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#17【シザーハンズ】ep.1「恋愛において、周囲の反対は最高のスパイス」

※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#17にあたる内容を再編集したものです。

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【シザーハンズについて】

1990年公開
監督:ティム・バートン
音楽:ダニー・エルフマン

作曲家作品

ミッション:インポッシブル
メン・イン・ブラック(アカデミー賞作曲賞ノミネート)
メン・イン・ブラック 2メン・イン・ブラック 3
メン・イン・ブラック:インターナショナル
グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(アカデミー賞作曲賞ノミネート)
サイコ(1998 年リメイク)
レッド・ドラゴン
スパイダーマン
スパイダーマン 2
シカゴ
ハルク
ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー
ミルク(アカデミー賞作曲賞ノミネート)
ターミネーター 4
リアル・スティール
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン
ジャスティス・リーグ
ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス

ティム・バートンとのコンビ作品
ピーウィーの大冒険
ビートルジュース
バットマン
シザーハンズ
バットマン・リターンズ
ナイトメアー・ビフォア・クリスマス
マーズ・アタック!
スリーピー・ホロウ
PLANET OF THE APES/猿の惑星(2001 年リメイク)
ビッグ・フィッシュ
チャーリーとチョコレート工場
ティム・バートンのコープスブライド
アリス・イン・ワンダーランド
ダーク・シャドウ
フランケンウィニー
ダンボ(2019 年実写)

登場人物

エドワード・シザーハンズ:
 発明家によって作られた人造人間。両手がハサミになっている。

キム:
 ペグとビルの娘。ジムの恋人。

ペグ:
 キムの母。化粧品会社の販売員。エドワードを家に招き入れる。

ビル:
 キムの父。

ケヴィン:
 キムの弟。

アレン巡査:
 エドワードを逮捕した黒人警官。

発明家:
 丘の上の屋敷で暮らす孤独な老人。エドワードを作り上げる。

ジム:
 キムの恋人。エドワードを利用して、自宅に盗みに入る。

あらすじ

 昔、町外れの丘にある古い屋敷に、一人の老人が暮らしていました。彼は天才的な発明家で、数々の発明品を生み出し、ついには人間までも作り上げてしまったそうです。
 ある日、化粧品販売員のペグさんは訪問販売のため、丘の上にある不気味な屋敷を訪れます。彼女がそこで出会ったのは、ハサミでできた両手をもつ青年、エドワードさんでした。
 生みの親である発明家亡き後、ずっと独りで暮らしてきたエドワードさん。そんな彼を哀れに思ったペグさんは、エドワードさんを自分の家に連れて帰ることにしました。町の人々はエドワードさんのハサミに対して好奇の目を向けますが、やがて彼が心優しい青年であること、そして何より彼のハサミさばきが天才的であることを知るにつれ、こぞって彼をもてはやすようになります。
 ペグさんの娘であるキムさんも、初めこそエドワードに良い印象を抱いていなかったものの、少しずつ打ち解けていきます。
 人間の社会を知らず、ときには周囲を騒がせながらも幸せに暮らすエドワードさん。しかし、キムさんの恋人であるジムさんが取ったある行動によって、平穏な生活に暗い影が射し始めます。

【はじめに】

 2022年現在では32年前の作品。
 今見ても非常に面白く、少し切ないいい作品です。
 色がすごく綺麗で、モノクロとカラーの使い分けがとてもいいですね。
 ジョニーデップさんの怪演が光っています。昔このシザーハンズに顔が似てると言われたことがあります。

【雪のライトモチーフ】

 ここでは雪のライトモチーフと勝手に呼んでいるだけなのですが、このライトモチーフは2つの動機を持っていました。
 アップルミュージック、エドワード・シザーハンズ(ミュージック・フロム・ザ・モーションピクチャーズ)7曲目に収録されているアイス・ダンスという楽曲です。
(演奏)
 非常に美しく明るい印象の楽曲です。
 まずは1つめの非常に文学的なライトモチーフの使われ方をみていきます。
 注目したいのはこのメロディです。
(演奏)
 このメロディが演奏される4シーンをピックアップしたいと思います。

雪のライトモチーフ シーン1

00:04:38
 老婆が子供に雪のお話をするシーンです。
 この曲はストーリー・タイムという楽曲の一部です。
 シーンとしては、老婆のナレーションが生きたまま、町を上空から城に向かって移動していくシーンです。
 この時町は、雪化粧に彩られています。
 その後、町を抜け城の麓にたどり着くとこのメロディが演奏されます。
 ここでは非常に小編成でメロディはコーラスにおかれています。
 そしてカラフルな町のシーンに移り変わるとともに演奏は止まります。

雪のライトモチーフ シーン2

01:15:51
 ここはアイス・ダンスが演奏される場面です。
 エドワード・シザーハンズさんが氷で彫刻を作っているその削りカスが、雪のように舞い、そこでヒロインであるキムさんが踊るシーンです。
 映画のメインともいえるこのシーンは、シーン1の老婆の語るところ、雪が降る理由を語るところのはじまりのような重要な場面です。
 編成もあまり大きくなく、非常に軽やかなシーンです。
 まさにアイス・ダンスといった感じです。
 ここで意地悪な元彼ジムさんの一声に驚き、キムさんを怪我させてしまってからが不幸の始まりというかなんというかです。

雪のライトモチーフ シーン3

01:35:16
 ここからは若干のネタバレ的な要素を含みますので、ご注意ください。
 ここでは意地悪元彼ジムをやっつけたのち、エドワード・シザーハンズさんがキムさんに別れを告げるシーンです。
 キムさんは愛してると告げて、もう二人が会うことはないと悟る非常に感極まるシーンです。
 ここは抱き合う時に演奏されます。
 このシーンも非常に楽器の編成は小さいのですが、メロディはキムさんといる間だけ演奏され、キムさんが去ると感傷的なメロディへと変化していくのが、今までと違う仕掛けです。

雪のライトモチーフ シーン4

01:38:01
 場面は現在のおばあさんキムに戻り、その後、エドワード・シザーハンズさんが城で一人暮らしているシーンで演奏されます。
 ここは2回に分けて演奏されます。
 まずはガーデニングをしているシーンで演奏されます。
 非常に編成は小さく、ほんの少し寂しさを含んでいます。
 そして2回目の演奏は彼が氷の彫刻を作り、その削りカスが窓を抜け外に雪のように降り注ぐシーンです。
 ここは先ほどより編成は大きく演奏されます。
 シーン2がカットインというか使われていて、リンクするような作りになっていました。

雪のライトモチーフ まとめ

 この4シーンを総合的に見ていくと、雪に由来している感じがします。
 ではなぜ雪を感じるかというと、老婆のキムさんの言葉がヒントになってきます。
 映画序盤で孫が老婆のキムさんに「雪はなぜ降るの?雪はどこから?」という質問を受けます。
 これに対しての答え(お話)が映画本編です。
 そして映画終盤で、老婆のキムさんは孫から「彼は生きているの?」という質問を受けます。
 これに対し、「さあ、それはわからないけど...きっと生きてる。なぜって彼がくる前ここには雪が降らなかったの。彼が去ってから毎年雪が...」というセリフが残されます。さらに続き「この雪はきっと彼が降らせているのよ。今もみえるはずよ、踊ってる私の姿が...」と続くわけです。
 ということは、雪の正体がエドワード・シザーハンズさんと捉えることができます。
 基本的にエドワード・シザーハンズさんにはライトモチーフは用意されていません。
 しかし、エドワード・シザーハンズさんとキムさんと雪が交わる時、もっと端的にいうと、キムさんが強くエドワード・シザーハンズさんのことを想う時このモチーフが演奏されます。
 これを持ってここでは勝手に雪のライトモチーフと呼んできました。
 非常に悲しくも美しいメロディが全てを物語っているように感じるすばらしい1曲です。

【キムさんを想うライトモチーフ】

「アイス・ダンス」が持つ2つめの動機としては、キムさんを想うと演奏されます。
 ということは1つめと対照的に、エドワード・シザーハンズさんがキムさんを想うと演奏されるということになります。
 これもアイスダンスからの抜粋になります。
 ここで注目したいのはこのメロディです。
(演奏)
 このメロディがキムさんを想うテーマとして使われます。
 ではどのようなシーンで使われていたかみていきましょう。

キムさんを想うライトモチーフ シーン1

00:17:59
 ペグの家に到着し、写真を見ながら家族の紹介をしている際に演奏されます。
 アップルミュージック、エドワード・シザーハンズ(ミュージック・フロム・ザ・モーションピクチャーズ)4曲目に収録されている「ビューティフル・ニューワールド/ホーム・スウィート・ホーム」という楽曲のホーム・スウィート・ホームという後半部で流れる楽曲です。
 ここはまさに、エドワード・シザーハンズさんがキムさんに一目惚れしたような、そのようなシーンです。

キムさんを想うライトモチーフ シーン2

00:35:16
 博士が全自動クッキー製造機を楽しげに観ている時、手がハサミのロボットの前で、ハート型のクッキーをロボットの胸あたりにかざす時に演奏されます。
 これはシザーハンズを作ることを思いついた感じの演出になります。
 ここで、演奏されるのがシーン1のキムさんの写真を見た時とテンポは違えど同じ曲になります。
 このシーンは博士が人間を作ろうと思いつくシーンです。
 これは人を好きになる心が芽生えるための、始まりの大切なシーンになります。

キムさんを想うライトモチーフ シーン3

00:53:20
 エドワード・シザーハンズさんはハサミの手入れをするために街のショッピングモールみたいなところに行き、そこでジムさんとキムさんがイチャつくのを見た時に演奏されます。
 この時のメロディはこのメロディではないのですが、アイスダンスで使用されたメロディが演奏されます。
 ここはわかりやすいシーンで、演奏も優しさに溢れているのでイチャついていても、キムさんの事しか見えていないといった様子でした。

キムさんを想うライトモチーフ シーン4

01:10:40
 警察署から帰ってきたエドワード・シザーハンズさんがキムさんに会うシーンです。
 この場面では短い演奏なのですが、使い方が非常にシャレてます。
 ここでは、キムさんからジムの差金であることをエドワード・シザーハンズさんに伝えます。
 しかし彼はジムさんの仕業であったことを知っています。
 キムさんは、ではなぜ頼みを聞いてくれたのかと聞きます。
 それに対して、エドワード・シザーハンズさんが「君が頼んだから」と返答をし、キムの驚きの表情で演奏されます。
 そして嫌なやつジムさんが登場すると、音楽は不穏な色合いに変わります。

キムさんを想うライトモチーフ シーン5

01:24:20
 このシーンではジムさんに追い返されたエドワード・シザーハンズさんがもう一度家に帰った際、怪我を負わせてしまったキムさんと再会します。
 そしてキムさんは「抱きしめて」とエドワード・シザーハンズさんにいいます。
 それに対し彼は、「できない」と言います。
 この時にこのモチーフは未遂的なメロディを演奏します。
 これは観ていただいたらわかりやすいと思います。
 さらにこの後に、博士との回想シーンが入り、ハサミではない手を付けてもらうシーンで博士は亡くなってしまいます。
 この時にこのメロディが非常に小さく演奏されます。
 ちょっとややこしくなったのでまとめると、ここで彼は手がハサミであり続ける運命を背負います。
 しかしそれがのちにキムさんに雪を見せてあげるという運命にも繋がると同時に、普通にキムさんを抱きしめてあげられない、自分の手は人を傷つけてしまうということを知るなんとも切ないシーンです。

キムさんを想うライトモチーフ シーン6

1:32:31
 人を傷つけてしまって街を追われ城に逃げ込んだエドワード・シザーハンズさんが、城まで追いかけてきたキムと再会するシーンです。
 二人が出会えた時に演奏されます。
 もう会えないと思っていたはずのキムさんに会えたこと、キムさんも彼が無事であったことが演奏の動機となります。
 ここから明確に「キムさんを想うライトモチーフ」から「互いを想い合うライトモチーフ」に変化します。
 第1回目にやった「ジュラシックパークのテーマ」の話に近く、このモチーフはここで変化というか進化することになります。
 このあとから、お互いを想うライトモチーフとして、雪のライトモチーフと同じシーンで演奏されます。
 その後雪のライトモチーフと同じ、

キムさんを想うライトモチーフ シーン7

01:35:16
 ここでもエドワード・シザーハンズさんが別れを告げるまではこのメロディが演奏され、キムさんが愛してると告げると雪のライトモチーフで使われたメロディが演奏されます。
 セリフによって一曲を2つの意味として演奏しています。
 さらに雪のライトモチーフと同じですが、

キムさんを想うライトモチーフ シーン8

01:38:26
 氷の彫刻を削り、街に雪を降らす時に演奏されます。
 このことから、エドワード・シザーハンズさんはキムさんを想い雪を降らせ、その雪を見ることでキムさんはエドワード・シザーハンズさんを想うという構図が出来上がります。
 それを一曲の中に収めてしまうのが本当に上手すぎて軽く引きます。

キムさんを想うライトモチーフ まとめ

 この様にキムさんを想う時に演奏されていた楽曲は、映画が進むにつれお互いを想う気持ちへと変わり、曲自体の持つ動機も変化します。
 そして最後にはそれぞれのライトモチーフが1つのライトモチーフとなり、1つの曲が2つの意味を持つ様に設計されていました。
 この2つが組み合わさることで、映画の最後にふさわしい完成感を出すことに成功しています。
 本当に憎たらしいほどよくできています。
 結局二人が結ばれることはなかったのですが、これでよかったのかなって気にさせます。

【アイスダンス まとめ】

 キムさんを想うライトモチーフは最終的にアイスダンスという楽曲の一部であり、その意味はエドワード・シザーハンズさんはキムさんを想い、また彼は想われていたという構図で幕を閉じます。
 初めはそれを気づかない様に、映画が進行していくにつれ真意がわかってくる仕掛けは非常に機能的でかつ、美しいストーリーをより色彩豊かに見せる効果も生んでいました。
 街に拒絶されればされるほど、キムさんとの距離が近づくのはなんとも切ないお話です。

【エンディング】

 今回は映画「シザーハンズ」から、「アイス・ダンス」という楽曲に含まれる2つのライトモチーフの演奏動機を見てきました。
 次回も「シザーハンズ」より、「イントロダクション」と「ストーリータイム」という2つの楽曲を取り上げます。また、思い出にまつわるシーンでの音楽的な共通点についても解説していく予定です。

 最後までお読みいただきありがとうございました。
 映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
 podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
 ではまた!

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