても尊い。祭りの起源は五穀豊穣や大漁祈願など祈りや感謝を目的としているものが多いため、なにか内なるものが結集して、みんなで祭りをつくりあげられているように感じる。

いちフォトグラファーとして、それらをドキュメンタリーとして記録し、"表現者"として発表する機会がある。その瞬間、その場所を共有できたことは、とても喜ばしく、価値のあることだと思っている。

だからこそ「伝える」ということにも重きをおきたい。目で見て、感じたことを写真を通じて伝えたいのだ。

それらを意識しておくだけで、被写体との向き合い方は変わった。いわゆる「強い写真」を撮ることだけに固執せずに、場面場面、祭り全体を見ながらストーリーを組み立てていく。この流れは、祭りを撮り続けることで僕が培ったものだ。

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SNSは組写真の鍛錬の場

写真を撮り始めた頃は「組写真」と聞くと、なにか凄いセンスを必要とするのではないかと、僕には関係ないものと思っていた(笑)それでも色々なSNSに手を出していくことで、僕は自然と苦手意識がなくなっていったように思う。

SNSによって1セットに並べられる写真の枚数は以下のように異なる。それは鍛錬する上でとても良い機会で、並べられる枚数=最低限必要な枚数として考えられるので、どういったシーンの写真があれば組写真としてうまくまとめられるか、逆算して撮っていくこともできる。また、それぞれ最大枚数が違うことで応用も効かせることができる。

・Twitter → 最大4枚
・Instagram → 最大10枚
・Tumblr → 最大10枚
・Weibo → 9枚以上 など
(2020年4月時点)

この反復は、きっとフォトブックをつくるときや、展示をするときにも役立つと思う。組み立てた写真は、実際に構成を考えられた写真でもあるので、まとまりが必要な場合はきっと生かせるはずだ(特にTumblrはレイアウトも多少調整できるのでオススメ)。

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祭りの組写真のポイント

ストーリー性を重視した組写真を構成する上で、僕は写真ごとに「メイン」と「サブ」を切り分けている。

ここでの「メイン」というのは、被写体やカラーなどにインパクトがあるもの。単写真として祭り全体の雰囲気を伝えることができたり、祭りの一番の見所、決定的瞬間を捉えたような写真も該当する。

逆にここでの「サブ」というのは、ストーリーを組み立てる上での「装飾」だ。祭りの「情景」や「雰囲気」を伝えるようなもので、メインの被写体ではなく、周り全体を見渡したときに撮ったものが多い。組写真として、一枚一枚を繋げる要素もあるので、「サブ」という言葉に反して、ある意味でセンスが問われる重要な役割を果たす。

強い写真ばかりを並べると、まるで単写真の集合体のような形になってしまうので、メインとサブ写真の使い分け、メリハリとバランスを意識することでストーリーの流れをつくり、鑑賞していただく方にも伝わりやすくなるのではないかと僕は考えている。

各SNS上のレイアウトにもよるけど、被写体のアップもあれば引きもあったり、カラーもライトもあればダークもあったり、対比をうまく使いながら交互に構成することも見栄え上は有効だと思う。

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一つのメソッドを生かす

祭りといっても、祭礼や儀式など形は様々。観光客をたくさん呼び込むような派手な祭りもあれば、地元の人たちのみで行う神事もある。長くSNSで写真をアウトプットしていれば、どういった写真がリアクションが良いとか悪いとか、わかってきてしまう。しかしそれはあくまでもSNS。祭りを撮り続けるフォトグラファーとして、それらに左右されずにストーリーを作り上げることを強く意識したい。

ストーリーの組み立てを繰り返した結果、撮影手法において一つのメソッドが出来上がった。このメソッドは何が起こるかわからない祭りを撮る上での「着眼点」ともなる。特に初めていく祭りは、祭りの流れがわかりにくいのでなかなか撮れ高がないと言われているが、祭りとの向き合い方や培った経験により、このメソッドが非常に役立つ。ねらいどころが頭の中にあるので、撮り方に加えて、組み立て方にも生かしていける。

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表現の幅を広げよう

結局は「たくさん撮って、たくさん組んでみる」という繰り返しになると思うのだけど、意識するだけできっともっと写真が楽しくなるし、表現の幅も広がるのではないかと思う。また、祭りは特に一瞬一瞬、目の前の出来事が変わるので、撮り方やねらいどころが定まるだけでも、撮れ高に良い影響を与えてくれるだろう。僕がやってきたことが少しでも参考になれば、そんなに嬉しいことはない。

特にTwitterで多くの人がそうしているように「組写真」で魅せる機会が身近にあるというのは鍛錬する上でとても良い手段。タイムラインに出てきた写真はあっという間に消化されてしまうわけだけど、キャプション&並べられた写真の意図を考えながら鑑賞することは、成長する上でも有効だと思う。

今後祭りを撮りたいと思っている方には、ぜひストーリーを意識した組写真にも挑戦してみてほしい(←観たい)。僕自身も「組写真が得意」と言えるようになるまで精進していきたい。


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吉岡 栄一 Eiichi Yoshioka
Instagram:@tsukinoto
Twitter:@EiichiYoshioka
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