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プレゼントを渡すのが苦手だ。少しの隠し事もできないタイプ。盛大なサプライズをしようものなら胃に穴が空きそうになる。ああ、早く言ってしまいたい。母の日のプレゼントを渡すのは母の日当日、9日まで待つべきだったのだろう。案の定無理だった。もう全然待てなかった。というかもう昨日の時点からプレゼントを買ったことを仄めかしてしまった。「お花はいいかなと思ったんだけど、貰う側としてはどう思う?」とまで聞いている。馬鹿だなこの娘は。そんなことを答えさせるんじゃないよ。いつまで母親に甘えてんだ。母親は気を使ってくれたのか、いらない、という感じの返事をくれた。誘導尋問は良くないぞ娘。いつかは母親にカーネーションのでっかい花束プレゼントしてやれよ。わかったか。というかプレゼントくらい隠せるようになれ。な。プレゼントに選んだのはエプロン。即戦力ですぐにでも使ってほしくなった。というか私もお揃いで買ってしまったので、私がすぐに使いたかったというのもある。昼。母親がおもむろにキッチンに立って料理を作り始めた。私が何か作らなければ冷蔵庫にあるもので簡単に済ませてしまう母親が、自らキッチンに立っている。このタイミングを逃すわけにはいかない、と急いで自分の部屋に行き紙袋を掴み、フライパンに魚を並べている母に近づく。「料理するならこれ使って!」とカンタばりに手を伸ばす。いきなり何、という感じで軽くあしらい魚を並べ続ける母親。並べ終わるのを待つ私。フライパンを火にかけてやっとこっちを向いてくれた。あら、なにかしら、とやっと袋を開ける。「エプロン買ってくれたの!ありがとう〜!」と中々に良い反応だった。母親にプレゼントした中で一番反応が良かったかも知れない。早速付けてくれた。とても似合っている。母親はエプロンを見ながらニコニコしている。色合いがとても気に入ったみたいだ。「可愛かったから私も色違いで買ったの」と自分もエプロンを付ける。母親に選んだのはグレーにピンクの縁取り、私のは黄色にグレーの縁取り。どちらも自然派な色合いだ。店頭に並んでいたのはこの2色だけ。私たち親子にぴったりの2色だった。黄色のエプロンが私に似合いすぎて少し笑った。主役よりも似合ってしまった。ふたりでお揃いのエプロンをして、横に並んで料理をする。ああ、親子って感じ。いつまでもこんな日が続けばいいのに。今日はなにもないけど特別な一日だった。

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