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#66【ジョーカー】ep.2「ソースミュージックに隠されたJOKERの真実」

※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#66にあたる内容を再編集したものです。

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【ジョーカーについて】

 2019年公開
(続編の『Joker: Folie à Deux(邦題未定)』が2024年公開予定)
 監督:トッド・フィリップス
 音楽:ヒドゥル・グドナドッティル

登場人物

 アーサー・フレック / ジョーカー:
 ピエロとして働きながらコメディアンを目指す男。
 突然笑いだしてしまう病気に苦しむ。
 
 ペニー・フレック:
 アーサーの母。
 
 マレー・フランクリン:
 テレビ番組「マレー・フランクリン・ショー」の人気司会者。
 
 ソフィー・デュモンド:
 アーサーと同じアパートに住むシングルマザー。
 
 ギャリティ刑事:
 ゴッサム市警の刑事。
 
 バーク刑事:
 ゴッサム市警の刑事。
 
 ランドル:
 アーサーの同僚のピエロ。
 アーサーに銃を与える。
 
 ゲイリー:
 アーサーの同僚のピエロ。
 
 トーマス・ウェイン:
 ゴッサムシティの大富豪。
 
 ブルース・ウェイン:
 トーマスの息子。のちのバットマン。
 
 アルフレッド・ペニーワース:
 トーマス・ウェインの執事。

【ロックンロールパート2について】

 これは完全にお詫びなのですが、#65で話した内容に一部訂正というか僕が勘違いして話していた部分があったのでお詫びと訂正をいたします。
 ゲイリー・グリッターさんの「ROCK’N’ROLL (PART 2)」という楽曲を「ROCK’N’ROLL (PART 1)」と勘違いして話していました。
 これは完全に勘違いしていました。
 #65ではボーカルをミュートしたミックスのアンダーミックスの説明と「HEY~」という合いの手が追加されていること、ボーカルが入ってしまうとジョーカーが歌っているように見えてしまう可能性があるという話と、このシーンで重要なのはダンスだからという話でした。
 それと途中でギターの音がぶつ切りになっている話もしていますが、これらはそもそも原曲がそうだったという話でした。
 「ROCK’N’ROLL (PART 2)」では歌がないインストゥルメントの楽曲で、HEYという合いの手も入っていて、ギターがぶつ切りになっているわけですね。
 それはどんな演出かわからないわけです。
 聴いていて違うよと思った方も、思わなかった方も深くお詫び申し上げます。
 かといって内容が変わってしまうことはないので、そのまま聴いていただいて楽しめるものになっています。
 今後とも映画にみみったけをよろしくお願い致します。

【前回の振り返り】

 前回は映画音楽の概念と共にJOKERのシーンではどのように音楽が書かれていたかをみてきました。
 映画音楽はabsolute musicにあらず、なんて話から始まって、観客にどのような感情を与えたいか、また観客は何を観てきて誰に感情移入させたいかなんて話もしましたね。
 後はセリフと音楽が被らないようにする工夫の話であったりとか、セリフと同等な情報量を持っているSEの話もしました。
 SEにも音楽が被らないような工夫がありましたね。
 観客に与えたい音情報は音楽以外にもたくさんあるので、なにが1番優先度が高いかを考える必要があります。
 それとシーンの持つエネルギーやテンポを読み解いて音楽に反映するというお話もしました。
 さらに映画の場所や時代背景をソースミュージックや別の映画作品から想像させるという話もしました。
 あとはアンダースコアとサブミックスですね。
 これらのミックス方法はセリフや重要なシーンでメロディに耳が引っ張られないように、メロディを除外したミックス方法という話もしました。
 なんだか一本分話し切ってしまったような、くらい濃い内容をお届けできたんじゃないかなと思います。
 では今回はなんの話をしようか迷ったのですが、膨大に使われているソースミュージックを考察してみようと思います。

【ソースミュージックの考察】

 今回のJOKERには、既存の楽曲意外にも、映画やテレビ番組、CMなどの音楽も多数登場します。
 前回話した時代背景や世界観の他に、歌詞であったりどのようなジャンルが使われているかで映画の内容をさらに色彩豊かに彩ることができるのもソースミュージックの魅力のひとつです。
 しかし歌詞がナチュラルにネイティブな英語で入ってくるほど英語が堪能ならいいのですが、僕はそこまで英語はできないので、翻訳したり使われた意図を考察したいと思います。
 今回は少し長くなりそうなので、前後半に分けての配信になります。
 ということで今回は、映画で使われたソースミュージックの登場順で意味を探っていきたいと思います。
 映画に登場したソースミュージックはエンドクレジットで見つけることができます。
 曲名や作曲家、演者などがわかるようになっているので、楽曲を知らなかったり誰が歌っているかなどがわからなくても書いてあります。
 では順を追ってソースミュージックを見ていこうと思います。

TEMPTATION RAG

 まずは
 1:38
 ヘンリー・カボット・ロッジさん作曲 クロード・ボリングさんの「TEMPTATION RAG」という楽曲です。
 映画冒頭、ピエロの格好をしたアーサーさんが看板を持つ仕事をしているシーンです。
 この「TEMPTATION RAG」という楽曲はラグタイムピアノという、アメリカ合衆国で19世紀末から20世紀初頭にかけて発展した音楽ジャンルです。
 映画で初めてラグタイムピアノを用いたのは映画「ザ・スティング」ですね。
 「ザ・スティング」は、1930年代のアメリカを舞台に、詐欺師たちが大胆な詐欺計画を実行する姿を描いています。
 もしかしたらこの映画と少し重なるところがあるかもしれませんね。
 「ザ・スティング」は最後に大どんでん返しがある映画で、それもこの映画とどこか似ている感じがします。
 映画冒頭では、部屋の中でアーサーさんがピエロのメイクをして泣いているところから始まります。
 この時ラジオかテレビから不景気なセリフが話されていて、オープニングクレジットと共に街が映し出されて「TEMPTATION RAG」が演奏されます。
 このギャップが映画に一気に引き込んでくれる仕掛けになっていますね。

HERE COMES THE KING

 つぎに
 10:37
 スティーブカルメンさんの「HERE COMES THE KING」という楽曲です。
 アーサーさんがカウンセリングから帰ってきた家の中で聴こえてきます。
 これは前回も少し触れましたが、改めて触れていこうと思います。
 この楽曲は1971年に発表されていて「The King of Beers」をスローガンとするバドワイザーのために書かれた有名な広告ジングルだそうです。
 タイトルにもある通り、キングという単語が歌詞にも良く登場します。
 特に気になったのは「Let's hear the call you've waited for, yeah」という歌詞が少し気になりますね。
 翻訳すると「待ち望んでいた呼び声を聞かせて、イエー」みたいな感じだと思うのですが、映画後半のピエロムーブメントになる流れに少し類似しているようにも感じますよね。
 これはバドワイザーの広告ジングルというだけあって、実際は待ち望んでいた声とは乾杯的なことだとは思うのですが「こちらが王様」や「こちらが大本命」など、まさにアーサーさんがのちにピエロムーブメントのアイコンとなるシーンとどこか重なる歌詞ですね。
 実際ジョーカーはキングというニックネームで呼ばれることはないので、あくまでも状況が似ているということになりますね。

EVERYBODY PLAYS THE FOOL

 つぎに
 15:46
 ザ・メイン・イングレディエントさんの「EVERYBODY PLAYS THE FOOL」という楽曲です。
 ロッカールームでランドルさんがアーサーさんに護身用と言って銃を渡すシーンです。
 これはタイトルの「EVERYBODY PLAYS THE FOOL」が非常に効いていますね。
 簡単に翻訳すると、「誰もが愚かなことをする」という感じだと思うのですが、歌詞の内容はポジティブなのですがこの映画でのなんとなく悲しい聴こえかたがするのはとてもいいですね。
 歌詞ですが、「Okay, so your heart is broken You sit around mopin’ Cryin', cryin’ You say you're even thinkin’ 'bout dyin’ Well, before you do anything rash, dig this」という歌詞がヴァースに登場します。
 これをなんとなく訳すと「大丈夫、君の心は壊れたんだね 座り込んでうなだれている 泣いて、泣いて 君は自分が死ぬことさえ考えているって言う まあ、何か無茶なことをする前に、これを聞いてみて」という感じになります。
 明るく励ますような歌詞ですね。
 これが流れている時に護身用だと銃を渡されるので、アーサーさんも受け取ってしまうわけですね。
 この銃がのちに大変なことになるのだからよくできた映画ですね。
 ちなみに楽曲は1972年にリリースされたものなので、Here Come The Kingと時代が合っています。

THE MOON IS A SILVER DOLLAR

 そしてつぎが
 20:57
 ローレンス・ウェイクさんの「THE MOON IS A SILVER DOLLAR」という楽曲です。
 同じ階に住むソフィーさんと軽い会話をした後、母をお風呂に入れてあげるシーンです。
 この楽曲の歌詞をざっくりまとめると、恋人である君を手に入れたら僕は大富豪といった感じの、お金を比喩に使ったラブソングです。
 ここはかなり明確に音楽が提示されています。
 この楽曲の演奏が始まるタイミングでの、ソフィーさんとの出会い、それと母との会話でウェインさんに貧困状態にある現状への救済を記した手紙の話、などがシーンでは登場します。
 この時、楽曲の通りソフィーさんとラブソングのような出会いをしたと思っているアーサーさん、ウェインさんは善人であり救済してくれるという母。
 これらが楽曲の歌詞にうまくはまっているシーンですね。
 このあとアーサーさんがお金は気にしなくていい、というコメディアンで成功するような口ぶりのシーンでは演奏が止まっているのも非常に印象的です。

SLAP THAT BASS

 つぎに
 22:05
 フレッド・アステアさんの「SLAP THAT BASS」という楽曲です。
 アーサーさんがランドルさんに手渡された銃を持って、なにやらカッコつけたり踊ったりするシーンです。
 TVから流れる映画の1シーンで演奏されているものが使われています。
 この映画は「シャル ウィ ダンス」という1973年に上映された映画ですね。
 邦題は「踊らんかな」というタイトルで、ミュージカル・コメディ映画として知られています。
 古典舞踏家のロマンスを描いた作品で、第10回 アカデミー賞を受賞しています。
 当時のスラップはジャズ初期の時代なので、ダンサブルでイケている演奏方法ということになりますね。
 そしてこの時に一人芝居をはじめます。
 「名前は?」
 「アーサー」
 「アーサーあなたはダンスがうまい」
 「まあね」
 おそらくはソフィーさんとの会話をイメージしているのでしょうか。
 「シャル ウィ ダンス」という映画は名前の通りダンスの要素を多く持っています。
 タイトルにある通りアーサーさんの一人芝居が、ダンスの話になっています。
 そしてなんと、「シャル ウィ ダンス」のラストでは、踊り子全員が主人公の思い人であるリンダさんの顔のお面をつけて踊ります。
 意味こそ全然違いますが「JOKER」のピエロのお面と似ていますよね。
 このような類似点があるシーンでした。

IF YOU’RE HAPPY AND YOU KNOW IT

 つぎに
 28:04
 チャイム・タンネンバウムさんの「IF YOU’RE HAPPY AND YOU KNOW IT」という楽曲です。
 この楽曲は日本だといわゆる童歌というか遊び歌のような楽曲で、IF YOU’RE HAPPY AND YOU KNOW ITの後を変えて、さまざまなバリエーションで楽しむことができるそうです。
 「JOKER」では耳を動かそうや足を鳴らそうという歌詞にしてみんなで遊んでいましたね。
 これはどうなんでしょう、ただ子供と楽しむための楽しい歌としてチョイスされたように思えますね。
 この時の楽曲が楽しければ楽しいほど、銃を落とした時のギャップがたまらなく怖いですね。

MY NAME IS CARNIVAL

 つぎに
 36:58
 ジャクソン・C・フランクさんの「MY NAME IS CARNIVAL」という楽曲です。
 ピエロの仕事をクビになって、ロッカーを片付けている時のシーンです。
 この楽曲の歌詞は非常に難しく、さまざまな解釈の余地を残しているので、僕なりの解釈を加えた上で話を進めます。
 まず「My name is Carnival」という歌詞が登場します。
 カーニバルと名乗るキャラクターの思いを告げるようなコンセプトになっています。
 そのカーニバルはとても壊れやすく不安定なものでできていて、孤独や崩れていく様子であったりを歌っています。
 これはどうも孤独と苦悩のようなとてもネガティブな印象を受ける歌詞として捉えることができます。
 そして「And if I'm to be a symbol Of love and youth and art Then why am I falling apart?」という歌詞が登場します。
 これは「愛と若さと芸術の象徴になるべきなら なぜ私は崩れてしまうのでしょうか?」という訳をすると、若い頃に抱いた情熱や夢が無惨にも崩れ去っていくというような、これまたネガティブな印象を受けます。
 さらに「なぜ私は崩れてしまうのでしょうか?」という疑問を投げかけています。
 それはもしかしたらカーニバルというキャラクターが人生必ずしも順調には進まないことを象徴しているようにも感じさせますよね。
 とにかくアーサーさんはそれくらいネガティブな状態といいますか、孤独と苦悩、無情な現実を受けていると感じとることができます。
 ちょっと悲しすぎますね。
 さらにカウンセリングでアーサーさんは、この楽曲について触れています。
 それはラジオで聴いた曲の主人公はカーニバルで、アーサーさんのピエロで活動していた時の名前もカーニバルであるという話をします。
 まさに「MY NAME IS CARNIVAL」と同じ状況にあるという話ですね。
 カウンセリングではその話が広がることなく終わってしまいます。

SMILE

 つぎは、
 45:06
 ジミー・デュランテさんの「SMILE」という楽曲です。
 スタンドアップコメディの舞台にアーサーさんが立って、喋っている途中から演奏が始まります。
 この楽曲の歌詞はどんな困難や苦境にも笑顔を忘れず前向きに生きよう的な意味が込められた楽曲です。
 その状況が皆を笑顔にするという意味と自分も緊張して笑ってしまうという意味をあわせ持ったちょうど良い楽曲なのですが、問題が一つあります。
 それはこの楽曲が流れ始めてからアーサーさんの声が消えて、観客の笑い声と楽曲だけになります。
 そして同じ階に住んでいるソフィーさんが観客席から笑っています。
 これは全てアーサーさんの妄想ですよね。
 要はこの楽曲が流れ始めてからアーサーさんの妄想の世界に入ります。
 恐らくは誰も笑わず、ソフィーさんもいません。
 ちょっともう怖いシーンです。
 歌っているジミー・デュランテさんもコメディアンで作曲はチャーリー・チャップリンさんです。
 チャーリー・チャップリンさんはJOKERでも映画モダンタイムスが登場しますし、ジミー・デュランテさんは鼻が大きい特徴を持ったコメディアンでした。
 鼻が大きいと言えばピエロといった具合に関連性も少し感じますよね。

THAT’S LIFE

 つぎは、
 46:49
 インストゥルメントバージョンの「THAT’S LIFE」です。
 椅子でウトウトしている母をベッドまで運ぶ途中で、うかれて手を取り踊り出すシーンです。
 この時はTVから流れてくるマレー・フランクリン・ショーのエンディングで演奏されている音楽ということですね。
 なので、歌のないインストゥルメントバージョンということになります。
 先ほどのシーンのあとなので、ソフィーさんと一緒にいたことでおどけているシーンにみえますが、あれは妄想だったのでなんとも言えませんね。
 さらにアーサーさんはマレー・フランクリンさんへの憧れの気持ちもあるので、セリフを真似したりします。
 そのセリフが「THAT’S LIFE」でなんとなくアメリカンジョーク味がありますよね。
 そんな憧れの人の番組のエンディングで踊ったようにも見えるシーンですね。

モダンタイムス

 つぎは、音楽ではなく映画のワンシーンです。
 1:03:17
 チャーリー・チャップリンさんの「モダンタイムス」です。
 この映画の物語は、工場で働く普通の労働者が主人公です。
 彼は工場の組立ラインでボルトを締めたり、ボルトを緩めたりする仕事をしていますが、機械化された生産ラインの速さや効率についていけず、仕事を続けることができなくなります。
 その後、彼は工場のトラブルメーカーとして扱われ、さまざまな仕事を試みますが、どれもうまくいかず、失業してしまいます。
 そんな中、経済的な困難に直面する中で、彼は一人のホームレスの女性(エレンさん)と出会い、彼女と共に困難を乗り越えようとする話です。
 まさにアーサーさんと重なりますよね。
 しかし大きく違うのは恋人の存在です。
 ソフィーさんとはアーサーの妄想の中でだけ仲良くしています。
 ということはアーサーさんは現実と妄想の中でモダンタイムスみたいに生きている感じにしていたわけです。
 この時にモダンタイムスが上映されていたのもJOKERとの親和性だったということですね。

THAT’S LIFE 2

 つぎに、
 1:24:27
 ここで今一度歌ありで、フランクシナトラさんの「THAT’S LIFE」が演奏されます。
 このシーンでアーサーさんは髪の毛を緑に染めて、白塗りをしてピエロのメイクをするシーンです。
 「THAT’S LIFE」には人生楽ありゃ苦もあるさ的なことを歌っている歌です。
 この後にアーサーさんはマレーフランクリン・ショーに出演するので、彼にとってはいろんな意味でチャンスになります。
 まさに山あり谷ありがそのまま表現されてますよね。
 この楽曲は1番2番3番で構成されているのですが、1番では4月は順調、5月はダメだったけど、6月はまた頑張るといった内容で、2番が夢や希望を踏みにじってくる人もいるけど、それでも立ち上がるといった内容です。
 3番はそれぞれの役職や立場を経験したことで、成功や失敗を経験しても立ち上がる強さを持っているというような内容です。
 特に2番の歌詞が面白いですね。
 夢や希望を踏みにじってくる人もいるけど、それでも立ち上がるというのはこの後のシーンにかかってきます。
 護身用だといって半ば強引に銃を渡してきたランドルさんを手にかけてしまったり、マレーフランクリン・ショーではアーサーさんをジョーカーと呼び、番組で笑い者にするために出演を依頼していたりと、見事に歌詞にかかっていますね。
 出演するまでは、マレーフランクリン・ショーの別の回を観て登場シーンを練習したりしていたので、彼にとっては大きなチャンスと思ったのでしょう。
 そこもこの楽曲と重なるところがありますね。

ROCK’N’ROLL (PART 2)

 つぎに、
 1:30:22
 ゲイリー・グリッターさんの「ROCK’N’ROLL (PART 2)」という楽曲です。
 ここですね、僕が間違えていたところです。
 今回はしっかりPart2ということを踏まえて話していきたいと思います。
 なぜこの楽曲が選ばれたかを考えていくと、やはり圧倒的にシーンをカッコよく彩っていますよね。
 それと着目したのは階段であることと、踊っていること、それと当時のロックシーンの捉え方とゲイリーグリッターさんの正体が重なるように感じました。
 この楽曲は70年代にイギリスでグラムロックとして大ヒットを収めています。
 「ROCK’N’ROLL PART 1」ではリスクを冒すことや遊びたいという気持ちが含まれた歌詞になっています。
 そして踊るということも歌詞に登場します。
 このことはアーサーさん自身の危うさと階段で踊る危うさが重なっているように感じます。
 当時のロックはやはり踊りたくなるようなエネルギッシュさがあるので、踊るアーサーさんがとてもエネルギッシュにみえますよね。
 そしてゲイリー・グリッターさんは本名ポール・フランシス・ガッドさんという方で、ゲイリー・グリッターというのは、キャラクターとして演じていたそうです。
 このなにかを演じているということが、ピエロの化粧をしたアーサーさんとまた重なりますね。
 あと階段は冒頭でも登場していて、うなだれるようにして登っていた階段をダンスしながら降りていくというのはなかなか痺れる演出ですね。
 とんでもない犯罪者になってしまったアーサーさんは地の底まで踊りながら落ちていく的な意味とかかっているんですかね。

SPANISH FLEA

 つぎに
 1:45:59
 ヘルブ・アルパートさんの「SPANISH FLEA(スパニッシュ フリー)」という楽曲です。
 マレーフランクリン・ショーが完全な放送事故になり、放送の切り替わるシーンです。
 この楽曲はTVのBGMとして有名な楽曲で、おそらくアメリカでは馴染み深い楽曲なのかなと思います。
 日本にいても耳にする機会がある楽曲なので、放送の切り替えで使われていても違和感がないですよね。
 なんだったらリアリティがあって、その後のニュースキャスターがマレーフランクリンさんの死を報道しているシーンはゾッとするくらいリアルな表現に感じます。

WHITE ROOM

 次に
 1:46:35
 クリームの「WHITE ROOM」という楽曲です。
 街で暴動が激化して、それをパトカーで連行されているアーサーさんことJOKERが眺めているシーンで演奏されています。
 この楽曲は非常に抽象的で現実味のない歌詞が使われています。
 その幻想的で抽象的な楽曲「WHITE ROOM」から次のシーンは本当に白い部屋から始まるので、とても不思議な感じですよね。
 どうもアーサーさんらしき人の最後の一言を深読みしたくなる楽曲のチョイスですね。

THAT’S LIFE 3

 最後に
 1:54:03
 フランク・シナトラさんの「THAT’S LIFE」がまた登場します。
 最後の最後白い部屋でアーサーさんがカウンセラーの人に少し話をして、この楽曲がはじまりアーサーさんも笑いながら歌い出します。
 この時の歌詞が先ほど紹介した2番の歌詞が使われているのもいいですね。
 やはり、状況があまりにも合いすぎてアーサーさんの一連の物語にもハマっています。

SEND IN THE CLOWNS

 ちなみに最後は、
 1:55:49
 のエンドクレジットで、フランクシナトラさんの「SEND IN THE CLOWNS」という楽曲が登場します。
 タイトルにもある通り、クラウンズはピエロのことで、歌詞にもピエロを呼んでというフレーズがよく登場します。
 このピエロの歌詞は2番に登場していて、喜劇と悲劇、夢と現実の境界が曖昧になっているような歌詞が登場していることから、この映画はそのような意図を含んでいるかなと考えてしまいますね。

【エンディング】

 ということで、ソースミュージックについてまとめましたが、どのシーンも非常に痺れる演出でしたね。
 今回は歌詞を読んでつたない翻訳をしたのですが、ネイティブに歌詞が読み取れる人はさらに感動できると思うので、非常に羨ましいです。
 英語が堪能だと本当に人生が何倍も楽しくなりそうですね。
 
 2回にわたって映画JOKERやってきましたが、とても面白い仕掛けの数々でしたね。
 ヒドゥル・グドナドッティルさんの映画音楽もとんでもなく細部までこだわっていましたし、なんせどこをとってもしっかりと映画音楽の作り方を忠実に守って、新しいことをしているのには感動しました。
 非常に親密な決して派手ではない楽器編成で統一感を与えつつも全く聴き劣りしない楽曲の構成には映画音楽の夜明けを見た気がしました。
 というわけで、サブスクリプションでは映画「レヴェナント: 蘇えりし者」から一曲やろうと思います。
 この楽曲は作曲は坂本龍一さんなのですが、チェロを演奏しているのがヒドゥル・グドナドッティルさんということでとりあげていこうと思います。
 では次回なのですが、映画「レオン」を2回にわたって取り上げようと思います。

 最後までお読みいただきありがとうございました。
 映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
 podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
 ではまた!

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