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「弘法筆を選ばず」を目指すために必要なコト

日本の諺に「弘法筆を選ばず」というものがあります。説明不要とは思いますが、

・何かしらの達人はその道具によって実力が変わったりしない

というような意味です。

私は楽器を弾くので楽器の例えで恐縮ですが、過去にたくさんのミュージシャンを見てきました。その中でも「上手い」と思う人はだいたい良い楽器を使っているのですが、仮に楽器を安物に替えてもやはり上手かったりしました。一番記憶に残っているのは北京滞在時の二胡の先生です。当時私は200元ほどの安い楽器で二胡を始め、少し上手になったときに先生に二胡を選んでもらいました。その時先生が選んでくれたのは1500元ほどの二胡でした。先生が試奏してくれた音が素晴らしく、これで間違いないと思いましたが、自分が出せる音は情けないほど貧相でした。その良い音を聞いたあとに、先生に200元の二胡を弾いてもらうと、たしかに1500元の二胡にはあらゆる面で及ばないのですが、自分で弾く音とは比べ物にならない良い音が出たものでした。

特にピアノは顕著だと思いますが、スタインウェイやヤマハなど世界でも認められているピアノをプロが弾くととんでもない音を出します。でもそういうプロがトイピアノを弾いても、やはりとんでもない音が出たりします。私は音楽を通じてこの「弘法筆を選ばず」を体感しました。

さて、ビジネスにおいて「弘法筆を選ばず」になれるかどうか。そのために必要なことは

・何はともあれ基礎体力(文章力・論理力・会話力・気配り・MS Office操作・体力)をつけること
・常に工夫するマインドを持つこと
・どんな仕事や作業でも複数の方法を考えること
・抽象化と具体化の往復
・知識を得たいと思う探究心

あたりではないでしょうか。一つずつ見ていきます。

・何はともあれ基礎体力(文章力・論理力・会話力・気配り・MS Office操作・体力)をつけること
若いうちに任せて貰える仕事の多くは「雑務」と感じることが多いと思います。しかし、この雑務をこなせる力=基礎体力がないと、より高度な仕事をこなすことは難しくなります。また、あらゆる「雑務」は「高度な仕事」を支える重要な役割でもあるので、できる限り全力で取り組むことをオススメします。

なぜ基礎体力が必要かというと、「目をつぶっていてもできること」を増やしていかないと、「頭を使う仕事」ができないということです。文章力で言えば=端的に要点を伝える能力、ですし、論理力で言えば=話の構成を聞き手に伝わりやすく構成する力、とも言えます。そういった「基礎」がないと、仮にとんでもなく素晴らしいアイデアなり論点なりを思いついたとしても、「伝わらない」つまり「無いことと同じ」になってしまいます。

ヒットやホームランを打てるバッターが筋トレをしたことがない、ということがないように、まずは足腰たる基礎体力をつけないと話が始まりません。

・常に工夫するマインドを持つこと
「言われたことを言われた通りにやる」ことさえ難しい新卒を経て、「言われたことは言われた通りできるようになる」時期を迎えます。このときにどれだけ「工夫」できるか。

例えば何かの調べ物を頼まれた時、いきなりキーワードをGoogleに叩き込むのは正しいでしょうか?そうではなく、

・求められている結論(及び仮説)設定
・結論を導き出すのに必要な情報の検討
・必要な情報を探すためのキーワード検討
・検索

の順番で、且つ時間配分も決めてやる方がより効率的ではないでしょうか。こういった工夫をすることで、作業を効率化出来ますし、また「自分で考える癖」が付きます。この癖がついてくると、「1を聴いて10を知る」かのように、「なにをすべきか」の組み立てが瞬時に思い浮かぶようになります。

逆に工夫をせずに漫然と言われたことだけやっていると、次の次元の仕事に行く準備ができないまま時間だけが過ぎることになります。

・どんな仕事や作業でも複数の方法を考えること
上述のように「作業の組み立て」を考える際に、一つではなく複数の方法を検討します。必ずしも最初に思いついた方法でうまくいくとは限らず、また頓挫してから考え直すのでは倍の時間がかかってしまいます。そうではなく、作業の組み立てにそれぞれ分岐を設けておき、

・A→BでだめならA→C
・A→C→DでだめならA→C→E

というように、方向転換出来るように前もって準備しておくわけです。これが出来るようになると、作業が止まることもなく、またどんな作業を依頼されても(或いはい自発的に行うにしても)迷うことなく設定した時間内に結論にたどり着くことが出来ます。

・抽象化と具体化の往復
あらゆる業界、あらゆる業種の人がよく「この業界(業種)は特殊だから」と言いますが、それは最末端のアウトプットだけを見た場合に限ります。たとえば数多くの業界業種で営まれている「ビジネス」はとうぜん「業界業種ごとに特殊化」してるとも言えますが、乱暴に言えば

・どんな業種業界でも「ある商品やサービスを生み出し」「原価を上回る価格で世に出し」「販売という形で金銭を得て」「利益分から人件費を賄い」「残った利益から投資する」

と言ってしまえば、ほぼどの業界でも同じことをしているわけです。もちろんこれは相当な「抽象化」をしているので、あっているとも言えるしあってないともいえる、ものだと思います。重要なのはこうした「抽象化」が出来るかどうか。

そして、一旦抽象化したものを再度具体化する能力も必要です。

・クルマ:製品をデザインし→部品メーカーに発注し→組み立て→販売店で販売し→中古車ディーラーで買い取り→中古車ディーラーで販売する
・スマホ:製品をデザインし→部品メーカーに発注し→組み立て→量販店やキャリアショップで販売し→メーカーで下取り買い取りをし→部品をリサイクル

このように考えると、もちろん細部を突き詰めれば異なるのですが、ビジネスの「共通点」と「差異」が明確になります。これは一度「抽象化」しているから再度の「具現化」が出来るわけで、この「抽象化」と「具現化」の行ったり来たりをする力をつけると、特定の業界「だけ」知ってる専門家ではなく、ビジネス全体を語れるビジネスマンになります。(もちろん特定産業に精通した専門家も必要かもしれませんが)

・知識を得たいと思う探究心
最後に、何事も「知りたい」と思わなければ行動しませんし、だいたい仕事が面白くなりません。「これってどうなんだろう」と思ったらとりあえず検索する(昔は図書館に行って専門書を漁るしかなかったのが便利になりました)癖をつけておくと良いと思います。そして頭の中で、或いはノートに、ラベリングをして収納し、INDEXをつけていつでも引き出せるストックにしておくと良いと思います。目についた単語であったり、誰かが論じているテーマだったり、自分なりに知識を整理しておくことで、知識が繋がったり新しいアイデアが生まれることもあるでしょう。

結論ですが、シンプルに言えば

・基礎体力をつけ、頭の使い方のパターンを増やし、レイヤーを意識した構造化をし、知識と知識を繋げて有用なものにする

ということになるでしょうか。どのようなテーマに対しても「抽象化と具体化」することによって普遍化した知識として蓄積できること、その上で様々な頭の使い方のパターンを習得することで扱える業界や業種やテーマを増やすこと、これが重要になってきます。

これまでは転職は基本的にするものではなく、一つの業界業種の専門家としてビジネスマンライフを終えるのが一般的でしたが、これからは「基礎力・応用力・探究心」で他業界にもチャレンジできる時代になっていくでしょう。その際に必要なことを忘れずに、日々試行錯誤することが、重要だと思います。

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