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モノクロ変換された敗戦後の東京をゴジラが襲う 『ゴジラ -1.0 / C』

1月12日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 太平洋戦争末期の昭和20年初夏。特攻作戦に出撃した敷島浩一は、零戦の故障を口実に小笠原大戸島の守備隊基地に緊急着陸する。だが整備兵がいくら見ても、機体の故障は見つからなかった。敷島は作戦参加を放棄し、途中で逃亡したのだ。

 その夜、守備隊基地を謎の巨大生物が襲う。太古の恐竜を思わせるそれは、島民たちが語っていたゴジラだろうか。零戦の20ミリ機関砲でそれを撃てと言われた敷島だったが、いざ操縦席に座っても恐怖で身体がすくんで何もできない。守備隊は全滅。生き残ったのは整備兵の橘と敷島の二人だけだった。

 そして終戦。ようやく本土に戻った敷島は、家族が空襲で全滅していたことを知る。生きる目的を失った彼だが、ひょんなことから闇市で出会った若い女・典子と、彼女が連れていた赤ん坊・明子の三人で小さなバラック暮らしを始めることになった。

 だがそんな敷島の前に、大戸島で出会ったゴジラが再び現れるのだった……。

■感想・レビュー

 昨年11月から公開中の映画『ゴジラ-1.0』のモノクロ映像バージョン。オリジナル版から色を抜き取った疑似モノクロ版だが、単純にモノクロ変換したわけではなく、カットごとに適切な濃度や階調になるようこまかな調整をしているようだ。

 場面によってはこのモノクロ映像が、とても力強い効果を生み出している。例えば映画の最初に出てくる、敷島の零戦が大戸島に着陸する場面。もともとはCGだったと思うが、これが往年のミニチュア特撮みたいな質感に見えるのだ。これはその後の巡洋艦や駆逐艦の場面なども同じで、どれも観るものをワクワクさせるミニチュア特撮の世界になっている。

 とはいえ昔の白黒映画を見慣れた目からすると、このモノクロ映像版は物足りない部分もある。人物の芝居になると顔のヘンなところに不要な影ができていたりして、モノクロ時代の撮影所ならこんな無様なことにはなるまいにと思ってしまうのだ。

 映画は冒頭に古い東宝ロゴを出したりして戦後の雰囲気を出しているのだから、色味だけでなくカットのつなぎにも、ディゾルブやワイプやアイリスなどの古い表現を取り込んでみるとよかったかもしれない。

 僕はオリジナルのカラー版も観ているが、正直言ってあまり気分が乗らない映画だった。だがこのモノクロ版は、脱色処理によって物語との間にほどほどの距離感が生まれ、カラー版で気になったあれやこれやがあまり気にならなくなっている。主人公敷島をはじめとする登場人物たち全員の苦しみが、ひとえに「戦争」から来るものであり、ゴジラがその象徴であるという作り手の意図も素直に受け入れられるようになるのだ。

 これは実際には同じ映画を二回観たことによる学習効果もあるのだろうが、モノクロ映像によって生じた効果も大きいと思う。

 それにしても、デジタル撮影してモノクロ変換するという手法の面白さ。これは今後も、いろんな映画で活用していいのではないだろうか。

ユナイテッド・シネマ豊洲(4スクリーン)にて 
配給:東宝 
2023年|2時間5分|日本|白黒 
公式HP:https://godzilla-movie2023.toho.co.jp/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt23289160/

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