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ハラスメントの被害者を「悪者」にしたてあげる組織の「合理的な」論理
近年ハラスメントに対する対応はどんな組織でも厳しくはなっていますが、それは「抑えきれないもの」「図らずも外部に漏れてしまったもの」だけであって、全てのハラスメントが明るみに出るわけではありません。
自身もこれまで「ハラスメント(という言葉が浸透する前から)」を受けたことがありますが、対応されたことはなく、その時の会社の言い分は
・彼を処分すると彼の昇進を推した重役の面子が潰れる
・彼の上司が、彼を「数字が作れる人間」とみなしており組織としては有用と判断
・ハラスメントと認定するに至らない
などでした。
話を単純化すると
・A:ハラスメント被害者
・B:ハラスメント加害者
・C:B(ハラスメント加害者)の上司
という登場人物がいたとしたときに、
・Bをハラスメントとして処分すると、Cの監督責任に問われる可能性もあり、またCにとってBは有用であるため、Aを「悪者」にしてBを救済する
ということが起こります。起こりますと言うより、これが「組織の”合理的な”論理」というわけです。
もう少し視野を広げてみると、会社というのはなんらかの利益を生み出して存続、成長していく組織体です。そこには多くの人間がおり、それぞれの職務を全うするのだが、一部の人間は
・会社の利益を生み出す重要な人物
とされるわけです。それはエース営業かもしれないし、スーパーコンサルタントかもしれません。つまり
・会社の利益を生み出すのに役立つ人間
であるわけです。
組織の論理としてはもちろん、そういった利益を生み出す人間を大事にしますし、手放したくもないでしょう。
ここで、一つの思考実験をしてみましょう。
・会社の利益を生み出す人間が、ハラスメント加害者である場合、どうすれば一番「会社の利益」を損なわないか
倫理観を無視して回答するなら、
・ハラスメントは注意しつつも、これまで通りあるいはそれ以上に「会社の利益」を生んでもらう
ということになるのではないでしょうか。これが
・組織の「合理的な」論理
となるわけです。組織としての目的は「ハラスメントをなくすこと」ではなく、あくまで「利益を追求すること」にあります。その目的を鑑みたときに、ハラスメント加害者を処罰し、つまり利益を生み出す活動を制限し、ハラスメント対応を優先することが、できるか?という問題です。
極端に言えば、
・ハラスメントは完全になくなったが、利益を生み出す人間が減り会社が立ち行かない
という事態に向かう勇気が会社にあるかどうか、ということでもあります。
ハラスメントがなくならない理由は
・組織は組織の力学を保つ方向に動くので、バランスを崩す勇気がない
ということに尽きるでしょう。特にハラスメントの問題は「加害者にその意識がない」ことが多く見受けられます。
・こんなんでハラスメントなんて言われたらやってられない
みたいな発言ですね。
・自分はなんとも思わないから、他人もなんとも思わないのが正しい
という主張です。それを「組織として対応」することが求められるわけですが、組織の権力者はたいてい
・役職の在る人物
となります。つまりその地位を得た理由があり、その地位にいる理由がある人たちなわけで、その根幹を揺るがすような判断、言ってみれば
・組織の力学を崩す
判断ができるわけがありません。特に古い体質の業界、年長者が役職に多い組織、などはその傾向が強いでしょう。
まとめます。
ハラスメントという言葉が普及して、
・誰かを不快にさせる行動は厳に慎むべき
と(建前は)言われ始めたわけですが、組織の目的である「利益の追求」と相容れない状況だった場合、どちらを優先させるか?と問われたら、多くの組織が
・利益の追求
を選択し、ハラスメント問題は「握りつぶす」。これはまた、組織という集合体の話ではなく、組織の中で地位を持つ人達の保身からくる「組織の力学」の保護である、ということです。
ジャニーズ事務所の問題も、ジャニー喜多川氏の死後に問題化したのは、当人が持つ影響力、その影響力を利用した営利活動、そういった大きな集合体の「組織の力学」が、当人不在とならなければ崩れなかったと見ることができるのではないでしょうか。
そのような大きな圧力を跳ね返すには、個人としては体力も精神力も発信力も問われるところで、現状では「逃げる」一択なのが残念なところです。せめて「ここはヤバい」「こいつはヤバい」という情報が出せる場所があればよいのでしょうけれど。
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