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Black Lotus / ブラックロータスのお話

前回の《セラの天使》に続いて、今回のお題は《Black Lotus》

前回で、

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左 : Black Lotus / 右 : セラの天使

最強カードとしての象徴が《Black Lotus》
キャラクターとしての象徴が《セラの天使》

と書いた。


前回の記事はこちら↓


能力は今更書くまでもないだろうけれども、

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《Black Lotus》
コスト:0
アーティファクト
(T),Black Lotusを生け贄に捧げる:好きな色1色のマナ3点を加える。
レア

《Black Lotus》というマジックの象徴


《Black Lotus》なくしてマジックを語るなかれ。
そう言える最高の1枚。
能力を書くまでもないと言ったものの、
案外と勘違いをしている人が多い事が1つ。

《Black Lotus》は1色を1つ選んで、
その選んだ色のマナが3つ出るのであって、
好きな色マナが3種1マナずつ出せるわけではない。

《Black Lotus》はパワー9の1つ。
パワー9とは、
「マジック黎明期にゲームバラスを崩すほどのカードパワーで、
 その後のマジックにも大きな影響を与えた9種のカード」

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《Black Lotus》,《Ancestral Recall》,《Time Walk》,
《Timetwister》,《Mox Pearl》,《Mox Sapphire》,
《Mox Jet》,《Mox Ruby》,《Mox Emerald》,

この9種。

《Black Lotus》はその中の最高峰のカード。

パワー9のアーティファクトカード6枚を場に出して、
合計マナ数8まででプレイ出来ないカードはある時まで無かったのだが、
メルカディアン・マスクスで登場した。
そのカード名は《ラッシュウッドの精霊/Rushwood Elemental》。
コストが緑緑緑緑緑なので、
《Black Lotus》+《Mox Emerald》で緑緑緑緑までしか用意出来ない。

α版(β版、Unlimited版を含む)のカードでは、
パワー9のアーティファクトカード6枚でプレイ出来ないカードは無い。
最初に9マナ以上のカードが出るのは、
アラビアンナイトで《アラジンのランプ/Aladdin's Lamp》(コスト10)
次にアンティキティの《サルディアの巨像/Colossus of Sardia》(コスト9)
その次がザ・ダークの《リバイアサン/Leviathan》(コスト5青青青青)
となっている。


圧倒的な価値

なんだか《Black Lotus》について書こうとすると今更な事ばかりだけれども、
《Black Lotus》は特別なカードを除けば最高値がつくカードであり、
公式大会ではヴィンテージで1枚制限、
非公式レギュレーションのオールドスクールでも1枚制限、
それ以外の遊び方では基本的には禁止。

値段も常に高値更新をし続けているカードで、
ほとんど値下がりをした事がない。

2019年の現在で、
Unlimited版で約100万円。
α版やβ版の状態の良いものでは300万円でも買えない。


まさにマジックの王様。
ヴィンテージ以外の競技をプレイして、
競技以外に興味がないというような人はともかく、
多くのプレイヤーの憧れの1枚。

イラストレーターはChristopher Rushさん。

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Christopher Rush氏


《稲妻/Lightning Bolt》
《渦まく知識/Brainstorm》
《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt》

といったトーナメント最高クラスのカードから、
なんと、
《1996 World Champion》
《Shichifukujin Dragon》

まで手掛けている方だ。

それどころか、
マジックの全てのマナ・シンボルと、
Magic the Gatheringのロゴのデザインまでしている。

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Magic the Gathering ロゴ

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マナ・シンボル

この事は知らない人も多いかもしれない。

《Black Lotus》と
マナ・シンボルのデザインと
Magic the Gatheringのロゴのデザイン、
つまりは、
マジックの全てがこの人のデザインから始まっているという事だ。

Christopher Rushさんなくしてマジックを語るなかれ。

と先ほどの言葉を置き換えても良い程の偉大な人だ。

ちなみに《セラの天使》のどちらかと言えば下位互換のような存在だが、
《大天使/Archangel》(ビジョンズ版)もChristopher Rushさんだ。
実は店主は200枚くらい持っている。

《Black Lotus》というカードをデザインしたわけではないにせよ、
Christopher Rushさんが《Black Lotus》を生み出した事は間違いない。
ただ、Christopher Rushさんは今から3年半近く前の、
2016年2月10日、50歳で亡くなってしまった。
まだまだマジックで活躍されてほしかった。

店主はfacebookでChristopher Rushさんとフレンドになっている。
現在Christopher Rushさんのfacebookは遺族の方の意向でアカウントは残っている。
アカウントは残ったままだが、フレンド申請は出来ないので、
一度フレンドから外すとフレンドにはなれない。
店主もずっとフレンドから外すつもりは無し。
この人の存在はマジックとともに歴史に残る方だろう。

なお、《Black Lotus》の値段を超えてしまいかねない特別カードは、
《1996 World Champion》
《Shichifukujin Dragon》
である。

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1996 World Champion

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Shichifukujin Dragon(七福神ドラゴン)


どちらも世界に1枚しかないとされているカードで、
《1996 World Champion》はおそらくコレクターの手に。
《Shichifukujin Dragon》は日本のホビージャパンが所有。


滅多な事ではお目にかかれないし、
値段をつける事すら難しいものだろう。

《Shichifukujin Dragon》はマジック25周年のマジック展の時に展示されている。
今後も記念行事の際に見られる可能性がある。

他にも《Black Lotus》に匹敵するような値段のカードはあるが、
《Black Lotus》のマジックを象徴するという立ち位置を崩す事は無いだろう。

《Black Lotus》は互換性のあるカードが作られたり、
パロディカード(《Blacker Lotus》のこと)が作られたりしているが、
Wizards of the Coast社がおかしな事にならない限りは、
上位互換を絶対に作らないだろうからだ。
さすがにこのカードの上位互換を作ったらマジックはおしまいだ。

そんな《Black Lotus》・・・というより、
α、β、Unlimitedに存在するレア全般に言える事なのだが、
だいたい世界に2万枚あると言われている。
この2万枚という数は、
発行されたカードから割り出すレアの期待値と思われる。

しかし、
仮に2万枚存在したとしても、
それはあくまで当時の発行枚数からの期待値で、
マジック発売から26年を迎える2019年で、
この枚数がこの世に残っているという事は無いだろう。

なんらかの理由でこの世から失われていない事などありえない。
26年もの時間で1枚もこの世から失われていないとは考えにくい。

前にCardshop Serraのこらむでも書いたような気がするけれども、
1割、つまり2000枚くらいは失われていると思ってもおかしくない。

それに、マジックに触り続けている人で、
《Black Lotus》を買った人はそんなに簡単に手放さないだろう。

引退する人やお金に困った人や急にお金が必要になった人ならともかく、
普通はマジックの象徴たるカードを手放すという思考には至らない。

マジックはキャッチコピーでは
「二千万人」
と言っているが、
実際のアクティブユーザー数はそんな数までは行かないはず。

これが実際の数字が10%の二百万人だとしても、
《Black Lotus》は全プレイヤーの1%にも行き渡らない。

いや、それどころか、0.5%もあやしい。
理由は上記のように失われているというだけではない。
1人の人が2枚以上持った場合だ。

マジックのゲームの公式ルールで、
《Black Lotus》が使えるのはヴィンテージのみ。
使える枚数は1枚制限なので、
普通なら1枚持っておけば満足・・・となりそうなものだが、
マジックの基本ルールはデッキに4枚。
その基本に従って4枚集める人もいるのだ。

確か、K-1で有名な佐竹雅昭さんは、
マジックのコレクターでもあり、(現役でコレクターをしているかは不明。)
以前にどこかで全てのカードを4枚ずつ集めるという話をしていた。

こういうコレクションをする人は、
1枚制限や禁止だという事は一切関係がない。
本人が集めると決めたら4枚集める。

こういう事を考えると、
現存する《Black Lotus》はあまり多くないのかもしれない。

《Black Lotus》の値段が上がる理由の1つはこんな所にもあるのだろう。

もっとも値上がりの一番大きい理由は、
プレイヤーが大人になって、
「学生の時、子供の時は買えなかったけど、
 社会人になった今なら!」

だと思っている。

お店を長年やってきて、
お客様の声からもそれを聞く事があるし、
お客様の年齢層も少しずつ少しずつ上がってきている。
もちろん学生プレイヤーも見るけれども、
やはり長く続けている方が多い事は間違いない。
中には途中で一度休眠期間があったが、
社会人になって再開したという人もいる。

こういった長くプレイヤーをしている人が
《Black Lotus》の購入を決断しているように感じる。

原画に対する価値

前回の《セラの天使》の時にも書いているが、
《Black Lotus》について、2019年に非常に驚くべき事が起きた。

《Black Lotus》の原画に
$6,500,000 USD(約7億850万円)

という値段をつけてネットで売るという人が現れたのだ。

買い手がついたという話は現時点で聞いていないので、
この値段は適正であるという情報ではない。

けれども、
億の値を下回るとは思えない。
これが5億なら買う!という人ならいるかもしれないし、
3億なら買う!という人がいるかもしれない。

この時の話題で、この販売者が、
「《セラの天使》を約3000万円で買いたい。」
とも言っているのだから、
《Black Lotus》がそれを下回る事はありえない。

どんなに低く見積もっても3倍以上。
どう考えても1億円以上だ。

この情報が流れた時、自分はとても嬉しかった。

《セラの天使》に約3000万がついた事ではなく、
《Black Lotus》の原画が現存し、
誰かが大切にしてくれている事を確認出来たからだ。

価格なんてハッキリ言ってしまえばどうでもよく、
マジックの象徴である
《Black Lotus》の原画、
《セラの天使》の原画(こちらは初代ではないが)、
どちらもこの世に残っている事が嬉しかった。

もちろん、欲しいかと言われたら、
《Black Lotus》の原画は欲しい。

とはいえ、自分の持つ全てのカードと原画を売り払っても買えないだろう。

最後に。


自分はもうマジックという文化は滅びないと思っているし、
自分がそれにたずさわる事で滅ぼさないという気持ちでもいる。

自分の死後もマジックは《Black Lotus》とともにあり続けるべきだとも。

全てのマジックプレイヤーに行き渡らない事はわかっているけれども、
このマジックを一生の趣味だと思える人ならば、
《Black Lotus》の入手はマジックの1つの目標にしても良いと思う。

それほどに魅力的で強いカードだ。

それに一生の趣味にするのなら、
この買い物は後悔をしない買い物だと思う。

少なくともここに買って一切後悔していない人が1人はいる。
買って後悔しなかったので3枚目にまで手を出した。

もちろん3枚買っても後悔していない。

デッキで使う用の1枚以外は、
大切に貸し金庫の中に保管している。

いつか4枚目を買ってしまうかもしれない。

ではまた。



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