#80【トップガン マーヴェリック】ep.2「時代と共に登場するシンセサイザーの世界」
※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#80にあたる内容を再編集したものです。
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【トップガン マーヴェリックについて】
2022年公開
監督:ジョセフ・コシンスキー
音楽:ハンス・ジマー、ハロルド・フォルターメイヤー
登場人物
ピート・“マーヴェリック”・ミッチェル海軍大佐:
トップガンで教官を務めることになる。
トム・“アイスマン”・カザンスキー海軍大将:
前作でのライバル。マーヴェリックをトップガンに呼び寄せる。
ブラッドリー・“ルースター”・ブラッドショー海軍大尉:
訓練生。前作で亡くなったグースの息子。
ジェイク・“ハングマン”・セレシン海軍大尉:
訓練生。ルースターと衝突する。
ナターシャ・“フェニックス”・トレース海軍大尉:
訓練生。女性パイロットでルースターを信頼している。
ロバート・“ボブ”・フロイド海軍大尉:
訓練生。少し頼りなさげ。
ボー・“サイクロン”・シンプソン海軍中将:
トップガンでの上官。
ソロモン・“ウォーロック”・ベイツ海軍少将:
トップガンでの上官。
ペニー・ベンジャミン:
バーを経営するシングルマザー。前作では名前のみ登場。
【前回の振り返り】
前回はソースミュージックを見てきました。
冒頭では前作のトップガンでも使われた楽曲やその当時の音を感じさせる電子楽器が多く使われていたなんて話をしましたね。
そしてバーのシーンでは怒涛のようにソースミュージックが演奏されていて、ロックを中心にキャラクター性やジュークボックスのラインナップにありそうな楽曲が選ばれていました。
心なしかイギリスのバンド多めだったなんて話もありましたね。
その中でルースターさんのキャラクター性を感じさせる作りは面白かったです。
無事帰還することを大切にしているルースターさんに対して、ハングマンさんがフォガットの「スローライド」という楽曲をジュークボックスで流していましたね。
それは皮肉としても受け取れるなんて話もしました。
【今作でも登場するシンセサイザーの音】
そして今回は今作でも登場するシンセサイザーの音についてみていこうと思います。
前回で前作のトップガンでは当時流行した電子楽器のサウンドが登場しているという話をしました。
冒頭の「メインタイトル ユーブ ビーンコールド バック トゥ トップガン」という楽曲でも電子ドラムの音や途中からシンセサイザーの音が追加されていたという話をしましたが、今作で新たに書かれた楽曲にもシンセサイザーの音が使われています。
このシンセサイザーはこの映画自体の色といいますか、もはや特色といってもいいですね。
そんなシンセサイザーが映画の中でうまく楽曲に溶け込んでいます。
そこで今回は、シンセサイザーが効果的に機能しているシーンのジャンルをピックアップして、それについて話していこうと思います。
なお、前作トップガンに登場した楽曲やソースミュージックは抜いて、今作で使われている楽曲をピックアップします。
シンセサイザーの使われるシーン1
まずは
4:10
主人公のマーヴェリックさんが前作でも着ていたジャケットが登場するシーンです。
このあと羽織るんですが、この時に低音のシンセベースがブーンとなります。
ここは非常にわかりやすく、尚且つ効果的ですよね。
前作で着ていたジャケットの登場と共に、前作の顔とも言えるシンセサイザーの音が演奏されるのは前作からのファンにとってはとても嬉しい演出です。
このシーンはバラードとヒーロー音楽ですね。
ハンスジマーファンからすると、次のシンセサイザーの音にも注目したいです。
ブーンというシンセベースの後に、トコトコトコトコというシンセの音が聴こえてくるのですが、このアルペジエーターで作ったような音にオーケストラを合わせるこの音こそハンスジマーさんの得意とする技法です。
ちなみにトコトコトコトコっていうのはこんな音ですね。
(演奏)
少しマニアックな話をすると、この初めに演奏されるブーンというシンセサイザーは音が開いています。
逆にトコトコは閉じた音です。
音が開くというのはこういう音ですね。
(演奏)
ちなみに音が閉じるというのはこういう音です。
(演奏)
徐々に変化させるとこうです。
(演奏)
このように音が開いていると高音域の抜けがいい音になります。
この音は80年代に登場して、今でも使われはしますが流行音としては80年代ですね。
逆に閉じた音はいつの時代も使われていましたが、比較的新しい音として音楽に組み込まれています。
ということは、この2つのブーンとトコトコだけで、時代を駆ける作りになっているともとれます。
ブーンで前作のジャケットが登場して80年代の表現を、トコトコで現代的な表現を追加していることになります。
この文学的な音楽表現はとてもいいですね。
ちなみに音を伸ばさずに、トコトコさせているのは推進力をあげる効果があります。
この後にマーヴェリックさんはマッハ9に挑むための準備をしてバイクに乗り基地へ向かいます。
この進んでいる推進力にトコトコが一役買っているということですね。
さすがです、ハンスジマーさんは元々シンセサイザーの演奏者としてキャリアをスタートしていることが窺い知れますね。
そんな演出に対して1音1音の音選びについてですね。
シンセサイザーの使われるシーン2
少し脱線しましたが、次のシーンでも推進力のあるシンセが使われています。
40:15
マーヴェリックさんとルースターさんがチキンレース的な感じで、地面に向けてクルクルと落ちながら飛ぶシーンです。(バーティカル・ローリング・シザース)
まさに楽曲にも推進力が必要になるシーンです。
どんどん下降していく戦闘機の緊張感にとても効果的に機能しています。
ということでここでの音楽はアクション音楽が使われています。
シンセサイザーの使われるシーン3
バラード、ヒーロー、アクションときて次はサスペンス、ミステリーです。
48:32
作戦説明をするシーンです。
ちなみに
1:07:55
でも近い楽曲が演奏されています。
ここでもトコトコシンセが使われていますね。
このシーンはサスペンスミステリー音楽ですね。
さらにここでは作戦の説明をしています。
作戦の説明ということは準備という意味も併せ持ちます。
音楽において準備をしている意味を持たせるには、ミッドテンポのリズムを用いることが多いです。
これは#8 映画アトランティスでもやっているので、興味のある方はぜひ聴いてみてください。
このリズムの要素は、前に進んでいくような推進力を感じさせて、遅くも早くもないテンポであるからこそ、着実に進むような表現として使われます。
これが早いとアクションになったり、逆に遅いと停滞しているような表現になります。
そんなミッドテンポのリズムの要素として、トコトコシンセがなっていたというわけですね。
今作のシーン、もしくは音楽ジャンル別でシンセの使われどころを見てきましたが、シンセが使われることでトップガンという作品のイメージにつながっていましたね。
特には冒頭のマーヴェリックさん登場で使用されたシンセサイザーは今作の中でもとても光る使われ方でしたね。
【器用な音楽構造】
続きまして、器用な音楽構造の話をしたいと思います。
これは映画全体の話なのですが、メインテーマとソースミュージックの他にこの映画でよく演奏されているのは、アクション音楽とバラードです。
アクション音楽とバラードがこの映画のキモになっていて、そのバランスが映画全体で見た時に蛇行するような感情の表現につながっています。
蛇行するような感情表現とは、バラードで落としてアクション音楽で上げるという意味合いです。
シーンも合わせて観ていくとわかりやすいのでみていきましょう。
バラードとアクションのシーン1
まずは主人公であるマーヴェリックさんの登場シーンです。
3:15
マーヴェリックさんの後ろ姿から始まるシーンです。
このシーンでは主人公の登場で、バラードが使われています。
ご飯をもってきたり、プロペラ機をいじったりしている時は叙情的なバラードです。
そして彼の昔の功績、前作トップガン時代の写真の登場でヒロイックなホルンが追加されるという運びになっていますね。
まさに軍事ヒーロー映画といった王道な作り方がかっこいいです。
その後、先ほども話したシンセサイザーが登場するシーンにつながります。
11:44
ではマッハ10に到達するシーンで軽いアクション音楽が演奏されます。
これは冒頭での流れなのですが、このようなバラードとアクションを交互に繰り返すような流れが多く登場します。
バラードとアクションのシーン2
次は
31:14
ではピアノを弾いて歌っているルースターさんをみて、ルースターさんの父と重ねるシーンです。
ここでもバラードが演奏されていて、その後、訓練の開始からルースターさんとの地面に向けて飛ぶチキンレースの時にはアクション音楽演奏されています。
バラードとアクションのシーン3
次に
46:47
マーヴェリックさんとペニーさんがヨットを運転するシーンです。
この時はヒーロー音楽とバラードの間といった印象の楽曲が演奏されています。
その後、作戦説明ではミステリー、サスペンスの要素を持ったアクション音楽が演奏されています。
バラードとアクションのシーン4
次は逆で
1:13:06
バードストライクという鳥にぶつかってしまうシーンです。
この時にはアクション音楽が演奏されています。
その後、アイスマンさんの訃報を受けてバラードが演奏されます。
バラードとアクションのシーン5
次は
1:23:27
マーヴェリックさんが作戦のテストフライトを成功させて、編隊長になるシーンです。
ここではヒロイックなバラードが演奏されていて、その後、作戦準備や構成員への激励、挨拶などのシーンが続きます。
これらのシーンもヒロイックなバラードが演奏されています。
作戦説明や発艦の時にはアクション音楽が演奏されています。
バラードとアクションのシーン6
その後、
1:34:34
では敵の滑走路を破壊するシーンです。
この時にルースターさんは遅れをとっていて急ぎます。
ここでアクション音楽が演奏されています。
その後ミサイルが飛んできて、マーヴェリックさんが撃墜されてしまう時にはバラードが演奏されます。
バラードとアクションのシーン7
つぎに
1:42:04
では墜落したマーヴェリックさんは実は生きていて、敵ヘリコプターに追いかけられるシーンです。
ここではアクション音楽が演奏されていますね。
そして助けに来てくれたルースターさんと帰還するために奮闘する間はアクション音楽やサスペンス音楽が演奏されて、
敵機に攻撃され、絶体絶命の時にはバラードが演奏されます。
器用な音楽構造 まとめ
ということで、とにかくアクションにはバラードが合わせるように演奏されています。
これは映画の作り出す高揚感や達成感につながっています。
映画のプロットに合わせて音楽が演奏されているので監督の采配なのですが、この高低差が映画のエンターテイメントとしての完成度をより一層高めて、見応えにもつながっていますよね。
人生楽ありゃ苦もあるさではないですが、山あり谷ありを感じます。
このようにトップガンマーヴェリックでは、アクションを活かすために、バラードによるシーンで状況の説明や無事に帰ってくる理由などを強く意識させています。
この映画にとってとても理にかなっている作りですよね。
そのためアクションではヒリつきますし、バラードではマーヴェリックさんや周りの人たちの人間関係を垣間見ることができるわけですね。
【エンディング】
2回にわたってトップガンマーヴェリックをみてきました。
以前観る前は正直半信半疑でした。
昔のヒットソングを現代風にアレンジした様な内容かなと思っていたのですが、映画は本当に見事にまとまっていて、逆にストレートなヒーロー映画が清々しくてかっこよかったです。
まだの方は、スカっとする映画なので休みの日の午後にでも見てみるといいかもしれません。
僕は詳しくないのであれですが、軍用飛行機が好きな方は観ていて面白いシーンが多かったみたいですね。
もちろんF14戦闘機からのアップデートもありますし、飛行方法だったりとか、この映画は実際に飛行機を飛ばして撮影しているみたいなので、その迫力も見応えがあったそうです。
ラスト付近の敵機がブワっと機体を縦にして弾を避けるシーンはカッコよかったですよね。
実際にある飛び方らしいのですが、曲芸に近く戦闘ではあまり使われないらしいです。
ということで、今回のサブスクリプションでは「ミッションインポッシブル2」をやろうと思います。
そして次回から「シックスセンス」をやろうと思います。
言わずと知れた名作ホラーですね。
作曲はファンタスティックビーストやダークナイトではハンスジマーさんとの共同制作をしていたジェームズニュートンハワードさんです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
ではまた!
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