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原宏一

『星をつける女』を読んだ。
星というのはあのミシュランのことだ。ここにハッキリとそうと出ているわけじゃないけど。格つけ星&フランスの会社となれば、もうそれしかないでしょう。
原宏一には、食小説(としかいいようがないもの)がいくつもあって、それはいつの頃からだったのだろうと、ふと思った、のだけれど、考えてみれば(考えなくたって)、原宏一は『とんかつ協議会』(’97)でデビューしたのだった。

その後、『こたつ』やら『床下仙人』やら『極楽カンパニー』やら『姥捨てバス』やら『ムボガ』『爆破屋』『穴』『東京箱庭鉄道な』『大仏男』などなど、奇妙な設定の小説を何作も発表してきていて、
何百年の伝統文化「こたつ道」とか、日本じゃぜんぜん売れなかったバンドが遠くアフリカで第ヒットしちゃう(『ムボガ』)とか富士山樹海に暮らしてる老人(『穴』)とか、とか、まったく、どぉ~っからこぉ~~んな発想出てくんのよ~(゚o゚;)って感じで。しかもそれを小説にみごとに仕立てあげちゃうんだから!

食とは関係ないようなものが続いていた。
けれども。
検索してみたら、おそらく、2009年の『ヤッさん』(第一作め)から、食小説が増えているという印象、ありあり。
その翌年に『佳世のキッチン』がでて、それから、『握る男』『ヴルストヴルストヴルスト』『閉店屋五郎』(まぁこれは食小説とは言えないかもだけど)、そして『星をつける女』。

『ヤッさん』の着想もすごかった。確かに、ホームレスの人の食べ物入手方法は残飯だったりするだろけど、そこから東京中の?その時間帯とかさらには台所事情とか、そこまでの事情通のホームレスっていう人物設定が、凄い!と思う。
『佳世のキッチン』も、然り。

『閉店屋五郎』は、中古品買い取り販売屋。
で、ただ単に買い取って売るだけじゃなくて、閉店作業一括仕事もやっている。扱う品目も、厨房や店舗品だけじゃなくて、床屋理容品やライブハウスでのPAアンプ品など、なんでも、店舗内備品一括買い取り。だから「閉店屋」。だけど、ただ単に買い取って売って儲ければいいという男ではなくて、閉店する(しなければならなくなってしまった)お客側の事情にまで踏み込んでしまう、お節介、世話焼き、人情家。
利益度外視で突っ走ってしまったりことに女性には甘くなってしまう、我々男性にとっては愛すべきキャラで、そこらのたずな引き役に一人娘がいる。

そうして、『星をつける女』。
ただ、星をつけるだけじゃあないんだな。
もちろん、星をつけるために、どれだけのことをしてるかっていうところも描かれているわけだけど。
三章の連作短編集になっている。
フランス料理店、ラーメン店、そして南紀白浜の老舗ホテル、が登場する。
主人公女性の牧村紗英もシングルマザーで一人娘がいる。
発表順をみたら、『閉店屋五郎』のが先だった。『星をつける女』は、閉店屋五郎の女性バージョンみたいだ。

もしかしたら、原宏一にも娘さんがいるんじゃないだろうか?などと思えてしまう。

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