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#69【アラジン】ep.1「聴き応えのある楽曲の持つライトモチーフのような力~フレンド・ライク・ミー~」

※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#69にあたる内容を再編集したものです。

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【アラジンについて】

 1992年公開(日本1993年公開)
 
 監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ
 音楽:アラン・メンケン

作曲家紹介

 アランメンケンさんは、ミュージカルや映画音楽の作曲家で、ディズニー映画の映画音楽を担当されてることで有名な音楽家です。
 1989年公開の「リトルマーメイド」から「美女と野獣」「ポカホンタス」「ノートルダムの鐘」「ヘラクレス」「塔の上のラプンツェル」今回の「アラジン」など人気作を多く手がけています。
 どの楽曲も聞いたことがある曲ばかりのヒットメイカーです。
 アカデミー作曲賞4回、アカデミー歌曲賞4回の受賞は、2番目に多い作曲家だそうです。
 2001年にはディズニーレジェンドという賞も受賞されています。

作曲家作品

 リトル・ショップ・オブ・ホラーズ
 ロジャー・ラビット
 リトル・マーメイド
 リトル・マーメイド(2023実写)
 ロッキー5/最後のドラマ
 美女と野獣
 美女と野獣(2017実写)
 ホーム・アローン2(劇中歌)
 アラジン
 アラジン(2019実写)
 ポカホンタス
 ノートルダムの鐘
 ヘラクレス
 魔法にかけられて
 魔法にかけられて2
 塔の上のラプンツェル
 キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー
 ソーセージ・パーティー
 シュガー・ラッシュ:オンライン

登場人物

 アラジン:
 アグラバーの街で泥棒をしている青年。
 
 ジャスミン:
 アグラバーの王女。
 
 アブー:
 アラジンの相棒のサル。
 
 ジーニー:
 魔法のランプの精。
 
 サルタン:
 アグラバーの国王で、ジャスミンの父。
 
 ジャファー:
 アグラバーの大臣で、ランプを狙う。
 
 イアーゴ:
 ジャファーのペットのオウム。

あらすじ

 砂漠の王国アグラバーに、アラジンという名の青年がいました。
 彼は生活のため盗みを働きつつ、いつかは王宮で贅沢に暮らすことを夢見ながら、相棒のサル・アブーくんとともに暮らしていました。
 そんなある日のこと、アラジンさんは街の市場で一人の美しい女性、ジャスミンさんを目にします。
 トラブルに巻き込まれ、今にも腕を切り落とされそうなジャスミンさん。
 それを見たアラジンさんは彼女を助け出し、自分の家へ招待します。
 二人はそこで自分の境遇を語り合い、お互いに心惹かれはじめるのですが、そこへ衛兵たちが現れ、アラジンさんは捉えられてしまいます。
 実はジャスミンさんはアグラバーの王女であり、望まぬ結婚に嫌気がさして王宮を飛び出し街へやってきていたのです。
 そして王女誘拐の罪を着せられたアラジンさんは、そのまま牢屋に入れられてしまいます。
 しかしそれはアグラバーの大臣ジャファーさんの仕組んだ計画でした。
 魔法の洞窟に眠るランプを求めるジャファーさんは、ランプを手にできる「ダイヤの原石」のような人物として、アラジンさんに狙いをつけたのです。
 表向きは処刑されたこととなったアラジンさんですが、ジャファーさんとの取引で脱獄に成功し、そしてランプのある洞窟へと分け入っていくのでした。
 洞窟の中には数々の財宝が眠っており、サイオウにはジャファーさんのいうとおり、黄金でできたランプが置かれていました。
 やがてアラジンさんは崩れ始める洞窟から見事ランプを持ち帰り、入り口のジャファーさんの元へと届けます。
 しかしランプを受け取ったジャファーさんは、あろうことかアラジンさんたちを洞窟の奥へと突き落としてしまいます。
 入り口は塞がれ、脱出のすべを失ったアラジンさんたち。
 しかし相棒のサル、アブーくんはこっそりジャファーさんのランプを盗み取っていました。
 そしてアラジンさんがランプをこすると、驚いたことに中からランプの魔人ジーニーさんが現れたのです。
 こうして「ランプの持ち主の願いをなんでも3つ叶える」というジーニーさんの力により、アラジンさんは脱出に成功します。
 思いがけずランプの主となったアラジンさんは、その後ジャスミンさんとの恋をかなえるため、ジーニーさんに願って王子になることにしました。
 魔法で生み出した衣装や高価な貢ぎ物をたずさえて王宮を訪れるアラジンさん。
 突然現れた謎の王子を相手に、ジャスミンさんもはじめは気のない素振りでしたが、次第に打ち解けていき、ついに二人の仲はアグラバー王も認めるところとなりました。
 しかしこれを苦々しく思っていたのがジャファーさんでした。
 ランプを手にしそこなった彼は、次の策として自らがジャスミンさんの伴侶となり、王国を乗っ取る算段だったのです。
 アラジンさんを亡き者にし、王を洗脳しようと企むジャファーさんですが、ジーニーさんの助けで全ては失敗に終わり、最後には行方をくらましてしまいました。
 邪魔者は去り、見事ジャスミンさんと結ばれることとなったアラジンさん。
 一見すべてが上手くいくように思えましたが、しかしアラジンさんは自分の本当の身分を隠したままであることに罪悪感を抱いていました。
 そして運の悪いことに、ジャファーさんは逃げだす間際に王子の持つ魔法のランプを目にしており、王子の正体がただのこそ泥アラジンさんであることに気づいていたのです。

【はじめに】

 ディズニー作品の中でも人気の高いアラジンをやっていこうと思います。
 小さい頃に見た時はアラジンさんとジャスミンさんの恋愛映画だと思っていたのですが、意外にもジーニーさんとの友情ものとしても楽しめる作品なんですね。
 あと改めて観てみて思ったのですが、映像がすごく綺麗でした。
 昔の記憶ではもう少し映像が粗かった気がしてたんですが、ものすごく綺麗でこれは本当に驚きました。
 やっぱり改めてですけどディズニー作品ってすごいんですね。
 そんなディズニー作品ですけれども今回はそのディズニーの世界観をなるべく壊さないようにその世界の仕組みを見ていこうと思います。

【聴き応えのある楽曲が持つラトモチーフのような力】

 この映画の中で、ある3曲が話の主軸を握っています。
 それが「フレンドライクミー」と「ホールニューワールド」「アラビアンナイト」です。
 「フレンドライクミー」と「ホールニューワールド」「アラビアンナイト」は歌われるミュージカル部分以外にも実は何度も演奏されているんです。
 どの曲も素晴らしいのに特に印象に残っているのは、映画の本筋に何度も関わってきてオーケストラでのアレンジで、ライトモチーフのように何度も登場しているからこそ、映画と強く結びついていてイメージに残っているというわけですね。
 もちろんこの3曲は映画の中でも重要な役どころの音楽であることは言うまでもありません。

フレンドライクミー シーン1

 はじめは「フレンドライクミー」です。
 これは映画の中でも非常にわかりやすいですね。
 ジーニーさんの登場シーンで演奏されています。
 37:21
 のジーニーさんの登場シーンですね。
 6曲目に収録されている「フレンド・ライク・ミー」一部ですがこういった楽曲でした。
 (イントロ〜Aメロ演奏)
 名曲ですよね。
 楽しいけどどこか怪しげで、ジェットコースターのような展開でジーニーさんらしさ満載です。

フレンドライクミー シーン2

 この楽曲は一度だけライトモチーフのように使われています。
 それは
 46:10
 アラジンさんが一つ目の願いをお願いするシーンです。
 一つ目の願いは王子になりたいだったので、服を仕立てる時に演奏されていますね。
 その次に要素モリモリのパレードでジャスミンさんに会いに行くんですが、この時のジーニーさんはアラジンさんとの関係が築けていない状態であることが、演奏の動機になっています。
 というのも、この楽曲が持つのは「楽しいけどどこか怪しげで、ジェットコースターのような楽曲」です。
 楽しくてジェットコースターのようなイメージは変わらないのですが、ジーニーさんはアラジンさんと仲良くなることで、その怪しげな得体の知れないミステリアスさは抜けていきます。
 それがこの楽曲が演奏されなくなる大きな理由です。
 歌としてはジーニーさんが自己紹介ソングみたいな感じで歌っていますが、実際あの楽曲からはアラジンさんがジーニーさんに抱く印象、いわばアラジンさん目線な楽曲なんです。
 歌詞がジーニーさんの一方通行な内容なので気づきにくいのですが、自己紹介ソングがアラジンさんに抱かせているイメージと合っていて、さらに映画を観ている視聴者さんにも同じ感情を与えていると言うわけですね。
 なので、アラジンさんと視聴者さんがジーニーさんに抱くイメージに、怪しさよりも友情が芽生えることで演奏がされなくなるという作りになっていたわけですね。
 これはとても面白いです。
 まあそもそもは魔人だし青いしよく喋るので、怪しむべきではあるんでしょうけど映画を観終わった頃にはみんな大ファンになってしまう魅力的なキャラクターのひとりですよね。
 ジーニーさんのイメージが自分の中で固定化されていると中々気づかない仕掛けですね。

アラビアンナイト

 次に「アラビアンナイト」こちらアップルミュージック アラジン オリジナル サウンドトラック 1曲目に収録されている「アラビアン・ナイト」で聴くことができます。
 一部ですがこうでしたね。
 (サビ前〜途中まで演奏)
 めちゃくちゃかっこいい楽曲ですよね。
 僕はこの映画で一番好きな楽曲です。
 怪しさと明快なアラビア音階が相まって非常にいい感じです。
 この楽曲は映画の冒頭で演奏されています。
 なぜ冒頭で演奏されるかというと、この楽曲の持つ意味は世界観の説明と映画に入り込ませるためだからです。
 「フレンドライクミー」や「ホールニューワールド」はとても耳を惹きますが、肝心のアラビア感はありませんよね。
 ですので、この楽曲に必要なのは圧倒的なアラビア感です。
 アラビアらしさが世界観への没入感を高めて、どのような世界の話なのかを説明できるからですね。
 そのため、この楽曲はランプを見つけるまでに何度も登場します。
 この映画はランプを見つけてジーニーさんを呼び出すところからが話の主軸に触れる作品のため、そこまではあくまでも導入部分になるわけです。

アラビアンナイト シーン1

 演奏されていたシーンをいくつか抜粋すると、
 まずは映画冒頭で「アラビアンナイト」が歌われています。
 そこから怪しげな露天商が登場して、昔話をしてくれます。
 それがアラジン本編というわけですね。
 この時にはアラビアンナイトの演奏が一度は終わって、改めてアラビアンナイトが演奏されています。
 まさに導入部分という感じですね。

アラビアンナイト シーン2

 その後なんやかんやあってアラジンさんはジャファーさんに捕えられ、なんやかんやあって魔法の洞窟に魔法のランプを取りにいくことになります。
 27:39
 ジャファーさん扮する地下牢の老人に言いくるめられ、魔法の洞窟に行くシーンです。
 この魔法の洞窟に入る前にアラビアンナイトが演奏されています。
 ここは魔法のランプを手に入れに行くシーンなので、ここまではまだ導入といっていいんですね。
 この作品はほぼ90分映画なので、この時点で1/3使っているのは意外です。
 その後すぐ、洞窟に入る時も演奏されていますね。

アラビアンナイト シーン3

 そして
 33:07
 財宝に触れてしまい、洞窟を怒らせてしまって逃げる途中に唸り声をあげる洞窟の入り口のシーンが一瞬登場します。
 この時に演奏されています。
 ということは、この楽曲は映画の冒頭と魔法の洞窟の入り口で登場する楽曲ということになります。
 この洞窟はジーニーさんに出してもらってからは登場しないので、ここからが本当の始まりと言った感じですね。
 これがアラビアンナイトの使われていた世界観の没入感のための音楽というわけですね。

ホールニューワールド

 最後に「ホールニューワールド」です。
 これはもう言わずと知れたアラジンさんとジャスミンさんのバラードです。
 9曲目に収録されている「ホール・ニュー・ワールド(あたらしい世界)」は一部ですがこういう楽曲です。
 (サビを演奏)
 これも名曲です。
 魔法の絨毯でデュエットするシーンはあまりにも有名すぎますよね。
 エンドクレジットで演奏されるアレンジが有名ですが、劇中に演奏されるアレンジもめちゃくちゃ素敵なアレンジです。
 そんなホールニューワールドですが、映画内で何度も演奏されているんですね。
 フレーズも含めたら7回も演奏されています。

ホールニューワールド シーン1

 ではどこで演奏されていたかいくつか抜粋すると、
 57:26
 魔法の絨毯デュエットの少し前のシーンで、フレーズがいくつか演奏されます。
 これはほとんど歌までのイントロのようなものですね。
 映画は残すところ30分ほどしかないので大分引っ張ってのホールニューワールドですね。

ホールニューワールド シーン2

 その後歌があって、次に
 1:06:15
 ジャファーさんの陰謀が明るみになって、王子に扮したアラジンさんとジャスミンさんが父である王の前で花婿を見つけたと気づかせるシーンです。
 この時はいい雰囲気の二人に演奏が向けられています。
 まさにといったシーンですね。
 しかし次のシーンでの演奏が面白いです。

ホールニューワールド シーン3

 1:09:07
 アラジンさんは偽りの王子であることで不安を感じ、最後の願いを言わずにジーニーさんを保持し続けようとして、周りの仲間にまで当たってしまうシーンです。
 実際この時に演奏されたのではなく、声真似の得意なジャファーさんのペットのオウム、イアーゴがジャスミンさんの声真似をするシーンで演奏されています。
 この声真似はランプを盗むためにしていて、その後イアーゴがアラジンさんの部屋に行く時は不安を煽るようなメロディに変更されています。
 ここではフェイクのホールニューワールドが演奏されていることになります。
 これは僕もすっかり騙されてしまいました。
 声真似ってレベルじゃなくて本人なんですもんね。
 しかもホールニューワールドまで演奏されていたらすっかり騙されます。
 ここではちょっとあんぽんたんな雰囲気のあったイアーゴが狡猾な表情を見せて、ジャファーさん側に形勢が傾いているよう視聴者に思わせる仕掛けになっていますね。
 この後に最終決戦があるので、とても優れた演出ですね。

ホールニューワールド シーン4

 その後なんやかんやあって、
 1:22:15
 ジャファーさんもやっつけ、アラジンさんは王子ではないことを打ち明けられ、それでもジャスミンさんが愛していると言ってくれて一気にエンディングに向かうシーンです。

ホールニューワールド シーン5

 さらに
 1:24:58
 の大団円でも演奏されています。
 ここは先ほどのエンディングからの延長のような使われ方なので一緒ですよね。
 ようはお互いが思い合っている状態がホールニューワールドのライトモチーフのような使われ方だったということですね。

聴き応えのある楽曲が持つラトモチーフのような力 まとめ

 この3曲が映画の根幹に関わっているというわけですね。
 「アラビアンナイト」では世界観の表現や映画の導入にとても大切な役割として機能していて、「フレンドライクミー」ではジーニーさんのキャラクターの説明と楽曲が演奏されないことでわかるアラジンさんとの関わりに関して、「ホールニューワールド」ではアラジンさんとジャスミンさんの関係性を表しているということになっています。
 それが、歌以外のシーンで演奏されることによって、本筋の書き分けをしながら筋道を逸脱しすぎないように上手く調整していたということですね。
 本当に見事な作りです。
 セリフで説明せずとも上手にイメージをコントロールしているので、観ていてもっさりした印象を受けないのもこれらの細かな工夫をしているからこそなんでしょうね。

【エンディング】

 ということで今回は、聴き応えのある楽曲が持つラトモチーフのような力について話してきました。
 次回はサブスクリプションで実写版「アラジン」と原作アラジンでは、楽曲がどのように違うのかをやるので興味のある方はぜひ聴いてみてください。

 最後までお読みいただきありがとうございました。
 映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
 podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
 ではまた!

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