アラヒフノウタ　〜団塊Jr.〜　＃４０

４０　　拳でコブラ

昭和キッズのオイラ
茨城ゴルフクラブで
毎年春に行われる
ダンロップオープンが
楽しみだった

それはテレビで見る
プロゴルファーが間近で
見ることができたから

ある年は青木功
深い前傾姿勢による
ハンドダウンのアドレス

リストを使ったパンチショットは
アイアンのフェースが
ボールにパチンと当たる

高く伸びるようにボールは舞い上がると
頂点を境に飛球は加速するように落ちていく
ストンとグリーン上で跳ねると
そこからスローモーションのように
ピンへと吸い寄せられていく

ボールが止まるのを合図に
ギャラリースタンドから
拍手が起きた

オイラは一緒に横で観ていた
父親の顔を確認

「なあ！」

と言う表情で父親がオイラを見返す
そんなトーナメント最終日で
春の日曜日を過ごしていた

別のある年はジャンボ尾崎
幅広のツータックのスラックス
ポッケに手をつっこみタバコを咥えた
襟足の長い髪型の男

灰皿を持つキャディーに
吸いかけのタバコを渡し
ドライバーを受け取る

ジャンボ尾崎はティーアップが高い
低い姿勢で構えダウンスイングから
上方向へアッパーブローで
豪快に振り上げる

想像を超えるスピンが掛かると
磁石と紐で巻き寄せているかのように
ズドンという重低音と共に
グリーン上でボールが
ピタッと止まる

その重低音を合図に
ギャラリースタンドから
歓声が湧き起こる

昭和キッズが真似したのはこの後
拳を作りクルッと前へ向ける

コブラのガッツポーズ

それがジャンボ尾崎

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