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往復書簡・映画館の話をしよう「好きな席はどこですか?」③(大浦奈都子)

山口さん、お返事ありがとうございます。
スクリーンとの距離について、心躍りながら拝読しました。

前の方の席で映画の世界観に浸りながらも、3列目あたり、端っこ寄りで逃げる隙を用意しておく戦法!なるほど、そうか、そういえば最前列って少し怖い印象があるなぁ。

ごくたまに、シネコンのどでかいスクリーンの、もはや真下にあるような最前列に座るツワモノを見かけます。いったいどんな迫力なんだろう・・・よく映画館で映画を見ることを「映画を浴びる」なんて言い方をしますが、最前列だとそのまま飲み込まれてしまいそう。

自分の「スクリーンを見上げたい」という願望についても考えてみました。

わたしが映画を見るいくつかの理由の中に、「圧倒されたい」がかなり上位にあります。映画でまだ見ぬものに触れる体験を常に求めてしまう。表現、世界、照らされる物語に。
ですから、やはりスクリーンに近い方が物理的に圧倒されますよね。
最前列で映画に飲み込まれるのは避けたいけれど・・・映画には絶対に入れないとわかってもいる。矛盾しているけれど、映画には少しでも近づきたい、と恋焦がれるような思いでスクリーンを見上げているのかもしれません。

さて、いただいた質問の「ジャンルによって席の埋まり具合は変わりますか?」ですが、答えはYESです。
例えば常連さんが集まるようなインディーズ映画(特に舞台挨拶あり)、は圧倒的に前列が人気です。
後方が埋まりがちなのは、初めて来てくださる方や、普段そんなに映画を観にこない方が集まる映画。音楽ドキュメンタリーは前列寄りの方がライブ感があって良いのでは?と思うのですが、案外後方が埋まりがちなんですよ。

シネマスコーレは最前列を好む常連さん、多くいらっしゃいます。それこそ最前列のど真ん中を必ず確保する方や、それぞれ明らかなこだわりがあるようです。

お客さんが2人しかいない場内、ツレではない2人が最前列で並んで座っている、なんて光景、年に1度はありまして・・・1つくらいズレたら良いのに・・・と内心思ってしまいますが、2人とも頑なに移動しない。きっと強固なこだわりがあるのでしょう。

最前列でなくても、毎度同じ席に座る方もたくさんいらっしゃるんです。
その席が好きな理由がすごく気になるのですが・・・いつも変わらずに、ここに通い続けてくれるその人たちの、入ってはいけないテリトリーに土足で踏み込んでしまうような思いがして気が引けるのです。もしこれを読んでいたら、こっそり教えてくれないかなぁ。

後ろの席やど真ん中を好む方の話も聞いてみたいですね。
以上、「好きな席はどこですか?」でした!

では、次のお題を出させてください。
「映画館と街」についてお話ししたいです。

映画館って、街の名前が付いている劇場が多いですよね。例えば・・・元町映画館、シネマ尾道、横川シネマ、豊岡劇場、川越スカラ座、高田世界館、などなど。
シネマスコーレも頻繁に「名古屋シネマスコーレ」と呼ばれます。

特にミニシアターと呼ばれる小さな映画館は、その街と密接に連携を取っていたり、街の雰囲気を象徴するような場として存在していたりするなぁ、と最近考えています。

今年の3月から、今池に通う日々が戻ってきました。昨年の3月からは、新栄町駅で降りて街を歩く習慣がなくなったままです。名演小劇場のことを考えると、新栄町周縁の景色も、同時に浮かんでくるのです。

前置きが長くなってすみません。
映画館と街の関わりについて、山口さんの思い出なのか、好きな街についてなのか、、お聞かせくださいませ。楽しみにしています!


名演小劇場。2023.3.23より休館に入り、同年11.29に閉館を発表。


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