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消えゆく日本のキリスト教

 キリスト教人口が1%未満と言われる日本でも、少し大きな書店に行けば聖書が売られ、キリスト教の解説書が何冊も並んでいます。キリスト教徒ではなくても、キリスト教に興味がある人や、教会に行ってみたいと思っている人は、大勢いるのではないでしょうか。そういう人たちは、なるべく早く近くの教会に足を運んでみてください。

 僕はノンクリですから、布教が目的でこんなことを言っているわけではありません。僕が「なるべく早く」と言うのは、今ならまだ日本のあちこちに、大小さまざまな教会が残っているからです。試しにGoogleマップなどで、「教会」をキーワードに検索してみてはどうでしょう。家や職場の近くに、「教会」が何箇所もあることに気づくと思います。しかし残念なことにこうした教会の多くは、今後十年か二十年で、ほとんど消えてしまうと思うのです。

 日本のキリスト教は消滅寸前です。たぶんそう言っても、信者の人たちはさほど怒らないでしょう。長年教会に通っている熱心な信者ほど、教会の衰退ぶりを肌身で感じているはずだからです。

 僕はいまだにノンクリですが、随分長く教会に関わっています。子供のころは毎週のように教会に通い、成人してからは通ったり通わなかったり……。教会との付き合いは、もう半世紀近いのです。そんな僕の目から見ると、かつての教会には、人が溢れていたように思います。地方の小さな教会でも、一度の礼拝で数十人信者が集まったのです。

 子供たちを集めた教会学校(日曜学校)にも、多くの子供が参加していました。幼稚園児から小学生まで、学齢ごとに数人の子供がいるだけで、教会学校の規模は二十人前後になります。毎年夏になると、教会学校で泊りがけのキャンプに出かけます。春のイースターの時期にはイースターエッグとカードが配られ、冬にはクリスマスの聖誕劇をするのがお決まりでした。どの教会にも、そうした行事を行えるだけの子供と、それを支える大人たちがいたわけです。

 しかしそれは、遠い昔話になりました。現在ほとんどの教会では、毎週の礼拝出席者が数人から十数人です。教会に通う子供の数も激減しました。細々と教会学校を続けているところも多いのですが、出席する子供の数より、保護者や世話役の大人の方が多い状態でしょう。子供が完全にいなくなり、長く続いていた教会学校を廃止した教会も少なくないようです。

 教会の信者は、ほとんどが高齢者になっています。若い信者はほとんどいません。教会で「若い人」というのは、十代・二十代の若者のことではありません。現在の教会には、三十代から五十代の中年層すらいないのです。礼拝に出席すると、席に座っているのは白髪頭のお爺ちゃんとお婆ちゃんばかりです。

 キリスト教にはカトリックやプロテスタントなど、さまざまなグループ(教派)があります。しかしどのグループに属する教会でも、高齢化は平等に進行しているように見えます。何しろ若い人が入ってこないのですから、信者の平均年齢は年々上昇していくばかり。とはいえ人間の寿命には限りがあるので、ある程度の年齢になれば、自動的に上の方から抜けていく……。病気で教会に通えなくなったり、お亡くなりになるわけです。こうして教会から人が抜けても、下からの補充はありません。教会では高齢化と人口減少が同時に起きています。

 今後十年から二十年かけて、日本のキリスト教人口は間違いなく半減するでしょう。信者の数が半分になったあとも、教会を今のままので状態で維持できるところは少ないと思います。牧師に支払う給料のほか、礼拝に用いている建物の修繕費だって賄えなくなるかもしれません。

 そう考えたとき、現在日本のあちこちで、それぞれの伝統を守りながら小規模な礼拝を守っている教会が、十年後に集会を維持できているかどうかは疑問です。集会が維持できなくなれば、その教会は消えていくしかありません。

 だからキリスト教や教会に興味がある人は、なるべく早く近くの教会に足を運んでみてください。僕も最近また日曜日ごとに、近隣の教会を訪ねるようにしています。地方の小さな教会でも、高齢の信者たちが毎週の礼拝を行っています。

 年は取っています。昔のような元気はありません。それでもそこには、日本のキリスト教がまだちゃんと生きています。

2020/04/04
新型コロナウイルスの影響がありますので、教会に行くのはそれが落ち着いてからの方がいいかもしれません。

2020/05/04
新型コロナの影響で、多くの教会が日曜日の礼拝を取りやめています。これにより日本のキリスト教の衰退は、より加速することになると思います。

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