見出し画像

ピクサーの大人向けアニメーション映画 『ソウルフル・ワールド(吹替版)』

4月12日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 公立中学で音楽講師をしているジョー・ガードナーは、校長から不本意な通知を受け取って苦り切った笑顔を浮かべる。それは音楽教師としての正式採用通知だった。

 仕事として安定した身分と収入が得られるのは、悪くないと言えば悪くない話だろう。だがジョーには、自分は音楽講師ではなく、ジャズ・ピアニストなのだという強い思いがあった。

 そんな彼に、今はプロのミュージシャンをしているかつての教え子から電話がかかってくる。有名ジャズ歌手ドロシア・ウィリアムズのライブで、ピアニストに急に欠員ができたという。そこでジョーに、臨時メンバーとして加わってもらいたいというのだ。

 ドロシアの前で演奏してみせると、彼女もジョーを気に入ってすぐ演奏メンバー入りへのOKが出た。これで俺の人生は変わる。浮かれた足取りで着替えのため自分の部屋に戻ろうとしたジョーは、その帰り道に事故に遭うのだった。

 気がつくと、ジョーは死んでいた。

■感想・レビュー

 ピクサー製作の長編アニメーション映画。本来は2020年夏に日本公開されるはずだったが、新型コロナウィルス拡大で劇場公開ができなくなり、同年12月にDisney+で配信された。

 しかし今年になって、コロナ禍で配信直行の憂き目を見た『私ときどきレッサーパンダ』や『あの夏のルカ』と共に、改めて劇場公開されることになったのだ。同時上映は「夢追いウサギ」。

 ピクサーの映画の中では、大人向けの作品になっている異色作だと思う。主人公は中年の自称ジャズ・ピアニストで、プロを目指しているが実態は臨時雇いの音楽講師。彼は成功の手掛かりとなるライブへの参加一歩手前で事故に遇い、生と死の狭間でさまざまなことを体験するという物語だ。

 主人公の境遇や立場は、とても身につまされるものだった。たぶん何らかの形で「好き」を仕事にしてフリーランスで働いている人なら、ジョー・ガードナーの気持ちに感情移入すると思う。彼が教員として正採用されたときに感じる、複雑な気持ちが僕にはわかる。

 彼は気持ちの上ではジャズ・ピアニストだが、それで収入を得て生活していくことはできない。だからアルバイトをする。教師の仕事がそれだ。でも自分の本当の仕事は音楽を教えることではなく、音楽を演奏することだと思っている。教師の仕事にはやりがいもあるし、それが嫌いだとか、辞めたいというわけではない。でもそれは本業ではないと思っている。だから正採用の通知をもらっても、素直には喜べない。

 僕も自分はライターだと思っているが、それでは生活していけないから今は他の仕事をしている。今の職場では重宝がられているが、じゃあそこで正社員にならないかと誘われたら、僕はどう感じるだろう……。ジョーと同じように、困ったような顔で笑うんじゃないだろうか。

 これは大人のためのアニメ。子供が観ても楽しいと思うが、ぜひ大人たちが観て、自分の人生について考えてもらいたい。

(原題:Soul)

TOHOシネマズ日本橋(スクリーン4)にて 
配給:ディズニー 
2020年|1時間41分|アメリカ|カラー 
公式HP:https://www.disney.co.jp/movie/pixar3
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt2948372/

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?