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#52【モンスターズ・ユニバーシティ】ep.2「一喜一憂する青春の音楽」

※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#52にあたる内容を再編集したものです。

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【モンスターズ・ユニバーシティについて】

 2013年公開
 
 監督:ダン・スキャンロン
 音楽:ランディ・ニューマン

作曲家作品

 サボテン・ブラザース
 レナードの朝
 マーヴェリック
 トイ・ストーリー
 ジャイアント・ピーチ
 カラー・オブ・ハート
 バグズ・ライフ
  トイ・ストーリー1、2、3、4
 ミート・ザ・ペアレンツ1、2
 モンスターズ・インク、モンスターズ・ユニバーシティ
 マイクとサリーの新車でGO!
 シービスケット
 カーズ
 プリンセスと魔法のキス

登場人物

 マイク・ワゾウスキ:
 1つ目で緑色のモンスターで、努力家。
 
 ジェームズ・P・サリバン(サリー):
 毛むくじゃらのモンスター。
 有名な怖がらせ屋の家系だが、才能にあぐらをかいている。
 
 ドン・カールトン:
 ウーズマ・カッパの部長。
 元セールスマン。
 
 スコット・スクイブルス(スクイシー):
 ウーズマ・カッパのメンバー。
 小柄な5つ目で、影が薄い。
 
 アート:
 ウーズマ・カッパのメンバー。
 紫の毛むくじゃらで、自由に形を変えられる。
 
 ペリー兄弟(テリとテリー):
 ウーズマ・カッパのメンバー。
 1つの体に2つの頭を持つ。
 
 ジョニー・ワシントン:
 ロアー・オメガ・ロアーのリーダー。
 サリーをRORに勧誘するが、成績が落ちると拒絶するようになる。
 
 ランドール・ボッグス(ランディ):
 紫のトカゲのようなモンスター。
 マイクのルームメイトで、ロアー・オメガ・ロアーのメンバーになる。
 
 ディーン・ハードスクラブル学長:
 MUの学長で、伝説の怖がらせ屋。
 マイクとサリーを怖がらせ学部から追放する。
 
 デレク・ナイト教授:
 怖がらせ学部の教授。


【前回の振り返り】

 前回は視点が違うことで起こる音楽的なギャップと音の優先度についてみてきました。
 視点が違うことで起こる音楽的なギャップとは、まとめるとモンスターを擬人化することで、音楽的な表現をあたかも人間にむけているかのようにしているというお話で、人間ではない見た目で、人間のようで違う思想を持つものに人間を感じさせるための工夫をたくさんしていました。
 特にはヒューマンコメディやホームコメディでよく耳にするストップアンドゴーという手法を使ったり、ソースミュージックを使っていたなんてお話を前半ではしました。
 後半では、音の優先度がしっかり定められていて、みている側に混乱を招かないよう丁寧に仕上げられていた、なんてお話をしました。
 セリフが優先されているのか、はたまた効果音なのか、音楽なのかをしっかりと定めることで、映画がグッと何を伝えたいのかがハッキリしますよね。

【青春には多彩な音楽ジャンル】

 今作には本当にたくさんのジャンルの音楽が演奏されています。
 やはり大きな理由はこの映画がコメディであり、アドベンチャーの要素を兼ね備えているからと言えます。
 ジャンルを一通り出していくと、こんなにもあります。
 まずは前回も話したヒーロー音楽にコメディ音楽ですね。
 スニーク音楽にバラードです。
 このバラードはポジティブなものもネガティブなものもありましたね。
 そしてホラー音楽、ヴィラン音楽もあります。
 その他にジャズ、マーチングバンド、ロック、ブルースなど音楽ジャンルもとても多彩でした。
 もちろんオーケストラでの演奏もありましたね。
 このように多岐にわたる音楽ジャンルが登場するのは、この映画の根底に青春というワードがあるからと捉えることもできます。
 映画音楽をジャンルの数を減らして全体のまとまりを出した場合、その映画のジャンルを強く印象づける効果(ホラーとか、サスペンスが多いですかね)、もしくは年齢層を高くする効果があります。
 多岐にわたるジャンルを演奏するということは、映画の演出として様々な感情が出てくることを意味します。
 様々な感情が入り混じることで、ストーリー性を増すことができる青春映画は相性がいいですよね。
 ワクワクしたり、ヘコんだり、楽しくなったり、悲しくなったりするのは青春の醍醐味ですもんね。
 ということで今回どのようなシーンでマイクさんとサリーさんが青春しているかを、振り返ってみたいと思います。
 まずなにをもってして青春なのかを定めないといけません。
 今回はマイクさんとサリーさんが怖がらせ屋に憧れるところから、目指して努力して立ちはだかる苦悩と育まれる友情までを青春と呼ぶことにしましょう。
 ということは怖がらせ屋に憧れて、目指して、努力して、挫折して、立ち直って、また努力して、うまくいかなくて、お互いが認めあって、うまくはいかなかったけど前向きなシーンが青春を感じるシーンになりますね。

青春を感じさせるシーン1

 前回も登場したのですが、まずは
 3:03
 モンターズインクの怖がらせ屋の登場ですね。
 このシーンではヒーロー音楽が演奏されていて、マイクさんが怖がらせ屋に憧れ、目指すシーンですね。
 これは青春の始まりといったシーンです。

青春を感じさせるシーン2

 その後の
 5:45
 マイクさんが立ち入り禁止である、人間の子供部屋に侵入して帰ってくるシーンです。
 この時にモンスターズユニバーシティの卒業生である現役の怖がらせ屋に褒めてもらうことで、その楽しさに触れていますね。
 ここで演奏されるのもヒーロー音楽です。
 しかしこのヒーロー音楽は、特殊能力に目覚めているようなヒーローではなく、スポーツ選手や大統領などの人間に対して演奏されるようなアメリカンヒーローとしての音楽が演奏されます。
 ということは、マイクさんは野球選手やサッカー選手に憧れる少年と同じように怖がらせ屋を目指すということですね。
 素晴らしいですね。
 ここでも擬人化という意味で人間のような感覚を共有することで、突飛に見せない工夫がされています。

青春を感じさせるシーン3

 つぎに、
 7:52
 モンスターズユニバーシティに到着するシーンです。
 初めの一歩を踏み出した時に演奏が始まります。
 ここはアドベンチャー音楽とマーチングの要素を混ぜたような音楽が演奏されます。
 AセクションとBセクションの構成で演奏されていて、管楽器と打楽器(主にスネアドラム)が行進曲のように演奏されていますが、弦楽器が入っているので完璧なマーチングではないですね。
 あくまでもマーチングの要素を入れながら、アドベンチャー音楽の要素としてAセクションとBセクションの構成をいれています。
 Aセクションにはヒロイックなテーマを入れて、Bセクションには叙情的なテーマを盛り込む定石を使うのは、マーチングバンドの要素をすんなりと入れるためと、モンスターズユニバーシティがどれだけワクワクが詰まった場所かをみせるための演出として機能しています。
 シーンも大学内を写し、個性豊かなモンスターたちの生活とまさに青春が詰まった感じがとてもいいですね。
 ちなみにこのシーンの冒頭でマイクさんが大学への第一歩を大切にしているのですが、それがのちに伏線となっているシーンが登場しますので、覚えておくとちょっと楽しいですよ。

青春を感じさせるシーン4

 12:41
 初授業に向かうシーンです。
 この時も大学に到着した時に演奏されていた楽曲の後半部というか、続きが演奏されます。
 名物の銅像に触ったり大きな講堂に感動したりと、胸高鳴っている状態ですね。

青春を感じさせるシーン5

 21:30
 ここではマイクさんがサリーさんに負けないために努力するシーンです。
 ここで演奏されるのはライブラリミュージックで、マーチフォース マーチング バンドというバンドのアルバム ライズ アップ 3曲目に収録されている「ゴスペル」という楽曲が演奏されます。
 とても爽快な楽曲で、マーチングバンドであることが大学という世界観にマッチしていますね。
 このシーンではマイクさんはとにかく努力を、サリーさんはパーティ三昧と対照的な性格を描きます。
 それをいわゆるダイジェストの方法で見せていますね。

青春を感じさせるシーン6

 そして
 29:52
 二人は怖がらせ学部を追い出され、絶叫ボンベ学部にうつったシーンです。
 これは挫折ですよね。
 ここでは悲しいバラードが演奏されます。
 マイクさんが暗い部屋に帰った時にピアノの演奏だけになるのが、とてもいいですね。

青春を感じさせるシーン7

 その後、
 30:34
 投げた本がポスターに当たって、剥がれた先に怖がらせ大会のポスターが出てくるシーンです。
 一気に明るさを取り戻し、そのまま大会のオープニングセレモニー?にシーンはうつります。

青春を感じさせるシーン8

 44:54
 一度は負けたと思った第1回戦を他チームの不正により繰り上がりで勝利したシーンです。
 このシーンはネガティブなバラードがうっすらと演奏されていたのですが、不正で繰り上がった時も演奏が盛り上がりますが、悲しいバラードが演奏されます。
 理由はチームが弱小であることと、学長から「運は尽きるわ。最後にはね」と厳しいお言葉を受けるからですね。

青春を感じさせるシーン9

 49:59
 第2回戦で静かにしなくてはならない図書館で逆にうるさくするシーンです。
 これは青春っぽいですね。
 ここでは非常に明るいマーチングバンドが、全員で図書館の外に逃げるシーンまで演奏されます。
 この後すぐのウーズマカッパのみんなが喜ぶシーンで演奏は再び戻ってきます。
 まさにウーズマカッパがノリに乗っている時ですね。
 とても青春っぽくていいですね。

青春を感じさせるシーン10

 つぎに
 53:43
 パーティに誘われ、その会場にあった歴代の怖がらせ大会優勝者の肖像画と優勝カップをマイクさんがみにいくシーンです。
 ここではヒロイックなバラードが演奏されます。
 まだ怖がらせ屋に強い憧れを持っているマイクさんが描かれていますね。

青春を感じさせるシーン11

 57:30
 壮絶な嫌がらせを受けて落ち込んだウーズマカッパ一同を連れて、モンスターズインクに忍び込むシーンです。
 ここではヒロイックな楽曲が演奏されます。
 やはり昔憧れた怖がらせ屋で、皆は口では諦めムードでも心に衝撃を受けたもの同士で集まっているので、ヒーローにでも会いにいくような、そんな楽曲が演奏されます。
 このシーンではファンファーレのようなヒーロー音楽からスニーク音楽を経て、とてもポジティブなバラードが演奏されますね。
 皆が昔から憧れていた、同じ気持ちだったことを思い出して、共通の話題で盛り上がります。
 とても青春感のあるシーンですね。
 極め付けにこの後見つかってチェイス音楽に移り変わり、逃げ切ったところで演奏は止まります。

青春を感じさせるシーン12

 そしてそのまま
 1:01:42
 ウーズマカッパは生まれ変わり、ユニフォームを作ってトレーニングに励みます。
 この時は小気味のいい打楽器から、とても前向きなマーチングが演奏されます。
 そのまま第3回戦、第4回戦でも演奏は続きます。
 この57:30から第4回戦までの流れはとっても青春感のあるシーンとして描かれますね。

青春を感じさせるシーン13

 そしてシーンは少し飛んで、
 1:13:04
 最終戦、マイクさんが怖がらせシミュレータで点数を出すシーンです。
 アクション音楽のような緊張感から、演奏は一気に止まりマイクさんが叫びます。
 見事満点を叩き出し、とても明るいファンファーレが鳴り響きます。
 ここはとても感動的で、そのまま終わりそうなところですが、

青春を感じさせるシーン14

 1:16:01
 そのシミュレータをサリーさんがいじって満点が出るように細工していたのが判明したシーンです。
 とても悲しいバラードが演奏され、皆がサリーさんのもとから去っていくのがとても悲しいですね。

青春を感じさせるシーン15

 1:29:06
 マイクさんとサリーさんはドアの無断使用で退学になってしまい、荷物をまとめてウーズマカッパの面々に挨拶するシーンですね。
 ここでは意外にもポジティブなバラードが演奏されます。
 それは皆と共に戦えたこと、それによってチームメンバーだけでも復学できたことが演奏の理由と言えます。
 この
 1:29:50
 ここで一度演奏はリタルダンドするんですけれど、この時大学から去るマイクさんが一歩を踏み出すシーンにかかっています。
 初めに大学に入るときの一歩と大学を去るときの一歩はかかっていたんですね。

青春を感じさせるシーン16

 そして最後に
 1:33:20
 モンスターズインクの郵便部署で働き出し、マイクさんとサリーさんのナイスコンビは出来上がったわけですね。
 その後というか、前作のモンスーズインクでは、二人は怖がらせ屋とそのアシスタントとして、モンスターズインク1の怖がらせ屋になっています。
 このように今作は二人の青春を追っているんですね。

青春には多彩な音楽ジャンル まとめ

 大事なおさらいをすると、怖がらせ屋は憧れの職業でヒーローのような存在として、ヒーロー音楽が使われていました。
 そして悲しいバラードが多めでしたね。
 それと明るいマーチングバンドや、ポジティブなバラードととても色彩豊かな楽曲が演奏されていました。
 やはり青春物語は一喜一憂して、楽しいも悲しいも挫折もそれを乗り越えた感動も分かち合ったことが、この映画の一番描かなければならない内容になります。
 この体験がなければ、前作モンスターズインクで二人は信頼を置ける仲間になっていなかったわけですもんね。
 そんな二人がどのようにして出会い、どのように仲良くなり、どのように壁を乗り越えてきたを描くためには、多彩なジャンルと様々な音楽の仕掛けを用意する必要があったんですね。
 ですから、モンスターズユニバーシティではたくさんのジャンルが演奏されますし、喜怒哀楽どの感情も余すことなく出し切ることで、擬人化もできてとても楽しい映画になっていたというわけでした。


【エンディング】

 2回に渡ってモンスターズユニバーシティをみてきました。
 コメディ映画としても青春映画としても、はたまたヒューマンドラマとしてもとても面白かったですね。
 音楽はランディー・ニューマンさんの特徴とも言える遊び心満載で、みていてワクワクしたり、悲しくなったり、楽しくなったり、さびしくなったりと全く退屈させない作りが魅力の一つと言えますね。
 サブスクリプションではトイストーリーから1曲やるので、興味のある方は初月無料ですのでぜひ聴いてみてください。
 次回はナイトミュージアムを2回に渡ってやっていこうと思います。

 最後までお読みいただきありがとうございました。
 映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
 podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
 ではまた!

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