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アカデミー賞7冠のアクションファンタジー映画 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

3月3日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 エヴリン・ワン・クワンは、夫と共にコインランドリーを経営する中国系アメリカ人。日々の生活に追われて家族との関係もギクシャクしているが、納税申告のため訪れた税務署で、夫のウェイモンドがとんでもないことを言い出す。

 「今いる私はここにいる私ではない。宇宙はジョブ・トゥパキの魔の手によって、崩壊と消滅の危機にある。だがエヴリン、君こそが全宇宙を救うスーパーヒーローなのだ!」

 え? どうしたの? この人、前からちょっとおかしなところがあると思ってたけど、いよいよ気が変になっちゃったのかしら?

 だがおかしくなっているのは、エヴリンの周囲の世界の方だった。彼女の周囲で、世界はみるみるうちに姿を変えていく。出現したのは、過去から無数に分岐して実体化しているマルチバース。別の宇宙には無数のエヴリンがいて、それぞれが才能を発揮している。

 エブリンはその力を、思いのままに引き出すことができる力を持っていた。

■感想・レビュー

 今年のアカデミー賞で、作品賞・監督賞・脚本賞・主演女優賞・助演男優賞・助演女優賞・編集賞の7賞を受賞した話題作。

 ミシェル・ヨーの主演女優賞は、彼女が香港映画界で活躍していた頃を知っている映画ファンには嬉しいニュースだったはず。『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』や『グーニーズ』の人気子役キー・ホイ・クァンが、久しぶりにスクリーンで大活躍してオスカーを受賞したのも大きな話題になっている。

 ジャンルとしてはさまざまな要素がごちゃ混ぜになっているが、これは大きく「ファンタジー映画」とでもくくっておくのが無難だろう。どんな物語にも寓意は含まれているものだが、ファンタジーは他の映画よりその要素が大きい。この映画のテーマは、家族の物語、母と娘の物語、夫と妻の物語など。だがその周囲にさまざまなスパイを振り掛けて、かつて誰も観たことがないような独特の世界を作り上げた。

 面白くてユニークな映画ではある。だがこれがアカデミー作品賞を受賞したとしても、将来にわたって今年を代表する映画として胸を張れる作品かどうかはよくわからない。なんとなく「今はこの分野にツバ付けとこう」という先物買い的な匂いも感じている。

 この作品が、現代のハリウッドを代表する1本だとは思えない。しかしこの作品は、現代のハリウッドを象徴する作品ではあるのだろう。ハリウッドは100年の歴史の中で、数々の選択を間違えて失敗してきた過去がある。しかし失敗を見つめることは強味になる。それらの失敗を糧にすれば、ハリウッドは最強になれるかもしれないのだ。

 これまでにしたことがない、何か風変わりで突拍子もなことをしてみよう。それをきっかけにして、世界はその方向にスイッチする。『エブエブ』は本来なら、アカデミー賞に似つかわしくない映画かもしれない。だが本作のアカデミー賞受賞には、より良い世界を求める人々の希望が込められているのかもしれない。

(原題:Everything Everywhere All at Once)

109シネマズ木場(シアター2/IMAX)にて 
配給:ギャガ 
2022年|2時間20分|アメリカ|カラー 
公式HP:https://gaga.ne.jp/eeaao/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt6710474/

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