裏返しの世界

 1月20日のアメリカ大統領就任式以降、トランプ支持者たちは「裏返しの世界」で暮らすことになる。

 本当は選挙で圧勝していた大統領が、あっさりと職を追われた。マスコミはこの事実を無視して、虚偽報道を繰り返している。司法も大統領を裏切り、大統領側近や彼を支えていた国会議員たちも離れていった。

 真実は覆い隠され、事実を主張する人たちの口は塞がれてしまった。しかもそれが、多くの人たちが見守る目の前で、恥ずかしげもなく堂々と行われている。

 勝者は敗者に貶められ、正義は悪とされ、真実は虚偽とされた。偽りの政府が国を支配し、偽りの大統領が国の陣頭指揮を取る。国は本来なら何の権力も持つべきではない連中に、そっくり乗っ取られてしまった……。

 これが、トランプ支持者たちの見る「裏返しの世界」だ。世界中でトランプ支持者たちだけがこの真実を知っていて、世界中でトランプ支持者たちだけがこの虚偽の世界を覆す役目を与えられていると、彼らは考えるだろう。

 何しろアメリカ国民の何割かが、今でもトランプの勝利を信じ、新たに発足するバイデン政権を「偽りの政権」だと考えているのだ。バイデンは外国勢力とも結託して、アメリカ国民が正当な選挙で選んだ大統領を蹴落とし、不当な手段で権力を握った。トランプ支持者からすれば、この偽りの大統領による支配を覆す者こそが、アメリカを偽りの支配から開放する英雄だということになる。

 バイデン政権成立によって、今の混乱が収まるわけではない。むしろ新政権樹立後、アメリカ社会は今以上に不安定化するのではないだろうか。

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