#93【DUNE / デューン 砂の惑星】ep.1「映画音楽の新境地」
※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#93にあたる内容を再編集したものです。
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【DUNE/デューン 砂の惑星について】
2021年公開(デューン 砂の惑星 PART2が日本で2024年3月15日より公開)
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
音楽:ハンス・ジマー
作曲家紹介
ハンスジマーさんはドイツ出身の世界的に有名な映画音楽の作曲家で、数々のヒット作品の音楽を手がけています。
さらに映画音楽の世界で数々の賞を受賞し、その革新的なアプローチと音楽の表現力で多くのファンを魅了しています。
詳しくは#79のトップガン マーヴェリックでやっていますので、気になる方は聴いてみてください。
作曲家作品
レインマン
ライオン・キング
グラディエーター
ミッション:インポッシブル 2
ハンニバル
パール・ハーバー
ザ・リング
ラスト サムライ
バットマン ビギンズ(ジェームズ・ニュートン・ハワードと共同)
ダ・ヴィンチ・コード
パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト
パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド
ザ・シンプソンズ MOVIE
ダークナイト(ジェームズ・ニュートン・ハワード)
コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア 2(ゲーム作品)
シャーロック・ホームズ
インセプション
パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉
ダークナイト ライジング
マン・オブ・スティール
アメイジング・スパイダーマン 2(The Magnificent Six と共同)
インターステラー
バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(ジャンキーXL と共同)
ダンケルク
ブレードランナー 2049(ベンジャミン・ウォルフィッシュと共同)
X-MEN:ダーク・フェニックス
ライオン・キング(2019 年)
ワンダーウーマン 1984
007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
DUNE/デューン 砂の惑星
トップガン マーヴェリック
登場人物
ポール・アトレイデス:
アトレイデス家の後継者。
レト・アトレイデス公爵:
ポールの父でアトレイデス家の当主。
レディ・ジェシカ・アトレイデス:
ポールの母。
ダンカン・アイダホ:
アトレイデス家の武術指南役。
チャニ:
ポールの夢に出てくるフレメン族の戦士。
ウラディミール・ハルコンネン男爵:
ハルコンネン家の当主。デューンの資源を狙う。
あらすじ
紀元102世紀末。
宇宙に進出した人類は巨大な宇宙帝国をつくりあげ、領主たちが各惑星をそれぞれに治めていました。
あるとき惑星カラダンの領主レト・アトレイデス公爵は、皇帝から惑星デューンの統治を命じられます。
デューンは砂に覆われた過酷な環境でしたが、「スパイス」とよばれる貴重な資源が産出される土地でもありました。
こうしてデューンへと赴任することとなったアトレイデス家。
しかしその頃デューンの前統治者であるウラディミール・ハルコンネン男爵は、レト公爵の暗殺をくわだてていました。
やがて家臣の医者に裏切られ、レト公爵は殺害されてしまいます。
さらにハルコンネン男爵が皇帝の軍を引き連れて襲撃してきました。
勢力を拡大しつつあったアトレイデス家を陥れるため、初めから男爵と皇帝は結託していたのです。
アトレイデス家の後継者ポールさんと彼の母ジェシカさんはなんとか逃げのびるのですが、ハルコンネン男爵と戦うにはあまりにも無力でした。
そこで彼らは協力者であるカインズ博士の助けを借り、砂漠の原住民フレメンたちの協力を求めることになりました。
【はじめに】
この作品はパート1で前編となりますね。
パート2が後編になって完結する作りなっています。
もともとはフランク・ハーバートさんのSF大河小説が原作の作品ですね。
その後、デビッドリンチ監督が1984年に映画化、2000年にはテレビシリーズ、2013年にはもともとデビッド・リンチ監督の前に決まっていたけれども、あまりにも壮大すぎる企画で頓挫してしまった、アレハンドロ・ホドロフスキー監督がホドロフスキーのDUNEを公開しているので、通算何本目なんだといったところでの、今作のDUNEですね。
PART2も上映されて、さらに盛り上がっているDUNEですが、前日譚のDune:The Sisterhoodの制作が決まっていましたが、どうやら2024年現在は制作が中止しているそうですね。
続報を待ちたいところです。
映画会社のレジェンダリー・ピクチャーズのホームページには、カミングスーンになっていました。
そしてこの映画は話がとても重厚ですよね。
というより、なんとも不思議な気持ちになるSF作品ですよね。
領主や公爵、男爵などが登場したかと思えば、自分の知らない記憶を持っていたり、スパイスという資源が含まれる砂漠の星が登場したりと、SFなのか、中世ヨーロッパのような話なのか、みたいな、バランス感覚がとても絶妙な作品ですよね。
【バグパイプについて】
ということで、この映画は色々話したい話がありますが、まずはバグパイプについて見ていこうと思います。
SF映画であまり聴かないバグパイプが今回は採用されています。
バグパイプとはこのような音ですね。
(演奏)
とても勢いのある音ですよね。
バグパイプとは、リード式の民族楽器でいろんな国に存在するのですが、有名なのはスコットランドのグレート・ハイランド・バグパイプですね。
リードが取り付けられた数本のパイプがバッグに繋がれて、バッグに溜まっている空気を押し出すことで、リードを振動させて音を出す仕組みの楽器です。
バグパイプの使われるシーン1
そんなバグパイプですが、登場は
35:09
主人公を乗せた宇宙船が砂の惑星に降り立ったシーンです。
アトレイデス家が惑星に降りるとわざわざ演奏されるので、家柄の格式の高さがわかりますよね。
この時に演奏されるバグパイプのソロの音、あれはギターで演奏されたものだそうです。
ギタリストのガスリー・ゴーヴァンさんが演奏しています。
ガスリー・ゴーヴァンさんはイギリス出身のギタリストでギター講師、サポートミュージシャンとして有名です。
2000年〜2006年の間プログレッシブ・ロック・バンドのエイジアでも活動されていました。
まあそんなバグパイプの音がギターだったのは意外ですよね。
これは、ヴァニティ・フェアというアメリカのコンデナスト・パブリケーションズが発行している月刊誌で、そのインタービュー動画で語られていました。
しかしその後に演奏されるバグパイプの音は、本物のバグパイプで演奏されています。
このバグパイプはなんと30人で演奏しているそうです。
人数を増やすことで、音の圧や厚みが出るであったりとか、音が多くなることがアトレイデス家の格式の高さの表現になったりも考えられますね。
ということで、バグパイプはこのシーン以外ではどのようなシーンで使われているかをみていきます。
バグパイプの使われるシーン2
1:19:02
夜襲により、デューンの都市が壊滅的な被害を受ける中、ダンカン・アイダホさんが軍を率いて奮闘するシーンです。
この時演奏されるのは、この映画で数少ない、ヒロイックな音楽が演奏されるシーンです。
このダンカン・アイダホさんは武術の指南役でもある、アトレイデス家にとっての忠実な家臣です。
彼の「俺に続け」というセリフに合わせるように、バグパイプが演奏されています。
まさにアトレイデス家のライトモチーフはバグパイプと言っても過言じゃないですね。
このように演奏回数自体は少ないですが、アトレイデス家という公爵家の威厳を表すいい機会になっています。
夜襲も受けますし、主人公も母も逃げ出さなくてはならないので、ついつい忘れてしまいがちですが、この世界ではわかりませんが、家系だけでいえば、王家の次くらいに偉いはずですもんね。
バグパイプの使用は、有名なスコットランドを意識したわけではなく、さまざまな国で用いられている楽器であることが、採用の要因であったとも、インタビューで語っていました。
【声について】
声について見ていこうと思います。
声と一言でいっても、ボーカルやコーラスなんかも含んだ意味合いになります。
劇伴にはとても多くボーカル、コーラスが採用されていて、それがリズミックなものから、感情的なシャウトに至るまで、多く採用されています。
ちなみにボイスという魔術のような、精神操作のような技も声の一環になりますね。
ということで今回はいくつかの声の種類を見ていこうと思います。
いったいどのくらいの種類、使われていたか気になるところですね。
声の使われるシーン1 コンプレッサーのかかった声
まずとても興味深いのは、
1:12:37
サルーサ・セクンドゥスという帝国軍の惑星に軍隊が集められているシーンです。
ハルコネン軍とサーダカーという親衛隊が集められて、なんだか開戦前に儀式のようなことをしていて、そこでは低音のブウンブウンした声が響き渡っています。
これは劇伴と取ることができます。
字幕が出ないのがその理由ですね。
その後の謎の言語を喋っているシーンでは、会話に対しての字幕が出ています。
先ほどの声の他に音はないのですが、これは立派な映画音楽ですね。
それと興味深いインタビューがありました。
あの声は、マイケルさんという歌手の方の声らしいのですが、その声には聴いて明らかなほどにコンプレッサーがかけられています。
このコンプレッサーある一定の音の大きさ(レベル)を超えないようにする効果で、小さい音を大きくしたりする使い方もできます。
例えばこんな感じです。
(演奏)
少しわかりづらくはあるのですが、ある意味で迫力のある声を作ることもできます。
そのため、ここでは非常に強くコンプレッサーをかけることで、威圧的かつ人のようで人を超越したような、近寄りがたい声質を作っているわけですね。
さらにおもしろいのが、このコンプレッサーというのは、発声した瞬間の音に圧がかかることをアタックと言ってかかり具合なんかを調節できる項目があります。
その時のコンプレッサーのかかった具合をアタック感とか言ったりしますが、このアタック感を活かすために、音節を短く保って作曲されています。
ずっと音が伸びたままだと、アタック感は得られません。
さらに、音に反応して効果を発揮するので、一度音が切れないと、コンプレッサーはかかりっぱなしになってしまいます。
それらを防ぐために、わざと音節を短くして、言葉が切れるように調節しています。
これは素晴らしい発想ですね。
この音階のない言葉の羅列ような音は、意図を生むためにいろんな仕掛けがされていたわけですね。
ちなみに
0:05:13
のポールさんが母に水をくれるように、ボイスという精神操作のような技を使ったシーンでも、アタック感の強い音で「ギブミーアウォータ」と言っていますね。
特に初めの声になるかならないかの音がそうですね。
声の使われるシーン2 コーラス
あとは、普通にいわゆるコーラスも使われています。
一番わかりやすいシーンだと、
0:03:15
のタイトルのシーンです。
これは全体的にそうなのですが、神秘性の追加ですね。
この映画は基本的に神秘的な雰囲気で包まれています。
スパイスという貴重な資源がある砂の惑星が登場したり、主人公は自分が体験したことのない不思議な夢はみるし、母はちょっと魔女ってるしで、機械文明が発達しているのと神秘的な要素の両方がでてきます。
そのためコーラスは非常に相性がいいです。
この他にもサスティーンで音価の長いコーラスというのは頻繁に登場しますね。
声の使われるシーン3 リズムを含むコーラス
他のコーラスも見ていくと、ちょいちょい登場するのは
1:29:29
ポールさんと母が捕まってトンボみたいな飛行機に乗せられている時に、ボイスを使って同士討ちさせるシーンです。
この時のコーラスはリズムの要素を持っています。
コショコショコショといった小声でなんか喋っているような、そんな声が右と左ダブルで聴こえてきますね。
先ほどとは違った意味での神秘性ですね。
それとなんだか怖くも聴こえてくる小声コショコショコーラスは、ボイスという力の恐ろしさの表現にも一役買っています。
少しニュアンスは違いますが、
0:29:20
試練を終えて帰る教母様のシーンです。
ここではたっぷり空気を含んだ小声のようなコーラスが登場します。
小声という共通点しかないですが、教母様もいわば魔女。
ある種の恐ろしさを感じさせています。
声の使われるシーン4 感情的なコーラス
つぎに
0:25:58
教母様による試練のシーンや
1:33:32
父の死を勘付いてしまったポールさんと母のシーン、
1:55:49
帝国の監察官であり、最後まで一緒に逃げてくれたリエト・カインズさんが敵を道連れにサンドワームを呼ぶシーンなどで、非常に感情的なコーラスが登場します。
これはロワール・コトラーさんというボーカリストで、激情的なボーカルがこの映画でもとても印象的で記憶に残りますね。
コナッコルもできるようなので、先ほどのコショコショ声のコーラスも彼女かもしれません。
この激情にかられたようなコーラスは先ほどの神秘性とはまた違った効果を生んでいて、民族的で原始的な感情表現としての効果を生んでいます。
歌というのは基本的に、感情表現ではあるのですが、歌詞があって、気持ちを乗せて歌うということではなく、一種の叫びに近い意味合いで使われています。
それが特にわかるシーンが
1:33:32
の父の最後で使われているボーカルです。
ここにいたっては、アーー!って叫んでますもんね。
このように叫びのような、ある意味で原始的なコミュニケーションがロワールさんによって表現されています。
声の使われるシーン5 民族的なコーラス
それと民族的な表現が強く出てくるシーンもあります。
0:42:08
使用人の候補を選ぶシーンから祈祷をしているシーンまでの間に登場します。
クリスナイフという、地元民には大切なナイフをジェシカさんに渡すのですが、この時に民族的なコーラスが登場します。
しかしここではジェシカさんと使用人とのやりとりがあるので、セリフにかぶらないように、慎重にメロディラインが構成されています。
そしてその後、地元の人たちが祈祷をするシーンが登場します。
このシーンではセリフがないので、これでもかってくらいに民族的なコーラスが登場しています。
このあたりの作曲の仕方はさすがの見せ方だと感心してしまいますね。
声の使われるシーン6 吐息混じりのコーラス
最後に非常に吐息混じりのコーラスも登場します。
0:11:43
ポールさんがダンカンさんに夢を思い出しながら話をするシーンです。
この時に砂の惑星にフレメン族の戦士であるチャニさんを見ます。
砂の舞う世界でシュワ〜みたいな、ほとんど息のようなコーラスが登場します。
これは砂が風で舞うような、空気の通る音に聴こえてきます。
声について まとめ
このように、非常に多彩なコーラスの表現がたくさん使われています。
今までの映画音楽では、ライトモチーフや、メロディ、ハーモニーの進行などを揃えることで、一貫性を持たせて分散しないように表現されることが多かったです。
しかしこの映画では、これまでのメロディ、ハーモニーによる表現だけではなく、演奏方法や楽器などで、ライトモチーフのような効果を生んでいます。
さらに、もはやなんの音かわからない音まで登場しているので、全く新しい映画音楽のあり方と言ってもいいかもしれません。
インタビュー映像でも、別の楽器同士を組み合わせて新しい楽器を作ったり、この世に一つしか存在しない新しい楽器を用いていると言っていたので、聴いてなんの楽器かわかるはずもないですよね。
わからなかったら、すぐシンセサイザーか?と思ってしまいますし。
そんな話は次回にしようと思います。
【エンディング】
今回はバグパイプとコーラスについての話をしました。
バグパイプはギターだったっていうのは驚きですね。
実際のバグパイプの音も使われているので、どっちも使われているわけですが風の谷のナウシカの王蟲の声が布袋寅泰さんのギターの音だったくらいの衝撃です。
コーラスもとても表情豊かで、マイエレメントでもそうでしたが、さまざまな声での表現がまだまだ新しい表現として、映画音楽に生かされているのはとても興味深いですよね。
次回もDUNEとサブスクリプションでは「ライオンキング」をやろうと思います。
振れ幅がすごいですが、素晴らしい楽曲たくさんありますもんね。
楽しみにしていてください。
サブスクリプションでは過去の特別エピソードも聴き放題で初月無料、月額300円で聴くことができます。
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あと映画にみみったけでは、お便りも募集しています。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
ではまた!
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