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『サバイバーミッション』。岡田尊司①


小笠原 慧・著。本名、岡田尊司

この本の前に、『D Z』を読んでいる、けれど、だいぶ前のこれでかなりうろ覚えになっている。
なので、比較的最近読んだ『サバイバーミッション』を、先ずアップする次第。

 著者のプロフィールやこの作品内容等については、ここであまり触れない。  

私がここで書きたいのは、「ドクターキシモト」という存在に関して。
「ドクターキシモト」は、ラップトップ型のパソコンにインストールされた(実体をもたない)プログラム。見ためは、PCの三次元ディスプレイに投影された3Dグラフィック。  
 ホログラフィみたいなものか。 主人公役の特別捜査官、麻生利津と共に、事件を解決に導くパートナー。
 ドクターキシモトは、岸本達明という実在した人物の脳内記憶をトレーシングして得られた情報をディジタル化、プログラミングされたもの。
 詳しいことは、これまた本作を読んでいただきたいのだが。   とにかく、岸本達明のかなりの記憶情報が、ドクターキシモトに組み込まれていた。
そう、かなりの。つまり、全部ではなかった。
  ひとつには、そもそもの岸本達明の脳の損傷がかなりのものだったためだが、それだけではなかった。
 プログラミング、インストールの際、なんらかのプロテクトをほどこされているようだった。 あるいは、逆に、インストール情報が作為されていた。

 従って、対話型知的エージェントでありながら、麻生利津との対話において、ドクターキシモトの〈記憶〉が不明瞭なため、麻生利津はもどかしさを感じるのだ。

 ここがかんじんのとこ。
 写真がバラバラに入っているアルバムみたいなもの。
そこに移っている人物は自分であるとの認識はあるけれども、 いつ、どのような状況で撮影されたものなのかの、バックグラウンドが曖昧で、 しかるに、そのバラバラな写真を時系列に並べられない。 
まして、写真のバックグラウンドは思い出せない。
 そんな状況。

 これはもどかしい。

ドクターキシモトは、従って、インストールされてある情報だけをもとに、利津との対話によって得られたものも加えて、新に情報を組なおしていく。
 あるいは、バイパスを形成しようとする。
 これが、私にはかなり刺激的だった。

実は、麻生利津もまた、幼児期の記憶があいまいだった。
 幼い頃に事故で両親とも亡くしてして、 自らの記憶が封印されていたのだ。
 これは、私自身にもあてはまるといえる。私の場合は、母親の記憶に関してだが。   生母が亡くなった時、私は六歳だった。その頃の記憶があってよさそうなものだが、私はまずほとんど思い出せないのだ。 その後の継母がきてからの小学生時代にしてもしかり。  

 
  ……
人間の脳容量、あるいは、記憶情報のメモリー、何テラバイトになるものなのか判らないけれど。
 脳の僅かな電気的信号をとらえてディジタル化し、記録、それをプログラミングしたという、少しばかり未来の設定になっている。
 その人物の、少なくとも生きていた記録が残される。
  ありえなくない。


としたら。
  私は、自分の記録が残されることを希望するだろうか。  ?

  あ。 残されちゃまずいこともありました。(^^ゞ

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