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絵も物語もレベルの高いアニメーション映画 『THE FIRST SLAM DUNK』

2022月12日3日(土)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 宮城リョータは沖縄出身。小学生の時に父が亡くなり、一家の新しい大黒柱として期待された兄も海の事故で亡くなった。母はリョータと妹を連れて沖縄から神奈川県に引っ越す。

 兄の影響でバスケット選手になったリョータは、湘北高校に入学してバスケ部に入部。だが身体の小さなリョータは、なかなか試合で使ってもらえる機会がなかった……。

 インターハイに出場した湘北高校は、二回戦で全国屈指の強豪校、優勝候補筆頭の山王工業と対戦する。前半を接戦で折り返した両校だったが、後半に入って山王工業の猛攻がスタート。一時は20点の差を付けられるが、湘北の選手たちは諦めることなく戦い続ける。

 じつはリョータには、この山王戦に賭ける秘かな思いがあった。だがそれは他の選手も同じ。それぞれが、それぞれの思いを胸に、この苛酷な試合を戦っているのだ。紅と白のユニフォームをまとう選手の熱い闘志が、バスケットコートの上で火花を散らせる。

■感想・レビュー

 原作が少年ジャンプで連載されたのは、1990年(平成2年)から96年(平成8年)まで。テレビアニメは1993年(平成5年)から96年までの放送。テレビアニメの放送に合わせて劇場映画も何本か作られているようだ。今回はそれから四半世紀ぶりに作られた新作劇場映画。原作では脇役の宮城リョータを主人公にした、もうひとつの『SLAM DUNK』だ。

 映画の印象としては、技術的に感心したことが大きい。井上雄彦の現在の絵が、そのまま動くのには驚いた。映画導入部の沖縄時代のエピソードは、線のタッチや色使いが完全に井上雄彦の世界。原作が描かれた30年以上前の絵ではなく、『バガボンド』や『リアル』を踏まえた今現在の絵になっている。

 今回の映画については「井上雄彦の絵を動かす」というのが、ひとつのテーマになっているのだと思う。それは映画のオープニングタイトルで、スケッチ風に描かれたキャラクターが動き始めるシークエンスからも明らかだ。これは観客に対して「この絵をこう動かしますよ」というプレゼンテーション。ここで一気に引き込まれてしまう。

 物語の構成としては、湘北VS山王工業の試合を展開させながら、そこにリョータたち選手の過去のエピソードを挿入する回想形式。しかしここで挿入されるのはリョータのエピソードだけでなく、両校の選手たち複数名のエピソードが抜粋しては取り込まれている。

 回想形式の構成を用いながら、同時にグランドホテル形式の群像劇にもなっている。構成としてはとても複雑。これだけの情報をよくぞ2時間にまとめたものだと思う。

 原作の脇役キャラを主役に引っ張ってきたわけだが、今回の映画のテーマも「脇役から主役へ」になっている。優勝候補の山王工業を、無名の湘北高校が破るという主役交代劇。だが中心になるのは、兄ソータから弟リョータへのバトンタッチというドラマ。スポーツドラマであると同時に、家族の物語だ。

ユナイテッド・シネマ豊洲(2スクリーン)にて 
配給:東映 
2022年|2時間4分|日本|カラー 
公式HP: https://slamdunk-movie.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt15242330/

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