守るべき約束って? 「コヴェナント/約束の救出」の感想
痛快娯楽作品のイメージが強いガイ・リッチー監督が初めて本格的に社会派なドラマを描いた戦争映画。
一気に戦場に引きずり込まれる緊迫感のあるオープニングから、話が一ミリたりとも横道に逸れず、シンプルで骨太なストーリーと臨場感あふれる戦闘シーンで、最後の最後まで手に汗握る展開。
監督のキャリア史上、「この物語を語りたい」という気合がもっとも現れた作品と言ってもいいかもしれない。
多用されるドローン撮影の異様な雰囲気が、手持ちカメラで見せる戦闘シーンと良い対比になっているけど、実際にドローンが軍事兵器としても応用されている点で作品にリアリズムを増すだけでなく、広い荒野にぽつんと映る人間の孤独感を強調していて、まるで「神の視点」を表しているように見えた。
タイトルの「Covenant」とは、「約束」や「契約」、「義務」を意味する言葉。
ダール・サリムがまるで「僧侶」のように演じるアフガン人通訳のアーメッドが、たった一人ぼっちになっても「神に見られている人間」として全うするべき「責任」や「約束」を強調していると見ると、とてもよく考えられた撮影方法だ。
そんな彼に救われたという「責任」が呪いのように降りかかるアメリカ兵士ジョンを、ジェイク・ギレンホールが狂気と人間味溢れる演技で演じていて、この二人の対比も良い。そこはガイ・リッチー監督、やっぱりバディ物が好き。
守られなかった約束と守るべき約束を巡る物語。
この物語を物語ること自体が、アフガニスタンに纏わる数々のエピソードや実態から着想を得た監督が自らに課した「義務」でもあるという点で、原題に「Guy Ritchie's The Covenant(ガイ・リッチーのコヴェナント)」と、自分の名前を冠している意味なのかもしれない。(スクリーンに表示された時、ちょっと「我が強すぎんか?」と笑ってしまったのは内緒)
めちゃくちゃオススメです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?