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映画の中には木村拓哉しかいなかった! 『THE LEGEND & BUTTERFLY レジェンド&バタフライ』

1月27日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 1549年。尾張の織田信秀と隣国美濃の斎藤道三は同盟関係を結び、道三の娘濃姫が信秀の嫡男信長のもとに輿入れする。「尾張のうつけ」と呼ばれる信長と、文武両道に秀でた濃姫は婚姻初日から衝突する。

 しかし同盟を維持するため離縁はできない。信長の父信秀は3年後(1552年)に病死。美濃ではその数年後(1556年)に、濃姫の父・道三が息子義龍と争って殺される。信長と濃姫は、互いの後ろ盾を失った。

 1560年。駿河遠江の今川義元が上洛のため軍を動かす。今川軍は織田領内を強行突破するつもりだ。これを迎えて打って出るか、それとも籠城して徹底抗戦するか。家中の意見はまとまらない。

 悩み悩んでいる信長に意見したのは濃姫だった。敵は大軍。味方は小勢。敵は勝ちを確信して油断があるはず。精鋭を率いて敵本陣を突けば、わずかながらでも勝機はある。空は雨模様。驟雨となれば、敵陣に接近する味方の気配も消してくれよう……。

■感想・レビュー

 戦国時代で文句なしの人気ナンバーワン武将・織田信長の生涯を、正妻濃姫の視点を通して描いた歴史時代劇。信長を演じるのは木村拓哉。濃姫を演じるのは綾瀬はるか。

 信長はこれまで無数の映画やドラマや小説やマンガの主人公になっている人気キャラクターだが、濃姫は婚姻と道三にまつわるエピソード以降は影が薄い存在だ。歴史資料の中では、彼女がその後どう生きていつ死んだかすらわからない。それだけに、彼女を主人公にすればドラマ作りの自由度は増すのだ。

 ただし似たような事は、既にNHKの大河ドラマ「麒麟がくる」でやっていた。ならば後発の映画は、大河にない視点で信長と濃姫の関係を描かなければならない。そこで映画は、物語を二人のラブストーリー仕立てにしたのだが、それが成功しているとは思えない。主演の木村拓哉と綾瀬はるかは、初々しい初恋をこじらせた主人公たちを演じるには、少々トウが立っているのだ。

 本能寺の変は1582年。信長と濃姫の関係は30数年だ。出会った時、二人はまだ十代半ばの少年少女だった。いっそこの時代は別キャストで初々しくぎこちない思春期のこじらせた恋物語を描き、二人の別居前後で木村綾瀬コンビにバトンタッチしてもよかったかもしれない。

 それにしても木村拓哉はすごかった。誰かが以前、役者とスターの違いについてこう語っていた。「自分から役になりきるのが役者。役を自分に引き付けるのがスター」なのだそうだ。この説によるなら、木村拓哉は間違いなくスターだ。この映画の木村拓哉は、最初から最後まで徹底して木村拓哉であり続ける。

 この映画を観ていても、スクリーンの中に一秒たりとも「信長」が現れたことはない。どんな衣装を着ようと、どんな台詞を喋ろうと、そこには木村拓哉本人しかいないのだ。これは木村拓哉が下手だと言っているのではない。この映画はそもそも最初から、木村拓哉に信長を演じさせようとする気がないのだ。

丸の内TOEI(スクリーン1)にて 
配給:東映 
2023年|2時間48分|日本|カラー 
公式HP:http://legend-butterfly.com/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt21192216/

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